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Premium Live〜スニッチなしのニッチな超個人的感想文〜

4月末。Premium Liveの開催が発表された。敬愛するCreepy Nutsの公式ファンクラブ、CLUB Creepy Nuts会員限定のライブなんて行ってみたすぎる。
娘の体調はここのところひとまず安定している。でも1ヶ月半後どうなっているかなんて誰にもわからない。こんなときはまず夫に相談だ。大前提として夫が有休を取れなければライブに行けるはずがない。
6月13日か14日。日程を伝えるとこう言われた。
「命日だから御加護で当たるんじゃね?試しに申し込んでみれば、当たったら有休取るよ」
そういえば13日は父の命日だ。忘れていたわけじゃないけど、ライブのことで頭がいっぱいで、そのことまで思い至らなかった。
…ま、早い話が忘れてたってことだな。父ちゃんすまん🙏代わりに婿が覚えてたから勘弁勘弁🙏

ここはひとつ、父の御加護とやらを信じてみようか。夫は当たればどちらでも休むと言ってくれたから、13日14日、希望順位エントリーで申し込み。数日後、Twitterのタイムラインが落選した方々の阿鼻叫喚で溢れる中、私のメールボックスには本当に当選のメールが届いて驚いた。

信じてみるもんだ。父ちゃんありがとう🙏


Caseワンマンツアーファイナル、横アリのときは、娘に1ヶ月以上も前から「この日はライブに行く」と知らせて、結果的に出かける日に合わせるように体調を崩してしまった。

前回と同じ轍は絶対に踏むまい。娘には当日まで内緒にしようと決めた。夫にも厳重に口止めした。ライブの日が近づいても、平常心を保ち、徹底的に普段と同じように暮らすようにした。
敏感な娘はささいな変化でもすぐに気づいてしまう。

鬣は免許の更新に合わせて、少し前に染め直したばかりだったので改めて整えず、白い生え際は帽子で隠すことにした。日比谷野音のときと同じ作戦。

お台場までの電車の乗り換えは事前に、何度も念入りに確認した。

ちょっとだけ回り道すれば、お台場に行く前に、ずっと行きたいと思っていた場所に立ち寄れそうだった。だから、①早めに家を出られた場合、②グッズ販売に間に合う時間に出られた場合、③開場ギリギリになってしまった場合の3パターンで、何時何分の電車に乗って、何時何分にどこの駅に着いて乗り換え、次は何時何分に…と頭の中で綿密にシミュレーションしておいた。


さて当日の朝。10時頃。平日なのに夫がいつまでも出勤しないのを不思議に思ったのだろう、娘がこう聞いてきた。
「パパ今日は何時(出勤)なの?」

「パパ今日お休みだよ」
そう答えると、怪訝そうに、え、なんで?と聞き返してくる。私は意を決して言った。

「ママ今日午後ね、休暇なの。今年はお誕生日休暇、まだ取ってなかったから。午後から半休」

夫から、暗く深刻にではなく、明るくあっけらかんと話すようにアドバイスされていた。助言が功を奏したのか、娘はこちらが拍子抜けするくらい冷静に、あ、そう、と言った。
「1人で留守番はしんどかろうから、パパを置いて行くね。2人で仲良く協力してお留守番してて。終電までには帰るから」

娘はわかった、と言うなり、そのまま布団に横になり眠ってしまった。
私が久しぶりに出かけることにびっくりし過ぎたのだろうか。フワちゃんのラジオが始まった頃、怖い夢を見たと言って目覚め、そのままずっと眠れずにいたから、単に寝不足だったのだろうか。あるいはその両方か。

寝ている間に荷造りと身支度ができたのでありがたかったけれど、娘が次に目覚めて本日最初の食事を摂るのを見届けるまでは出かけられなくなった。どうやら寄り道するのは難しそうだ。早くも①案は却下。

