疾風怒濤の時代

疾風怒濤の最中の少年がいる。
母親を責める。
うるさい!うるさいうるさいうるさい!黙れ!と叫び、翻弄する。
父親が嫌いで、「ストレスで何をするかわからないよ」と母親に向かって言い放つ。
彼と彼の父親の衝突は毎日のことで、そのたびに責められるので、彼の母親と弟には謝り癖がついてしまった。責任や落ち度が誰にあるのか考えることなく条件反射で謝る。

彼は思い通りにことが運ばないと苛立って、母親をなじる。
認めたくないことを指摘されたときは、叫んで家を飛び出した。
そして、20分後に帰ってきた。

彼はどうしたいのだろうか。
どうなりたいのだろうか。
大声で叫んで相手を黙らせれば満足するのだろうか。
相手の指摘の方が真実でも。

泣き虫で、怖がりやで、母親から離れなかった。
泣きすぎて吐いた。
お母さんをお嫁さんにしたがっていた。
本人が忘れても、打ち消しても、本当のことだ。

彼の母親は、息子の心を傷める全てのことに全力で立ちむかってきた。
明るく聡明で、弱音を吐かない頑張り屋。彼女ひとりであれば、もっと自由にのびのびと生きられただろうに。
人一倍デリケートな息子のことを、決して否定しなかった。
今も、息子の言動にややあきれながら、それでも自分にできる最善を尽くそうと労を惜しむことがない。

彼は何を望んでいるのか。
彼は、どんな人間でありたいのか。
これほど強い味方に対して、冷たい否定の言葉をぶつける、その様子は、あれほど反抗している父親にそっくりなのだけれど。

疾風怒濤の時代
そういうけれど。
いちばん怖くない相手に最も激しく攻撃を加えていると見てとれる。
疾風怒濤というけれど、決して襲ってこない相手とみくびって体当たりを喰らわしているかに見える。

ずるくないか…?
虚勢をはってないか?
そんな自分のあり方は苦しくないか?

自我の目覚めというけれど。
自我が目覚めたら、恥ずかしい自分でありたくないと思わないか…?

カッコいい大人になりなよ…。

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