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ブリリアタワー浜離宮の誕生物語(28)

第三章 マンション完成を目指して

6.管理規約の作成 オーダーメイドの規約作り

 2019年4月の建替組合設立時より理事会で建替後のマンションの管理規約の作成を始めた。想像以上に時間のかかる作業であった。効率的に審議を進める為、副理事長にリーダーをお願いして、管理規約検討分科会を設立し、議論の要点をまとめた上で理事会にて最終結論を出すと言う方式をとった。
 マンションの管理規約にはモデルとも言うべき標準規約が存在し、通常の新築マンションは主にそれが適用される。しかしながら、ブリリアタワー浜離宮にはイトーピア浜離宮より継承すべき伝統も改善すべき問題点もあった。
 イトーピア浜離宮では竣工時は殆ど賃貸住戸はなかった様に記憶しているが、時間が経つにつれ賃貸に出す所有者が増え、300戸の内、凡そ75%が賃貸住戸であった。建替後のマンションでは専有面積は倍になるが、戸数では百戸程度の増加に過ぎず、戸数ベースでは凡そ50%以上が賃貸住戸になる可能性がある。その場合は通常のマンションに比べ、いろいろな問題が想定される。中でも、管理組合役員の資格を居住者に限定すると最初から役員の成り手がかなり制限される事になり、イトーピア浜離宮と同様に理事の輪番制が機能不全になる可能性がある。まずは、この問題の対応が求められる。イトーピア浜離宮では、理事を館内の居住・非居住を問わず、管理組合の募集に応じた立候補者より選ぶ事により乗り越えた。その結果、管理組合は高い意識を持った理事により運営されていた。そしてこの管理組合が、困難なマンション建替の推進力になったのである。しかし、立候補者は多くなく、一旦、理事になるとその任期は長期になる傾向があった。
 これらの状況を踏まえ、建替後のマンションでは独自の管理規約、オーダーメードの管理規約の作成を目指した。

 管理規約の作成には多くの時間が割かれたが、特に重要視した項目・テーマは下記であった。
+電力供給社の選択(共用部、専有部)、インターネット接続。(このテーマに関しては既にブリリアタワー浜離宮の誕生物語(27)にて記述済みにて省略。)
共用施設の使用規則
レンタサイクル・サイクルシェアー
管理組合活動の活性化対策
+コンシェルジュサービス(管理費削減対策と関連し、ブリリアタワーの誕生物語(29)に記載。) 

1) 共用施設の使用規則

(1)使用権の所在
 最も議論された問題は共用施設の使用権は所有者か居住者どちらにあるかと言う点である。自己居住用では無く、賃貸に出す所有者が多いというブリリアタワー浜離宮ならではの論点である。本来なら、居住者に使用権を限定するのが普通だと思われるが、アンケート調査の結果から非居住所有者でも共用施設の使用を希望される方が多く、また、多数の理事もそれを支持したことから、非居住所有者にも使用権を与えることが決定された。管理費を払うのはオーナーであると言うのが、その理由であるが、これは家賃に管理費も含まれていると考えるべきで屁理屈であろう。しかし、その希望は無視できなかった。結論としては、賃借人、所有者双方に使用権を与えることに決定した。

(2)使用回数制限
 人気があり使用希望者が重なると予想されるビューラウンジ(パーティールーム)とオーナーズスイート(ゲストルーム)の使用は希望者が重なった場合、抽選で決める。それでも使用が一部の居住者、所有者に偏る恐れがあり、年間の使用回数を制限することにした。非常に活発な議論になったが、公平性の観点から、居住者または所有者毎に使用回数を制限するのでは無く、一部屋当たりの使用回数の限度を設定し、使用回数は賃貸部屋の場合は賃借人、所有者がそれぞれ半数回の使用を可能とした。ただし、賃借人、所有者が協議し、どちらかが使用権、回数を相手に譲渡することを可能とした。東京建物よりは、管理が複雑になり、そのためのソフトウェアーが高額になる恐れがあるとして難色を示されたが、それぐらいの管理はソフトウェアーを使うまでもなかろうと判断した。

(3)使用料
 当初、事業者側よりオーナーズスイートの使用料はリネン交換料として精々、一泊2,500円程度しか取れないと言う。これでは他のタワーマンションのゲストルーム使用料と比較して安すぎないかと疑問を呈したが、最近になり、規則が変わり、実質の経費以上の費用は旅館業の免許がない限り税法上問題ありとの回答あり、やむなしとされた。しかし、後日、管理費の見直しにあたり、なんとか管理費の負担を下げる方法として、使用者より管理組合への協力金(寄附金)として妥当な金額を払ってもらう様、規約を変更した。
 同じく、ビューラウンジの時間あたりの貸切使用料を定めた。
 なお、スカイテラスは使用時間、細則を決めたが、回数制限は設けず、使用料は無料とした。

(4) ビューラウンジ優先使用
 ビューラウンジの使用についてはマンション集会室との兼用となっており、管理組合の理事会使用を最優先とし、また、空いている時はスタディールームとして無料で使用可能とした。