それから2時間くらいして、目を覚ました娘。自分からそろそろご飯を食べましょうかねと言い、準備された食事を平らげたので安堵した。
…よかった、これで出かけられそうだ。②のグッズ販売に間に合うくらいの時間だろうか。

それから夜ご飯を作った。少し冷めてからラップをかけ、娘をキッチンに呼んで実際に冷蔵庫にしまうところを見せる。どこにしまってあるかわからないと言われないように。ついでに夫の食事の入っている場所も教えておく。


そろそろ出かけようと思い靴下を履いていると、娘がようやく絞り出したような声でこう聞いてきた。

「今日はどこ行くの?」

なんとなく黙っている方がいいかもしれないと思い、どこに行くか言っていなかった。でもやっぱり気になるよね。

「お台場」

すると、通院以外はどこにも外出しようとしない娘が、意外にもこんなことを言い出した。

「お台場…いいなぁ…」

そういえば4〜5年くらい前、娘にねだられて、お台場にあるホテルまでストロベリーブッフェを食べに行ったことがある。
「あのブッフェ信じられないくらい美味しかったんだよなぁ〜」と当時の思い出話が始まった。

食べることにこんなに困難を抱えていたら、昔食べた美味しいものの記憶なんて薄れゆくのではないかと思うが、むしろ食べられなくなった今の方が当時の味覚をありありと反芻できるらしい。

ただ単純に食べたくなくて食べたくなくて、それでも食べないといけないからしんどいのではなくて、本当は食べたくて食べたくて、それでも食べられないからしんどいのかもしれないな、とふと思った。
娘の中で食べたいと食べたくない、食べられないと食べなきゃいけないは、さながらコインの裏表のように表裏一体で、食事を目の前にする度、そのコインを投げては、表が出ても裏が出ても苦しんでいる、ということなのかもしれない。

「そしたら、一緒に行く?チケット1枚しかないからライブハウスには入れないけど、パパとお台場ぶらぶらして待ってて」
私は言った。娘にとって、またとないチャンスだ。せっかく感じた「いいなぁ…」の気持ちを逃したくない。うまくいけば、外出することに自信を持てるようになるかもしれない。

「えーーー?今から支度して行くの?無理だよ、無理無理」

間髪入れずそう言うので、もう一押ししてみることにする。当初は車で行くことも検討したから、所要時間とルートは検索済みだ。私は淀みなく答えた。

「車なら高速乗って1時間ちょっとくらい。病院に行くのと同じくらいの時間だから、きっと行ける。パパも大喜びで運転してくれるよ。途中で飽きたり疲れたりしたら、ママを待たず先に帰っていいから」

しばらく悩んだ末、やっぱり無理無理、止めとくよーと笑う娘。ま、あまり無茶をさせても仕方ないか。今回は留守番に集中してもらうことにしよう。

娘は今度はふと真顔に戻って
「てか、今日ライブなんだね」
と言った。

「うん、ファンクラブ会員限定のライブなの。チケット外れた人ものすごくたくさんいたんだけど、ラッキーなことに当たったんだ。整番も良くて、こんなチャンスもう二度とないだろうから行ってくる」

「…あーあ、そんなにみんな外れてるなら、ママも外れたらよかったのに…なんで当たっちゃったかな」
冗談とも本音ともつかない言葉が娘の口をついて出る。それはね…と、ここぞとばかりに例の御加護の話をする私。終いにはだしに使って、重ね重ね父ちゃんすまん🙏娘はついに諦めがついたのか、はぁーと大きくため息をついた。

「じーじの御加護で当たっちゃったんならしょうがないな。いってらっしゃい」

ようやく納得してくれたようだった。よかった。娘の気が変わる前に出かけよう。

この時点でもう②の時間にも間に合いそうになかった。でもいいや。せっかく整番がいいからそれだけは無駄にしたくない。③の電車には乗って、絶対18時までに現場入りしなくちゃ。


いってきます。


さて、事前のシミュレーションのおかげで、乗る電車を間違えることも迷うこともなく、駅に到着。

一目でお台場とわかる写真を撮ってメールしたら、夫からは\(~o~)/の顔文字✉️娘はスルー

駅を出てそのまま人の流れについて行くと、ダイバーシティ東京が見えてきた。よかった。無事たどり着いた!

