鈴木まん太郎の絶対に負けられない戦い

僕はひたすらに、途方もなく朝に弱く、毎日、翌朝起きられるかのギャンブルに挑むような気分で床に就く。

ちょっと元気がないとか、二度寝しちゃうとかそんな次元では無く、爆音のアラームが長時間鳴っても、全く目が覚めない。そういうレベルのお寝坊さん。もはや、御寝坊様。

高校2年の時には、その年の1学期全学年合わせての最高遅刻回数30回をマーク。僕は当時ラグビー部に所属しており、部内で行われる学期末恒例の通信簿チェックの際に、全校生徒の誰もが恐れていた冷静沈着な恐怖のラグビー部顧問・柳下先生がこの数字を見てお手本の様な二度見をしたほど。
恐らく、後にも先にもあの先生から二度見を引き出したのは僕だけだろう。

大人になって少しはマシになったものの、毎日の晩酌が習慣になったこともあり、今でも朝のアルバイトや待ち合わせにはちょくちょく遅刻してしまう。



そんな僕が、昨日12月2日夜から、12月3日の朝にかけてあるチャレンジをした。

それは、カタールワールドカップ・0:00キックオフの韓国×ポルトガル戦と4:00キックオフのスイス×セルビア戦を両方観戦し、尚且つ朝9:00からのアルバイトにしっかりと出勤するというもの。

途方も無く無謀なチャレンジに思えたが、我らが日本代表は周囲の声に惑わされる事なくドイツとスペインに勝利した。その姿に触発され僕もこの戦いに挑む勇気が湧いた。




まずは2日夜の早めの帰宅だ。20時頃に帰宅し、食事を済ませる。
本当は大好きなお酒を飲みたい所だが、もちろん今日は飲まない。
鶏むね肉と厚揚げ、ブロッコリーをめんつゆで炒めた簡単なおかずとご飯をかき込み、直ぐにシャワーを浴びる。

バスルームを出た後、化粧水と乳液をチャッと塗り込み、0:00から10分おきにアラームをセット。緊張の面持ちで21:00頃に就寝。

この戦いは初戦の出来がとても重要だ。
枕元からアラームが鳴り響く。1回目の起床。


スマートフォンを観ると、時刻は0:00!
まずは初戦を難なく制す。歓喜の声を上げたい所だが、まだまだここは通過点。

試合は韓国がポルトガルに先制を許すものの、後半アディショナルタイムにソン・フンミン(トッテナム)のドリブルからパスを受けたファン・ヒチャン(ウルヴァーハンプトン)が逆転のゴール。
韓国のグループステージ突破を決める劇的な試合を観られて、大満足。
しっかりと起きた甲斐があった。

しかし、油断は禁物だ。
直ぐに気持ちを切り替え、2:00に二度目の就寝。
4:00から10分おきにアラームをセット。
初戦の勝利もここで敗れてしまっては水の泡だ。
堅実に2連勝といきたい。




枕元からアラームが鳴り響く。2回目の起床。

スマートフォンを観ると、時刻は4:00!
2連勝。この戦いが最も難しいと考えていたので、ホッと胸を撫で下ろす。

試合は堅守がお家芸のスイスが前半からアグレッシブに攻め込み、攻撃力が売りのセルビアも勿論応戦。取っては取られるシーソーゲームを最後は堅く締めに行ったスイスが制し、グループステージ突破。今大会でも有数の激しい点の取り合いを観られ、このチャレンジに立ち向かった自分を褒めてあげたい気分になった。

そして運命の最終戦。ここに如何にして繋げるか。この戦いは元来そういう戦いだ。

アルバイトは9:00からなので、8:10までに起きれば遅刻することは無い。
逆に8:30を超えると、間に合わない。
ここがデッドライン。

緊張は感じたが、先の2戦を制した自身が僕にはある。

しかし驕ることなく電気は点灯させたまま。
アラームは少し早めの7:50から10分おきにセット。
万全の対策。少しの隙も与えず、外が明るみ出した6:00。最後の就寝。



枕元からアラームが鳴り響く。最後の起床。

ゆっくりとスマートフォンの画面を観る。


時刻は8:39。

唸るように鳴るスヌーズの音が、僕の敗北を知らせていた。



ちょっと怒られた。

ちゃんと寝れば良かった。

申し訳ありませんでした。

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