反芻

庭先で母が笑っている。

爽やかな風が木々を揺らし、葉が落ちてゆく。

母の前へ。母の顔は見えなくなった。

葉が通り過ぎ、顔が見えるようになったが、どうしても母には見えなくなった。

若く、小綺麗な女。

不意に、自分が誰なのか分からなくなった。ここはどこなのか。

女は笑っていた。


女は、笑っていた。


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