建物の中を歩いて歩いて、Zeppの前に着くと、なんと、まだ物販の列ができていた。多分間に合わないだろうけれど、どうしても諦めきれなくて、試しに並んでみることにする。あのCのキーホルダーが欲しいんだ!

でもしばらく並んだところで、予想通り事前販売の終了が宣言され、列が崩されてしまった。…残念。

がっかりしたら、急激にお腹が空いた。そういえば朝早く菓子パンをひとつ食べて以来、なにも食べていない。開場まであと15分。すぐそこにフードコートがあるけれど、私の早食いをもってしても、注文して出来上がりを待って受け取って完食するまでの全工程を15分で終えるのは厳しそうだ。
やっぱり物販は諦めて、腹ごしらえをしておくべきだったかもしれない。

そうこうしているうちに、数人のスタッフさんが整番の書かれた手持ち看板を持って配置についた。開場を待ち侘びるたくさんの人が、看板前に並んだり、看板近くに集まってくる。

ま、水分は充分摂ってるし多分大丈夫、いきなりぶっ倒れたりはしないだろう。きっとこんなときのために、私の身体は普段から体脂肪をたっぷり蓄えているに違いない。
そう思って、腹を括ることにした。


18時になり、整番順の呼び出しが始まった。スマホを握りしめ、ドキドキしながら順番を待つ。間もなく私の番号が呼ばれ、建物の中に入ると、電子チケットと事前に送信した質問票の入力完了画面の確認後、代金と引き換えにドリンク用コインをもらって入場となった。
カウンターでコインとドリンクを交換、早足で会場に向かう。前方にまだまだ空きがあったので、ぐんぐん進んで、前から2本目のバーの右隅を確保した。前にも右にもバーがあれば、万一倒れたとしても周囲にご迷惑をかけずに済むだろう。
(⚠️よい子のみんなはどうかマネしないでね🙏事前にしっかりエネルギー補給してからライブに臨んでね⚠️)

19時少しすぎ。下手からゆっくりとお2人が登場した。

照明のせいか、眼鏡のせいか、はてまた私の目の水晶体か網膜か、あるいは脳内物質のせいか、私にはお2人が発光しているように見える。
これが俗に言うオーラなのか。覇王色の覇気か。
ステージ上のお2人に一瞬で釘づけになり、そのまま瞬きもできない。

そして1曲目。大好きなあの曲のイントロが流れ出した…。

事前にファンクラブ内で募集していたリクエストを集計してランキングを作成し、その上位曲で組んだというセットリスト。私がお2人を知る前にリリースされた曲が多くランクインし、これまで音源でしか聴いたことのない曲が次々と披露される。ファン歴の浅い私にとっては正に夢のような空間だった。私がリクエストした曲(お2人の存在を認識してから、MVで初めて見て聴いてぶっ飛んだ曲)も入っていて、ぶち上がった。


お2人のライブに行く度に、何かしら初めての体験をするように思う。まだ2回目だけど。

前回は、まるで全身が鼓膜になって機関銃で撃ち抜かれるような感覚。

今回はある曲の最中に、飛び跳ねまくって踊り狂っていたら、自分の輪郭がだんだん曖昧になっていく感覚に襲われた。ぐるりと辺りを見渡すと、周囲の人たちの輪郭も徐々にブレ始めている。
今夜、Zepp Divercityというハコに入れられた老若男女(と、そのどの概念にも当てはらない人)が、Creepy Nutsというブレンダーで混ぜられ、老いても若くも男でも女でもなくなり、渾然一体となっておいしいスムージーになるような、そんな感覚。

