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マンガとプロダクトプレイスメント第1章

第1章:漫画家は儲かるのか?

「日本人はみんなマンガが好きだ」と筆者は個人的に思っている。
それは言い過ぎだとしてもマンガは日本を代表するコンテンツであり、文化であるということには疑いの余地はないのではないだろうか?

公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所によると、2020年の日本におけるマンガの市場規模はおよそ6126億円(紙+電子)で、過去最大の規模となっている。出版業界は斜陽だなどと一部では言われているが、マンガに限っては例外のようである。
また、NTTレゾナント株式会社が2012年に10代~40代の男女を対象に行った調査(https://research.nttcoms.com/database/data/001447/)によれば、約75%の人が「マンガが好き」と回答しており、日本人と漫画は切っても切り離せない関係となっていることが分かる。

では、日本を代表するコンテンツであるマンガを創り出している漫画家は、結構儲かる職業なのでは?と思う方もいるかもしれない。

ところが、調べてみると、漫画家の実情は相当に世知辛い。

漫画家の収入は、基本的には
①執筆の対価として支払われる原稿料
②出版の対価として支払われる印税
で構成される。

収入源①の原稿料は1ページあたり単価に執筆ページ数を乗じた額が出版社から支払われる。原稿料は「バクマン。」によると、新人で1ページあたり9,000円となっているが、これは大手出版社の集英社での話。原稿料は、出版社の規模や漫画家の人気などによって幅があり、1ページあたり概ね3,000円から数万円程度といわれている。

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収入源②の印税は、8%程度といわれており、発行部数×定価×8%が印税収入となる。
当然のことながら、収入源①の原稿料は出版社と契約しないと発生しないし、収入源②の印税は単行本化されなければ発生しない。

仮に、集英社と契約し、週刊で1話19ページの連載を1年間持てたとしよう。
すると収入源①の原稿料は、9000円×19ページ×52話=889万2千円

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1冊500円で単行本が5巻発売され、累計発行部数が15万部(1巻当たり発行部数3万部)とすると、収入源②の印税は、500円×8%×15万部=600万円

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つまり
①原稿料 889万2千円 + ②印税 600万円 =年収は1489万2千円!!

…とはならない。

通常、連載は作家一人でできる作業量ではない。不可避的にコストが発生する。
例えば、③アシスタントを雇用する必要があり人件費が発生する。
また、④その他の経費として仕事場の家賃や画材などが発生する。
仮にアシスタントの月給が20万で、2人雇うとして、仕事場の家賃を月10万円だとすると
③人件費:年間で20万×2人×12カ月=480万円
④その他の経費:10万×12カ月=年間120万円
が発生する

つまり、コストとして、
③人件費480万円 + ④その他経費120万 =600万
が必要なのだ。

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そうすると、手取りは
収入(①+②)1489万2千円-コスト(③+④)600万円
=⑤手取り額は889万円2千円
となる。

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どうだろうか?手取り額889万円と聞いて。
けっこうな高給取りではないかと思ったであろうか?

今回の事例はそこそこの成功を収めた場合である。しかも1年間に限定した話だ。毎年、安定して人気を取っていけなければ、連載は打ち切られ、収入は0になるリスクがある。また、連載を持てたとしても単行本が売れなければ、収入は年に200万~300万円程度。睡眠時間を削って、休みなく漫画を描いて200万~300万円ではあまりにも寂しい。更に絶望的な話をすると、④その他の経費には水道光熱費や画材費用を含んでおらず、また、国民健康保険料や所得税などを控除していないため、実際の⑤手取り額は更に低くなる。

そもそも、出版社と契約し連載を持てるようになる漫画家は一握りだ。そして、連載を持てたとしても、人気を持続し連載を1年も2年も続けられるのはさらに少数。マンガで一生食えるのは0.001%とも…

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おわかりいただけただろうか?漫画家はかくも厳しい世界で競争しているのだ。

ここまで読んで「ふーん。漫画家って大変なんだ」と他人事のように感じてはいけない。
皆さんなら漫画家を目指すだろうか?
ほとんどの人はそんなリスキーな選択はしないのではないだろうか?
このままの状況が続けばどうなるだろうか?
漫画家を目指そうという人は減り続けるだろう。そうなれば、作品のクオリティも徐々に下がっていく。漫画産業が衰退していく。面白い作品が読めなくなる。

由々しき事態である。

私は面白い漫画をずっと読んでいたいのだ。

「漫画家が安定して食えるようにしなくてはならない!」
そのための方法を仕事そっちのけで考える日々が始まった…


第2章へ続く。

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