革新から確信へ【日本代表×コロンビア代表】

3月28日(火)大阪・ヨドコウ桜スタジアム。
新生・森保JAPANの2戦目。

初戦のウルグアイ戦では、新たなビルドアップの形を試しながら1‐1のドロー。この試合ではどういった戦術的アプローチを見せるのか、そして、それに伴う選手起用法に注目が集まった。

スタートは4-2-3-1で
GKシュミット・ダニエル
DFラインに左から、バングーナガンデ佳史扶 伊藤洋輝 板倉滉 菅原由勢
ダブルボランチに鎌田大地 守田英正
2列目左から三苫薫 西村拓真 伊東純也
ワントップに町野修斗という布陣。

”レジスタ”鎌田大地

起用ポジションでまず目を引いたのは鎌田大地だ。
日本代表では基本的にトップ下かシャドーのポジションを任されていたが、この日はダブルボランチの一角。
所属するフランクフルトでは基本的にこのポジションで出場しており、本人も自らの適正ポジションだと語っている。

結果として、後方からのボール運びに安定感をもたらした。鎌田はボールロストをしないという能力に長けており、それがチーム全体の余裕に繋がっているように見えた。
ゲームメイクという観点でも、2センターバックからボールが入った際に捌くのかターンするのかの判断、それを実行する技術は日本トップであり、逆サイドへのロングボールの質も相当高い。長短のパス1本で相手にとってのトラブルを起こす様は痛快だった。

守備面は遠藤や守田に比べると緩く感じるという指摘もあるが、局面の判断はやはり優れており相手のカウンターの芽を摘むディフェンスも何度も見せていた。
守備強度の不安は他の選手との併用で解決できる道もあり、鎌田大地のダブルボランチ起用は、”誰と組むか”を含めて、残り3年半で試すべきテーマの一つだろう。

MF鎌田大地


町野修斗の献身、上田綺世という脅威

フォワードでは、カタールワールドカップで思うような出番を得られなかった2人がアピールに成功したのではないか。

スタメンで出場した町野修斗は185cmの身長を活かした前線のターゲットとしての役割を全うしたと言える。南米の激しいセンターバックを相手にしっかりと溜めを作り、先制点のきっかけを作った。自チームが押し込まれた際には両サイドのスペースに走りボールを引き出していたし、前線からのディフェンスでも何度もスプリントを繰り返し守備のスイッチを入れ続けた。この辺りはカウンターをベースとする湘南ベルマーレで鍛えられている部分なのだろう。

一方、後半から投入された上田綺世。彼はストライカーとしての怖さを相手に与えた。
無闇にスペースに降りずラインギリギリの駆け引きを繰り返す。足元に入ってきたボールはワンタッチでターンしてセンターバックとサイドバックの間を割っていくような意識は、対峙するディフェンダーからすればストレス以外の何物でもない。

得点こそ無かったが持ち前の身体能力でスタジアムを沸かせた。守田から供給された山なりのクロスに対し、ほぼ助走無しで驚異的な高さの垂直ジャンプ。身長で劣るセンターバック相手に完璧に競り勝ってみせた。
世界から点を奪うにはこういった強引さや意外性、シンプルな身体能力が必要で、多少アバウトな攻撃でもフィニッシュまで持って行けるフォワードは日本にとって貴重。

町野、上田共に自らのストロングはアピールできたはず。残り3年半の代表活動で”絶対的フォワード不在”という雑音を掻き消してほしいものだ。

FW上田綺世

課題解決は持ち越し

後半立ち上がりには、一つの問題が浮上。コロンビアがブロックを4-1-4-1の形にしながら中央エリアを締め、板倉・伊藤どちらかのセンターバックをフリーにしボールを持たせる守備を敷いた。

その上でセンターバックからの縦パスのコースを消され、サイドバックが並行の位置まで下りるしかない状態に。後ろが重くなりボールを前進させられないシーンが増えてしまった。センターバックが前に持ち運べればブロックのギャップを生むが、それも上手くいかない。
途中で中盤をダイヤモンド型にする事で、敵アンカーの脇を突く斜めのパスが入るようにはなったが、最後まで攻略はできずタイムアップ。

やはり、ブロックを敷いた相手を崩せないという近年の課題を解決する為のオプションが必要なのだろう。戦術的にパスコースを消し、球際でもイーブン以上の強度を見せてくる中南米やアフリカ諸国を相手に主導権を握るというのは強豪国への仲間入りを果たす上で解決しないといけないタスクだ。

最終予選やワールドカップのコスタリカ戦で既に露呈している問題で、ここに日本代表のアキレス腱があることは世界にも周知の事実。逆にこのシリーズで改めて膿が出た事をポジティブに考えるべきだ。

ウルグアイ戦では”偽サイドバック”を試したように、ここからの3年半はトライアンドエラーの日々になる。個の力で戦えるようになってきた今だからこそ、新コーチ陣を交え理性的に問題解決の道を模索してほしい。

名波浩新コーチ


今回の3月シリーズの収穫はあったのではないだろうか。
コロナ渦での準備期間の短さを考慮しある程度メンバーを固定して戦った2021~2022年を経て、今回は新しいメンバーの特徴を出せた。
そして、ウルグアイ・コロンビアというレベルの高いマッチメイクが出来たことで、攻守共に問題点がしっかり浮き彫りになった。

まずは来年頭のアジアカップ。
確信をもって優勝を目指せるサッカーで、アジア王者の座を奪還して欲しい。

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