「錠剤?液体?/はっきりとしない実体/それは気体か固体」ってリリック通りの、衝撃の体験だった。(snitchなしにしようと思ったのに、これじゃセトリ1曲お漏らししちゃったのと同じだな…どうかご容赦のほど)

以前源さんと若林さんがラジオで話していた、ライブで全部が溶け合って、アメーバみたいになる瞬間の話を思い出した。

今、まさに、ここが、それだ。アメーバポンポン🦠

あるいは、全てはブドウ糖の圧倒的に不足した私の脳が見せた幻だったかもしれない。だとしたらこの次も、お腹を空かせてライブに来ることにしようか。


去り際、松永さんがタンテの上の何かに向かって強めに息を吹きかけると、一気に魔法がとけた。規制退場がアナウンスされる。

退場を待つ間、何曲目かのBGMにShurkn PapのWHERE IS THE LOVE? が流れてきた。

この曲がCaseツアー長岡公演の終演後BGMだったと教えてくれた方のことを思う。片田舎から電車を乗り継いで出てきている私は、大急ぎで帰らないと終電がなくなってしまう。今日はお会いできないかもしれないと半ば諦めかけていたら、驚いたことに建物の出口で私を見つけ、声をかけてくれたのだ。

あんなにたくさんの人の中から、一体どうやって私を見つけ出してくれたのだろう。

途中まで帰り道が一緒だったので、たくさんお話しした。私では感じることのできない素敵な感想をシェアしてもらえて、すごくすごく幸せな気持ちになれた。それ以外のこともたくさんお話しした。このまま時計の針が止まってしまえばいいのに!もっともっとお話ししていたかったけれど、電車は非情にも乗り換え駅のホームに滑りこんでしまった。

別れ際、握った手の、全てを包み込むような優しさと力強さを、今もずっとずっと覚えている。家でも、近所のスーパーでも、娘の病院でもない場所。ここにいていいよと言ってもらえた気がした。この世界に繋ぎ止めてもらえた。


いつも重すぎてごめんなさい。
そして本当にありがとうございます。
必ずまたいつか絶対にどこかの現場でお会いします。
約束を反故にするのが辛すぎて、一度はもう二度と約束はするまいと心に誓ったけれど。でもどうしてもまたお会いしたいから、浅はかにもまたいつか絶対にと言ってしまいました。
その日まで精一杯生きます。

探す生きる理由
奥深く眠る自分
呼び覚ませよ まだ間に合う
だけど本当の愛はどこにある
そう言って出した船は
激しく揺れつづけ 不安定
また途中で遭難
l don’t wanna more play
って叫んでも無駄で
だれか手を差し伸べてくれ
このままじゃ沈んじまう全て
Where is the love? 愛の行方
せめてこれだけ教えてくれ

Shurkn Pap「WHERE IS THE LOVE?」

終電を逃すこともなく、どうにか今日中に自宅にたどり着いた。半休だから、日付が変わる前に帰らなければいけない、と思っていた。真っ先にリビングを見やると、風呂上がりの娘がダイソンを温風にして温まっている。食卓の上には、空っぽになった夜ご飯の皿。
…よかった。私がいなくてもちゃんと食べられたんだね。頑張って食べてくれたんだね。ありがとう。偉かったね。

「ライブハウス帰りの人は一刻も早く風呂に入ってください」

娘に言われて、そそくさと風呂場に向かう。出てきたら、どんなふうに留守番していたのか、たっぷり話を聞こう。さすがにお腹が空いたから、駅前のコンビニで買ってきたおにぎりを食べよう。夫にもお礼を言わなくちゃ。

そして父ちゃんにも。御加護ほんとうにありがとう🙏全部父ちゃんのおかげだ。夢のような時間だった。いや、なんならまだ今もずっと、夢の中にいるような気がしている。


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