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表層地盤増幅率を使用した建物倒壊危険度マップをタワマンにも適用できるか

東京都は各地域の表層地盤の増幅特性によって、建物倒壊危険度マップを公開しております。

図:建物倒壊危険度マップ(出典:東京都不燃化ポータルサイトのパンフレット

このマップはタワマンにもそのまま適用できるのでしょうか?
答えはこのマップは戸建てや高さ60m以下のマンションには適用できるが、タワマンに関しては各物件ごとの基礎構造を見てみないと分からない。が答えとなります。

表層地盤とは、タワマンの基礎構造(直接基礎や杭基礎、または併用基礎)とタワマンの支持層(東京礫層や上総層群)の間にある、地表面近くに堆積した浅い軟弱地盤のことを指します。
表層地盤が軟弱であるほど、地震波が増幅される可能性がありますので、タワマンの基礎と支持層の間がとれくらい離れていて、かつそれがどれくらいの軟弱地盤かによって、増幅程度が決まります。

タワマンは支持層の条件として、N値50以上の固い地盤が5m以上続くことを目安としておりますが、支持層が地下(GL-)15mくらいの比較的に浅い場所にある場合は、中低層のマンションは地下深くまで掘削することはなく杭基礎にしますが、タワマンならGL-15mまでの掘削して、直接基礎にする場合があります。
勝どき、港南、五反田など、比較的表層地盤が浅い地域のタワマンで、このような事例がよく見られます。
実在するタワマンの例を見てみましょう。

図:実在するタワマンの地盤と基礎構造(出典:東京建物のサイトと分譲パンフレット)

① ブリリアタワー上野池之端(制振)基礎:杭基礎 地盤:台地1
② ブリリアタワー目黒(免震)基礎:杭基礎 地盤:台地2
③ パークタワーグランスカイ(制振)基礎:直接基礎 地盤:谷底低地3

東京都の建物倒壊危険度マップの地盤によると、安全な順番→危険な順番で①→②→③になりますが、上記図にようにリアルでは逆で、③→「①と②と同等」の結果となります。
①は台地1、②は台地2となってますが、N値で見ると似たような地盤で、GL -30mまでは支持層がないので、タワマンの基礎は杭基礎になり、表層地盤の影響がいくらかはあることが分かります。
それに比べ、③はGL -14mに支持層があり、そこまで掘削して直接基礎にしてるので、表層地盤の影響はありません。

晴海トリトンスクエアみたいな特殊な事例の場合、GL-30mまで掘削する力業で直接基礎にしてるので、タワマンのような超高層建物はその物件の基礎構造詳細を見ないと、表層地盤の影響があるかないかは分からない結論となります。

さて、長く記事を書いておきながら言うことではないんですが、ではタワマンの耐震性能においては、直接基礎と杭基礎の2物件の中では、直接基礎が優れているのでOK?と聞かれたなら、答えは理論的にはYes、リアル的にはNoとなります。

は?と思うかもしれませんが、理由は以下の記事でも取り上げた一般的な耐震性能目標値にあります。

地盤が武蔵野台地だろうが、埋立地だろうが、
基礎構造が直接基礎だろうが、杭基礎だろうが、
事業主が目指す耐震性能の一般的な数値は

耐震・制振タワマンでは、L2の層間変形角で1/100
免震タワマンでは、L2の層間変形角で1/200~1/150

で相場が決まっており、この目標を変えるかどうかは事業主の一存にかかっておりますが、殆どの場合、地盤と基礎みたいな些細な条件では、事業主は耐震性能目標を変えません。

あなたが事業主で自分の建物を建てるなら、直接基礎の地盤のメリット(安く建てられる)を得られますが、
分譲タワマンを購入する一般消費者の立場なら、事業主が決めた耐震性能をことを納得して、購入するか辞退するかのどちらになります。
ただ、殆どの一般消費者は直接基礎のタワマンは、杭基礎のタワマンより耐震性能が高いと思ってると思いますので、この辺に乖離があります。

今後、首都圏に存在するタワマンの耐震性能一覧も取り上げますが、地盤と基礎構造は、実在するタワマンの耐震性能とは何の因果関係もありません。

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