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あて


私宛ではない手紙が
瓶に詰められて岸辺に届く
拾ってきて、勝手に読むと
優しい言葉で賛辞と期待が書かれている
勝手に、うれしくなった

本来届くべきひとに
ファックスを送った
しかし返事はない

電話をかけた
電話に出た
けれど
手紙に対して返事はない

約束をして会いに行った
たわいのない会話をした

いつの日か
「ずっと光を編みつづけたい!」
深夜そうはっきり口にした彼は
もうそこにはいなかった

この物語の続きが良いものでありますように
そう願いながら
渚にたくさんの瓶を並べ
塩辛い水をそれぞれに
異なる高さまで入れて
棒切れでなぞったが
音楽は聴こえなかった

それでも並んだ瓶が
夕陽に照らされるさまは
まだ美しい

足が波にのまれはじめた
けれど
わたしはもうすこしだけ
この景色を眺めています


受取主







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