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新スタイルの芽吹く春【ガンバ大阪】

ガンバ大阪が昨年、一昨年に続き、思うように勝ち点を積み上げられていない。現在、第5節まで消化していまだ未勝利。新監督の就任、新戦力の加入に大きな期待を寄せられたが、早速降格争いの候補に数えられてしまっている。

しかし、リーグ中断前ラストの第5節・北海道コンサドーレ札幌戦で上昇の気配を感じさせた。今年こそ、西の横綱の復活となるか。

スペイン式のポジショナルプレー

昨季、ガンバ大阪は最後尾から繋ぐフットボールを目指し、2014年に3冠を達成した際のコーチでもある国内きっての戦術家・片野坂知宏氏を監督に招聘した。

しかし、前年までの守備的なスタイルからの移行が上手くいかず、試合を重ねる毎に押し込まれる展開が増え降格圏内が定位置に。その結果を受け第25節終了時点で片野坂監督が解任され、新たなスタイルの構築は叶わなかった。
終盤は徹底した堅い守備と、食野、パトリック、宇佐美ら前線の活躍で何とかJ1残留となったが、目標を達成出来ず不本意なシーズンを送った。

再起を図る2023シーズンは、スペイン人のダニエル・ポヤトス監督が就任。スペイン式のボールを握るフットボールを再び目指しているが、結果には繋がっていないのが現状だ。ここまで5節を消化し、0勝3分2敗。
第3節ヴィッセル神戸戦、第4節サンフレッチェ広島戦はボールを持つフットボールのデメリットが露呈。ポゼッション率では上回ったものの、ハイプレスを持ち味とする両クラブ相手に低い位置でのボールロストが起きてしまい敗北を喫した。

続く、第5節。ホームでの北海道コンサドーレ札幌戦。前半の内にセットプレーと連携ミスから2失点。その後も札幌のプレスの影響でロングボール主体になり主導権をなかなか握れない。今回も敗戦濃厚かと思われたが、ガンバ大阪の取り組んできた繋ぐフットボールが後半に芽吹いた。

イスラエルの天才と流麗なサイド攻撃

後半、慎重に入った札幌相手にペースを掴むと、56分に石毛秀樹とダワンが投入されてから徐々に中盤の主導権を握り始める。

直後の59分。右サイドでの細かいパス交換から、ネタ・ラヴィから右の高い位置を駆け上がる半田陸へピッチを縦に切り裂くスルーパス。半田の正確な低いクロスに石毛が飛び込みゴール。反撃の狼煙を上げる。

するとその2分後。今度は自陣左サイドライン際から石毛に縦パスが入ると、連動してオーバーラップした黒川圭介がスペースでボールを受ける。そのまま持ち上がり、ファーサイドの杉山直宏へサイドチェンジ。杉山の冷静な折り返しにを受けたダワンが同点ゴール。まさに電光石火の同点劇。

勢いを得たガンバ大阪はその後も押し込み続け決定機を作り出すが、2-2のままタイムアップ。勝ち点3を手にすることは出来なかったものの、後半の2得点は可能性を感じさせる見事なものだった。
中央を経由しながらチーム全体が一気に加速。サイドバックが高い位置で攻撃に絡み、フィニッシュはインサイドハーフの飛び出しでゴールを奪う理想的な崩し。

そんな今季のガンバ大阪の鍵を握るのは、アンカー起用されているイスラエル代表ネタ・ラヴィ。
今季のガンバ大阪はサイドバックに黒川、半田、ウイングには杉山、食野、ファン・アラーノらを擁し、サイドからの攻撃が間違いなく武器になる。
ネタ・ラヴィは左右への展開力もあり、常に狭いブロック間を抜けるスルーパスを”狙っている”。彼が目線を上げた状態でボールに絡めれば、スピードに秀でるサイドアタッカー達の能力が爆発するだろう。

札幌戦は、最前線での鈴木武蔵の体を張った正確なポストプレーと、石毛秀樹のライン間でのボールの引き出しが機能し、ネタ・ラヴィが前向きに視野を確保しながらゲームメイク出来たのが良かった。
「ポスト遠藤保仁」は意外にも、私たちには馴染みの薄いイスラエルという国から来た助っ人なのかもしれない。


ハイプレスがトレンドになりつつある昨今のJ1リーグでは、後方から繋ぐフットボールを貫くのは難しい。しかし、札幌相手に見せたあの2得点からは、新たなガンバ大阪の哲学が花開く予感がした。

2005年の超攻撃的サッカー。
2014年の堅守速攻。
そして2023年。ガンバ大阪が王座に返り咲く為のニュースタイルが生まれようとしている。

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