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『うたがきこえる』 20年前に書いた文章が出てきた

 『世界に一つだけの花』「私と 小鳥と すずと」…。あっという間にもてはやされ、一世を風靡するようになった、ふたつのうた。
 いつからか私は、「みんなちがって、みんないい」と言われるとき、「世界に一つだけの花 ひとりひとり違う種を持つ」と歌われるとき、その中に猫撫で声の違うメッセージを聴き取るようになってしまった。
  別にいいじゃないか、できなくたって。
  べつにいいじゃないか、無理しなくたって。
  君はそのままでいいんだ。…何もしなくたって、ね。
  どうしてできなきゃいけないんだい?
日陰に置いて、水もやらず、
  きれいじゃなくたっていいじゃないか。
  それが世界に一つだけの君の花なんだよ。
  それだけで価値があるじゃないか。

 ありのままとほったらかしは違うんだよ!ひなたで、太陽の暖かな光を浴びて、たっぷりの水を与えられて育ったなら、また違う花だったかもしれない。

 いつの間にかこの国は、子どもから学ぶ権利を取り上げてしまった。わかる喜び、学ぶ楽しさ、昨日とは違う成長した自分に出会える驚き。
できなかったことができるようになった、以前読んでわからなかったものが理解できた、昨日の自分が幼い子どもに思える…!
そのための努力、そのための学び、生まれてきてから、初めて笑った日、初めて花びらのような唇で言葉を発した日、初めておもちゃを掴んで手足をバタバタさせた日。
寝返り、はいはい、立った、歩いた…。
そのとき、どんなに輝いていたか。
 それが今や、ガタガタになった公教育。カリキュラムはズタズタ、学校だけでは授業時間が足りなくて、では内容を減らしましょう、3割減らせば時間も足りるでしょう。つながりがないからわかりません、反復練習時間も確保できません。

 いやいやいいんですよ、わからなくたって、勉強だけが全てじゃありません、性格が素直で善良ならばそれでいい。勉強が嫌いなら無理強いすることはない。わかりたければ塾に行くでしょう、それは個人の自由だから止める権利はないことですご自由に。学校では、文部科学省の決めたとおりのカリキュラムを実施しておりますよ。

 官僚や公立学校教員の子弟は塾→私学のルートでしょうどうしてですか!

 ははあ、個人の自由にまで立ち入れませんな。

 なんの商売だって他人に高値で粗悪品を売りつけて自分はその利益で高品質なものを買ったら外道でしょう?

 なんのことやらわかりませんな、例え話ではね、はっはっは…。

 こんな会話までが低音部のように私には聞こえる「No.1にならなくてもいい もともと特別なオンリーワン」。

 公教育が壊れた国はもうだめだ、3年ぶりにいじめが増加、8年ぶりに校内暴力が増加、なぜだろうって?わからないふりの確信犯?まさか本当にわからないとか?
 年金という甘い乳を出すために、金の卵を産むために、乳牛よろしくブロイラーよろしく収容されて飼われている子どもたち。公教育にお金をかけたくない節約術のせいでがたがたズタズタのカリキュラム。わからなければ暴れるか、生贄を作って気晴らしするほうにむかうのは近道だろうに。

 「みんなちがって みんな(どうでも)いい」と聞こえる「もともと(向上しなくても)特別なオンリーワン」と聞こえる作り笑いのその唇から。


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