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月と六文銭・第十四章(33)

 田口たぐち静香しずかの話は続いていた。厚労省での新薬承認を巡る不思議な事件の話に武田は引き込まれ、その先の展開に興味を示していた。

 田口扮するビジネスウーマン高島たかしまみやこはターゲット・元軍人で現製薬会社営業担当のネイサン・ウェインスタインとベッドインしていた。刺激的なことをしたいウェインスタインは高島にいろいろと求め始めた…。

~ファラデーの揺り籠~(33)

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***現在***
 正確に言うと、高島都akaA級工作員・田口静香だ。
 akaはalso known asの略。"別名"とか"通り名"、"悪名"や"通称"とも言う。偽名で活動している容疑者などを指す場合に使用しますね。例えば、「イリイチ・ラミレス・サンチェスakaカルロス・ザ・ジャッカル」と使う。
 因みにカルロスは国際テロリストでフォーサイスの小説『ジャッカルの日』とは全く関係がない。ジャーナリストの造語で、元は単に「カルロス」だった。
 小説で言えば、ロバート・ラドラムの小説『ボーン・アイデンティティ』(1980)に登場したことで、カルロスは一般に知られるようになった。この小説で主人公ジェイスン・ボーンはカルロスを追い詰める「トレッドストーン作戦」の工作員で、近年、映画で有名になったマット・デイモンが主人公を演じた映画シリーズとはだいぶ内容が違う。

「僕が大学の頃、ラドラムの『ボーン』シリーズを全部読んだな。あの時カルロスはまだ捕まってなかったし、本当のテロリストだと知ってびっくりしたものだよ」
「整形しながらテロ行為を行っていたベネズエラ人ですよね」
「アラブのためのテロが多かったから、エジプト人あたりかと思っていたら、ベネズエラ出身だったんですよね」
「私は身分証も服装も髪型も化粧も変えてアサインメントに取り組みますが、顔を整形してことはないですね。欧米には整形している工作員もいないわけではないですけど。
 あ!万一疑っているなら、言っておきますけど、胸は整形していないですからね。
 100%天然のEカップ。感度も抜群で、今は全部あなたのものよ」
 田口は武田の顔に胸を押しつけた。

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***再び回想へ***
 人妻・高島都は米国製薬会社の営業担当ネイサン・ウェインスタインの部屋で、彼のやや大きめのペニスを頬張っていた。彼女にとって初めての不倫は後腐れがない外国人が賢い選択肢に思えたから、他の人ではなく、彼と2日連続でベッドを共にしていた。
 高島の真っ白な肌にややロングの黒髪、細い手足にキュッと絞られたウェスト、やや大きめのヒップは後ろ姿でもすぐに分かる特徴だった。正面、或いは横から見ないと分からないのは、バンと前に突き出た推定Eカップの胸だった。
 推定と言っているのは、高島都が誰にも公表したことがないからだ。多分、夫も知らない。唯一のヒントはEカップのブラジャーをつけていることだった。お店で着けてみてしっくりきたのがEカップだったからずっとつけているだけで、きちんと測ったことがないのだ。
 普段の顔は化粧の影響でシャープな印象を与えていた。しかし、今回のアサインメントで、昼は親しみやすい看護師にふさわしい丸い柔らかなものと、夜はビジネスウーマンに扮している関係で、ややシャープだが人を寄せ付けないほどではないものとを使い分けていた。

 初めは都が彼に対して性的行為を施していたのだが、彼もいろいろしたくなったのか、彼が都の背中をさすり、僕にも舐めさせてと言った。
 恥ずかしそうにではあったが、口に彼のペニスを喰えたまま都は腰を上げ、彼の顔の上に跨った。その過程で女性の部分をすべて晒してしまったが、すぐに彼の口というか顔に自分の女性の部分を押しつけた。その間、自分は変わらないペースでやや大きめのペニスを頬張り続け、ウェインスタインの腹はピクピク反応していた。
 都は自分の豊かな乳房を彼の腹に押しつけていたが、ウェインスタインは両手を伸ばして、それを包み、人差指か中指で乳首を触り始めた。優しいタッチに乳首が反応し、都の脳内では幾つもの小さな火花がはぜるのが感じられ、それが徐々に脳内を満たし、脳内から後頭部を経て背中へと快感が広まっていくのが分かった。
 ウェインスタインは目の前のクレバスに口をつけて、クリトリスから膣口までを丁寧に舌でなぞり、腰と腹がピクンピクン反応するのを楽しんでいた。あまり熱心に舐めるとフェラチオが止まってしまう、手抜きをすると自分が発射しそうになってしまう。この危ういバランスで二人のシックス・ナインは続いていた。
 都はウェインスタインの指先による乳首への優しい刺激に加え、クリトリスを中心とした下半身への刺激が波状攻撃のように伝わってきて、体全体が快感に包まれ始めた。
 その時、都の快感が一気に冷めることが起こった。ネイサンがアナルを触り始めたのだ。指を入れられたらいやだからと都が手でウェインスタインの手を払った。
 もちろん、反撃してウェインスタインのアナルに指を突っ込んでグリグリやっても良かったが、夫しか知らない都がそんなことはしないだろうと考え、実行しなかった。都が嫌がらず、彼の触るに任せたら、アナルに興味があるんだと思われるかもしれないし、ウェインスタインは都が止める前に指をねじ込んでくる可能性もあった。

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