2)レンタサイクル、サイクルシェアーの設置について

 レンタサイクルとして電動アシスト自転車を10台管理組合で所有し、居住者は一回、6時間を上限に一戸当たり2台まで使用可能とする提案がなされ、了承された。保留床の分譲販売にあたり、東京建物にとってセールスポイントの一つにはなると考えられた。その後、港区よりの依頼として(認可条件として)敷地内にドコモバイクシェアーを受け入れ、電動アシスト車を4台設置する事に合意した。ドコモバイクシェアーは誰でも(非居住者、マンションと無関係の人でも)使用可能。2019年に討議した時は特に反対意見も無く、両サービスの設置が決まって居たが、2020年末に、港区よりサイクルシェアーの設置は義務としない旨の通知があり、再度議論、決定する事になった。レンタサイクル、サイクルシェアー両方を採用するか?何方か一方を採用するか?それとも両方とも不採用とするか?
 そこで、以前に議論には至らなかった管理費削減の視点も含め議論を重ねた。(当初は管理費の議論は始まって居なかったが、2020年後半よりは管理費の削減の議論も始まっていた。)レンタサイクルの使用は無料としており、管理組合の費用負担は大きくなる。また、料金を徴収しようとすると管理が複雑になり、間接的に管理費が増える事になる。また、恐らく自転車をよく利用するのは一部の居住者のみとなり、全所有者の管理費負担により、一部の居住者のみが利益を享受する事になると言う問題点も指摘された。また、サイクルシェアーは管理組合の負担は無いが、自転車の管理者が不在である事よりマンションの景観に悪影響が出る恐れがある。また、道路を挟んだ竹芝ウオーターシティーにはサイクルシェアー(ドコモバクシェアー)の設置が決定されており、そちらを使う事ができると言う状況も確認された。
 最終的に両方とも不採用となった。

3)管理組合活動活性化の方策

 下表はイトーピア浜離宮の管理組合が抱えていた問題点とその対策もしくは対策案であった。建替マンションでは同じ問題点を抱え込まない様にとの思いで理事会に提議したものである。その中で特に管理組合理事会の活性化に就き時間をかけて議論を重ねた。

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(1)オンライン理事会の導入
 建替組合理事会でも2020年3月よりZOOMを使い、オンラインで会議を行っている。当初抱いていた危惧は杞憂に終わり、理事会は全く支障なく運営されている。問題点があるとすれば、それは議論がより活発になり、常に会議の時間が予定を1時間以上オーヴァーする事であろう。この経験は活かされるべきで、理事会はリアルとオンラインの並列開催を制度化した。理事はリアルでもオンラインでも理事会に参加する事が可能になれば、理事会参加のハードルがかなり低くなり、非居住の区分所有者も理事になる事への抵抗が少なくなると考えた。理事の資格は日本語が理解できると言う一点のみで、海外居住者でも時差の問題を除けば参加に支障は無くなる。

(2)理事の選任
 新築マンションでは通常、理事は輪番制で選任されるものだろう。当初は、輪番制が想定されていた。しかし、輪番制で2年で理事が代わって行けば、理事会での議論は常に表面的なもので終わってしまう可能性が高く、イトーピア浜離宮の様に自主的に立候補した理事により理事会が運営されるべきと言う意見、しかし、それでは理事が固定され、理事会が形骸化する恐れがあるとの指摘もあり、結論の見えない議論が続くことになった。区分所有者の理事として理事会に参加する権利の尊重という概念が根底にあった。
 そこで、マンション管理士の資格を持つ監事より輪番制の理事と立候補者で総会で承認された理事の並列による理事会運営と言うハイブリッド案が提案された。この案が更に詳細に議論した上、改良を加え可決された。輪番制では、階数により4ブロックに部屋を分け、ブロック毎に既理事経験者を除いた部屋を抽選により選び、その所有者を理事候補者とする抽選制が採用された。
 また、監事は誰でも良いと言うわけでは無く、専門性、知識、経験が要求され、抽選制ではなく、原則、立候補により選任し、立候補がなければ理事会の推薦により選任する案が採用された。監事重視の姿勢は建替組合発足時の基本理念である。
+理事定数 ブロック選任理事 8名
      立候補理事    0−8名
      合計       8−16名
+監事定数          2名
+任期 2年、ただし、毎年、上記定数の半数を改選する。

(3)理事辞退協力金と役員報酬
 オンライン理事会の制度化で理事会活動への参加のハードルが下がったとは言え、抽選で選ばれた理事候補が次々と辞退し、理事の成り手が無くなるという事態も想定しなければならず、それを避けるために理事辞退のペナルティーとしての理事辞退協力金(理事を辞退する代わりに管理組合への寄附金を払うという制度)の支払いが提案された。また、逆に理事報酬を払い理事の活動にインセンティブを与えると言う提案もされた。分科会では協力金、報酬とも低額にし出来るだけ他の組合員よりの反発を招かない様に配慮した案が採用された。また、役員報酬は役職の有無や理事会への出席率の評価を考慮し、役員手当と活動手当(理事会参加等)に分ける事が提案された。個人的には役員就任辞退を避けるためには協力金制度が有効と判断していた。分科会では協力金、役員報酬に関し、どちらか一方の採用、両方不採用、両方とも採用との4択に対し、両方とも採用が好ましいとされた。しかし、理事会では多くの理事には役員辞退協力金という制度は馴染みがなく、意見が分かれ、最終的には多数決で、役員報酬のみが採用された。また、理事会には全員が参加する前提で定額(低額)の役員報酬のみ支払うと言うシンプルな案が採用される事になった。性善説を前提とした結論であった。イトーピア浜離宮の経験が活かされなかった事は残念であった。理事には居住を希望する人、賃貸に回す予定の人、将来的に売却を指向している人と多様な考え方があり、それぞれの所有の目的により意見の違いが現れたと考えられる。しかし、逆にこれらの考え方は区分所有者の考え方を代表していることは確かであり、それは尊重すべきであろうと考えた。

以上

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