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#3 取材における視点づくりのプロセス(2)~「音声実況」から「実況風ブログ」へ~

前回から取材における視点づくりのプロセスについて執筆をしている。

バスケットボールのラジオ番組開始後、会場の臨場感を音だけでお届けする「マンティー実況」をベースに取材活動を続けてきた。

ただ、全ての会場で実現できていたわけではない。

会場や大会によっては、音声収録を禁止されていたにも関わらずに実施していたので「駄目だ」と怒られたこともあった。

2016年10月に開幕したBリーグでは、前回でも触れたとおりスチールエリアや記者席で録音ができなくなる。

これにより取材活動のスタンス変更を余儀なくされたのだ。

ライティングへの挑戦

自分の持ち味でもあった「実況収録」が出来なくなると知って、Bリーグの取材では記者会見の音源をラジオで放送することにした。

Bリーグ開幕前後にリーグ側と協議する機会があり、試合後の記者会見や選手の囲み取材音源は、ラジオで放送してもよいと許可を頂けた。

そのため、開幕から2シーズンは記者会見で積極的に質問し、選手の囲みにおいても質問をしっかりまとめてインタビューすることに専念する。

BリーグのクラブからもSNSを通して宣伝していただき、関東地区を中心に番組の認知度が上がり、バスケットボールの取材者として、少しずつ足跡を残せるようになってきた。

しかし、肝心の実績にはつながらないとも実感。何か別の方法で特徴を出せないのか、模索をしていたのもこの頃だった。

Bリーグが開幕する2年前の2014年10月、日本のバスケットボール界はFIBAから制裁を受けていた。

日本バスケットボール協会(JBA)のガバナンス欠如、男子日本代表チームの強化遅れ、2つの男子プロリーグ。

地元開催のオリンピックを控えながら、開催国が本大会に参加できないという危機的な状況に置かれていた。

川淵三郎氏がFIBAからタスクフォース会議のチェアマンに指名され、制裁解除に向けて動き出していたころ、私もある人から「ブログでも良いから記事を書いてみたら」とアドバイスを受ける。

私は小学校のころから算数・数学といった科目が好きで、高校や大学も理系のコースに進んでいた。

一方、国語においては勉強しても全然得点が伸びず、どんどん苦手科目となっていく。

大学を卒業後、社会人になってからも文章を先輩へ見せると「お前の文章はおかしい」と言われていたぐらい、会社ではひどい評価を受けていた。

だから、文章を自分で書く考えは無く、バスケットボールを取材するようになってから、地上波のラジオパーソナリティーを目指していたものの、私はこのタイミングで思い切って書き手になることを決意する。

ではどういうスタイルとするのか。取材してきた内容をそのまま書こうと決めて、思いついたのが「実況風ブログ」だった。

音声実況から実況風ブログのスタイルを作り上げるが・・・

「実況風ブログ」は、まるで実況をしているかのように文章が構成されているものと定義する。

実況で発した言葉がそのまま文章になっているイメージ。つまり、文章だけで会場の雰囲気がわかるような文章を目指していた。

私の「マンティー実況」はゴール下付近で収録していたので、ボールや選手の声や観客のコール、バッシュの音。すべてが実況のバックミュージックだった。

ただ、その臨場感を文章だけで再現するのは難しい。

難しいことだから挑戦したし、これまで取り組んできたことを無駄にはしたくない。

これで特徴が出せるのであれば尚良いと。

後に、この実況ブログのような記事を書いてほしいとある媒体から依頼があり、ようやくスポーツライターとして稼げるようになったわけである。

いざ執筆するとなれば「実況風ブログ」だけでは内容が薄くなりがちで、取材した試合のポイントも書き加えるようにした。

媒体で書き始めたころ、私は「実況風ブログ」への想いが強くありすぎて、それにかなり時間を割く。

たがBリーグも2年目、3年目と過ぎていくと様々なバスケ媒体が登場し、これまで取り組んできた「実況風ブログ」も真似に近い形で記事執筆されるようになってきた。

相手は組織で取り組んでいたため、膨大な量で拡散をされる。個人で活動していた私にとっては脅威となった。

そして、新たな「マンティー・チダ」のライティングスタイルを求めて、模索する日々が始まるのだ。

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