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2023年#3 ヴィレッジ

端正な顔立ちの男がプリントされている入村許可証なるものをいただき座席へ向かうと、観客のほとんどがあどけない顔をした少女のような方ばかり。
『余命10年×横浜流星』というキャッチーな組み合わせに吸い寄せられて来た生贄か。
心の中でオーダーを出す。ミチヒト、いつものやつプリーズ…

宣伝をみながら、過去の彼の作品を思う。
青の帰り道、デイアンドナイト、ヤクザと家族、新聞記者どれも見事にバッドエンドで唯一余命10年だけが毛色が違う。具合が悪かったのかな、と思ったくらいだった。あれも広義のバッドエンドと言えなくもない。だが…

手元にある入村許可証に目をやる。悪い予感がまたやってきた。およそ村とは縁遠そうな男だ。無精ひげをはやしても、手入れをしていない風の髪の毛、ミリタリージャケット様の服、すべてからおしゃれさがにじみでている。これでキャラ造成、合ってるのか?

その悪い予感は開始数分で正しかったことがわかる。

こんな奴はこの村にはいない。
この村のような村はあるだろう。だが、そこにこんなやつはいない。
一ノ瀬ワタルはいる。
古田新太もいる。
西田尚美はかろうじている。
黒木華もぎりぎりいる。
だが、横浜流星はいない。

なんというか、時代劇にスマホもった人が出てきちゃったみたいな違和感を感じた。

いやさ、田舎にびっくりするくらいに美しい人がいることはままある。でも彼はすっかり荒廃してしまっている設定じゃない?。
先月まで芸能事務所にいました、みたいな設定でもなく、もうかれこれ数年はこのごみ処理場で、村長のドラ息子に小突き回されて、そこで稼いだ日銭を母親にたかられて、父親は村のごみ処理場の設置に反対・孤立、自殺してしまい、村中の人間から鼻つまみ者扱いを受けている設定。

――――――この設定そのものはありそうな話で、いや、むしろかなり真に迫る設定で、さすが藤井監督と頷かれるものがあるのだが、そこへきて、どうしてお前なのだ、横浜流星。
肉体的だけでなく自尊心も粉々になっている設定じゃない?なのに、なにそのおしゃれヘア?歯磨きなんぞろくにしていないはずなのに、なんでそんな六本木の歯医者でホワイトニングした後みたいな歯ででちゃうんだ。どう考えてもメゾン系のロングコート、どうやって手に入れたんだ?同じ服と靴を壊れるまで着続ける類の生活をしているはずなのにどうして…なぜか車だけは田舎のヤンキーが乗ってそうなそれっぽいやつで、そこはリアリティーがある。なんだこのちぐはぐさ。入り込みにくい。

そしてその無茶な設定にさらに能が入ってくる。しかもかなり雑に入ってくる。こんな雑な使い方して、その手の協会は抗議したりしないのだろうか。こういうのは設定を隠して下敷きにしたりすることはあって、こうやって完全になぞるって、安易すぎないか?目線を下げるにもほどがあ、、、なるほど、余命10年の客を当て込んで作ったのか、そうかあ。なるほど。

ああ。なるほど。

納得。


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