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「2.5次元フェス(仮)」マンガやアニメの新しい楽しみ方が満載 新コンテンツもファンを魅惑

「きゃーーーー!!!」

 幕張メッセのホール内に設営されたステージ。2017年上演予定の舞台「弱虫ペダル」の新作に出演するキャストがサプライズで登場するやいなや、ファンから歓声があがった。主要キャラクターのひとり、今泉俊輔役に決まった和田雅成さんのメッセージビデオが流れると、感動のあまり膝をおる人までいた。

 2016年12月3~4日にかけて千葉県の幕張メッセで開催された「2.5次元フェス(仮)」の一幕だ。

 ステージ上には泉田塔一郎役の河原田巧也さん、葦木場拓斗役の東啓介さんが登場。それに小野田坂道役の醍醐虎太郎さんらが加わり、私服の上に各校のジャージを着用すると「弱虫ペダル」の世界がそこに現れた。

 ステージではキャスト選びの裏側も明らかに。今回は舞台「弱虫ペダル」としては初めてメーンキャストのオーディションを行ったという。プロ・アマ問わず募集をし、「全力で1分間ペダルをこぐ」「高速で台本を読むなど」厳しい基準のテストを実施したのだ。
 主人公に抜擢された醍醐氏はなんと16歳。今回のステージイベント直前まで控室で試験勉強をしていたという。「今回ほど背が低くてうれしいと思ったことはない」と選ばれた喜びを口にした。

 マンガやアニメの世界(2次元)を俳優(3次元)が舞台で熱演する “2.5次元舞台”。 もともと宝塚歌劇団などが手がけ1990年代にもいくつか上演されていたが、2003年初演の「ミュージカル テニスの王子様」のヒットがブームに火を付けた。今は、ミュージカルからストリートプレイ、ライブパフォーマンスと多くの原作が幅広い手法で上演され、新たなマンガやアニメの楽しみ方として定着しつつある。

 今回のフェスには「ミュージカル テニスの王子様」「舞台 刀剣乱舞」を初めとする人気作品がブースを出し、これまでの舞台で使った衣装やセットを並べ、ファンを楽しませた。

(会場内に舞台「弱虫ペダル」で実際に使われた坂のセットを設置し。キャラクターのイメージカラーのハンドルを持ち、同じポーズをとることができる。「キャラクターになりきれて、最高!!」の声も)

 グッズも販売されており、普段劇場では長蛇の列や売り切れ続出で手に入るのが難しい品々を購入できるチャンスにもなった。特にキャラクターの格好をした役者のブロマイド写真は人気で、早々に売り切れになるものもあった。ブロマイドはキャラを演じる役者が交代になると、それまで演じていた人の写真は二度と公式には販売されない。後からファンになった人にとっても最後のチャンス。だからこそ、新キャストなどが発表されると、「あるうちに買っておきたい」となるようだ。

(ブロマイド写真は人気グッズのひとつ)

 もちろん「弱虫ペダル」のような、役者が登場し、舞台の紹介やこれからの意気込みを語るステージイベントは多くのファンのお目当てだ。弱虫ペダルのステージをみた20代の女性会社員は「普段聞いたことのない話を聞けるのがうれしい」と笑顔を見せていた。

 来場者のほとんどは女性。なぜこれだけ多くのファンを集めるのだろうか。

 青森県からわざわざ有給休暇を取得して夜行バスできたという20代の女性のお目当ては「ミュージカル 忍たま乱太郎」のステージイベント。もともとマンガ・アニメが好きで、舞台化を聞いたときは「なぜ乱太郎ではなく、5・6年生が主役?」と疑問だったそうだ。偶然手に入ったチケットで見に行ったところ「殺陣とかアクションとか本気でやっているところが魅力ではまった」とのこと。「ワイヤーアクションや殺陣などが本格的で原作好きも楽しめる」と説明する。
 別の30代の女性も「演出も含めて、好きな作品の好きなキャラクターと、好きな役者が一致するのがうれしい」と目を輝かせていた。

 フェスはまた、ある作品のファンが別の作品に目を向けるきっかけにもなっている。先ほどの「忍たま」ファンからは、「プロジェクションマッピングを使っているという『ハイキュー!!』の舞台を見に行ってみたい」という声があがった。

 2・5次元舞台の場合、ファンの多くは原作や役者をきっかけに舞台を見に行く。どうしても見るのはもともと原作が好きな作品か、好きな役者が出演しているものが中心だ。しかしフェスのような場所では普段自分がみたことがない作品も、ステージ横のスクリーンなどであわせて紹介され、ついついどんなものか気になってしまう。個々のタイトルや役者でファンを開拓してきた2.5次元舞台がひとところにぎゅっと集まり、お目当ての作品以外にも思わず目移りさせる空間となっていた。

( ステージ上でちょっとした演技を披露し、ファン獲得につなげるタイトルもー「チア男子!!」のステージイベント)

「2.5次元フェス(仮)」の「(仮)」には、「2017年以降に本格開催を予定」(公式HPより)という意味が込められている。ファンと新しい作品の出会いを生むフェスが定着すれば、ファン層の拡大につながる。フェスが拡大すれば、新しいマンガやアニメの楽しみ方である2.5次元化そのものが息の長いコンテンツになっていくだろう。