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タワマンの低層階・中層階・高層階ごとの建物被害と室内被害の傾向

タワマンの建物被害を表す項目は層間変形角で、室内被害を表す項目は応答加速度であることは、以下の記事で取り上げました。

層間変形角が高くなると、主要構造部である梁と柱はもちろん、非構造部材では室内クロス、戸境壁、建物の配管、外壁、窓ガラスなど、建物と密接している部分に被害が出る可能性があります。

応答加速度が高くなると、非構造部材の被害として、室内の設備や家具の転倒、照明器具の落下などの被害が出る可能性があります。

一般的な正方形のタワマンの場合、層間変形角は中間層で大きくなり、最下階と最上階では小さくなる傾向があります。
逆に、応答加速度は最下階と最上階で大きくなり、中間層では小さくなる傾向があります。
建物被害が気になるなら下と上の階がよく、室内被害が気になるなら中間の階がいいこととなります。

折れ線グラフで表現すると、以下のようになります。

図:タワマンの建物被害と室内被害の傾向(出典:コンクリート工学年次論文集 Vol.36 No.2 2014

グラフで見るとどんな傾向があるか、はっきり分かるようになります。
タワマンは構造や形状が様々なので違う傾向になる可能性はありますが、普通の純ラーメン構造と正方形状の傾向としては上記のような傾向だと思ってください。

また、上記図には耐震・制振(ダンパーの種類ごと)・免震でどういう傾向になるかもわかります。
免震では層間変形角と応答加速度が小さくなるので、最下階~最上階で比較的ゆっくりした傾向になりますが、
耐震・制振では層間変形角と応答加速度の軽減効果が小さいので、層間ごとの差異がくっきり表れるようになります。

制振では粘性系のオイルダンパー多く使うことで、建物被害と室内被害に大分効果が見られますが、オイルダンパーは商業用ビルには多く使われますが、タワマンではあまり使われないので、タワマンでは鋼材系のダンパーが多くの場合を占めることとなり、この場合は建物被害には一定の効果がありますが、室内被害は耐震と変わらない結果となります。

検討してるタワマンがあれば、ぜひ上記の傾向がわかる性能評価結果や大臣認定の資料を取り寄せて確認してみてください。
ただ層間変形角ならどんな構造でも評価資料に乗ってると思いますが、応答加速度は上限の規定値が定められていないせいで、性能評価の必須対象ではないので、物件によっては分からない可能性があります。

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