4 FORCE / Every Little Thing

ELTのアルバムレビューを続けてみることとします。
続いては2001年3月にリリースされた「4 FORCE」です。4枚目のオリジナルアルバムなので4です。そのまんまです。
2000年3月にリリースされたeternityで五十嵐さんが脱退し、2人体制になってから初めてのオリジナルアルバムです。このアルバムは山中湖の合宿所で2週間こもりきりで作られたとのことで、制作スケジュールはかなりタイトだったと思われます。ELTは12枚のオリジナルアルバムのうち6枚が3月に発売されています。本人も「決算だからかな?」と冗談交じりに言いますが、あながち間違っていないような気がします。エイベックスなので・・・。

1.Graceful World ★★★☆
18枚目のシングル、このアルバムの先行シングルです。ELTにはあまりない、ミディアムテンポの明るい曲です。これ以降のELTはミディアムテンポの曲はあっても暗い曲が多いので、曲調としては珍しい部類といってよいのではないでしょうか。前作fragileの陰に隠れてしまった感じがしないでもないですが、去年の24周年YouTube配信でのファン投票人気ランキングで19位に入っていたので、ファン人気はそれなりにあるようです。後述の愛のカケラもそうですが、五十嵐さんが抜けてファルセットを使う曲が増えたな、というのがこの曲の印象です。

2.JIRENMA (Album Mix) ★★★★
17thシングル「fragile」との両A面です。fragileはELTを代表するほどの曲になりましたが、一方でこのJIRENMAにはあまりスポットが当たりませんでした。両A面なのにそうしてる意味がないんですよね。タイアップはありましたが、PVが作られるわけでもなく、テレビで歌われたのも1回だけ(CDTVスペシャル2000-2001の1回のみ)。曲としては、イントロがなくいきなり頭サビ。珍しいスタイルでした。作曲は伊藤さんでしたから、「2人でもやってけるんだぞ」というアピールも兼ねて、fragileとは別にシングルカットしてもよかったんじゃないかなぁと思います。正直この曲がなくてもfragileは売れたように思います。

3.愛のカケラ ★★★★☆
これが2人になって実質初のシングルです。作詞も大変だったし、歌入れも相当苦労したと持田さんは語っています。それもそうでしょう、最高音がHiDで、これを何度も連発します。リリース当時こそかなりがんばって歌っていましたが、この年の紅白歌合戦ではすでにキーを下げていました。と同時に、このあたりから持田さんの歌唱力に陰りが見え始めたように思います・・・。陰りというか、今まで力を入れずに出せていた高音が、この曲を境にかなり負担になっているのでは?と見受けられます。歌詞は五十嵐さんの脱退をそのまま心境にした、といいますが「教室の笑い声」とは?はて??歌詞のテーマ性にはやや疑問も残りますが、それも気にならないほどの清涼感と爽やかさがあります。

4.Good for nothing ★★★
ここでやっとアルバム曲が来ます。持田さん作曲です。重厚なベースと適度なシンセサイザー、五十嵐時代を意識したんだろうなぁという音作りを感じます。歌詞は・・・これは何の曲なんだろう・・・「孤独」「あなた」「連れ出す」など断片的な想像はできますが、イマイチテーマ性が見えてこず。「囚われた自分を連れ出してほしい」という願望の表れかなあ。とはいっても「私」と「あなた」の関係性も見えてこず。この曲は歌詞より持田さん作曲と、音作りに注目した方がいい曲かも。それにしても、持田さんは自分で作曲してもキーがきつそうな曲を作ります(これ以降もその傾向があります)。

5.鮮やかなもの ★★★★
2005年発売のセルフカバーアルバム「ACOUSTIC:LATTE」にも収録され、その後コンサートでもたびたび歌われました。アコースティックでも違和感なく、むしろその方が情緒あふれるアレンジになったかもしれません。ABメロでは今までにないぐらいの低音ですが、サビに入ると急に高音が増えます。一時期のELTはこのタイプのメロディー運びが多くなりました。歌詞は失恋がテーマっぽいですが、悲しいとか寂しいとかそういった負の感情よりも、終わって一区切り、あのときはよかったね、ぐらいの未練がましくない内容です。

6.sweetaholic girl ★★☆
持田さん作曲です。わりとタイトルそのまんまで、甘いもの大好きな女の子のスイーツ食べたいソングです。特に何かに喩えているわけでもなさそう。これが当時の持田さんの等身大の感情なのかも。持田さんは楽器ができないのでいわゆる鼻歌作曲らしいです。鼻歌を歌に起こすってどういう手法をとるのでしょう?自分が歌ったのを楽器で弾いてもらって、それを楽譜にして、とかやるんでしょうか。

7.Home Sweet Home ★★★
これもわりとタイトルそのまんまです。お家大好きソング。持田さん、合宿でホームシックにでもなったのでしょうか。家に帰ると「あなた」が待っていることが何よりの幸せという歌。曲はものすごくアップテンポなので、ものすごく「帰りたくて仕方ない」みたいなことではなく、「あなた」が待っている家に帰れてうれしいな、ぐらいのどちらかというと「家に帰ることが日常の幸せの一部」ぐらいのテンションの曲っぽいです。

8.fragile ★★★★★
ライトなリスナーには正直ここまでの4曲のアルバム曲続きはしんどいかもしれません。それだけに、ヒット曲をここでもってきてもらえると「来た!!!」という気分になります。当時の持田さんとしては、前作の愛のカケラに続き「またバラードか」という気持ちが大きかったようですが、「これは売れるから」という松浦会長の助言もあり奮起したそうです。確かに2大ヒット曲がバラードなので、この曲のヒットはELT=バラードのイメージを根付かせた要因として大きいかもしれません。私自身はあまり意識してませんが。

9.No limit ★★★☆
冒頭の鈴のような音、ボンヤリとした響きがややスピリチュアル感があります。「僕らは羽を持っていたんだ、それを忘れていた、羽ばたこう」という内容の曲。この曲では歌詞の一人称は「僕」です。「私」のものもいくつかありますが、やはり持田さんの作詞は「僕」の方がぴったりハマるなという印象があります。最後の転調がキツそう。特にライブDVDを見るとそうなのですが、持田さんの音域ではHiDはかなりしんどいっぽいです。

10.force of heart ★★★
伊藤さん作曲。「ススメ乙女たち」という歌詞から、完全に女の子目線の曲あるいは女の子への応援歌っぽいです。不条理な世の中や、ストレス社会に負けるなという応援と新生活を応援する意味合いを融合したっぽい歌詞です。とりあえず女の子への応援歌を作りたかったのかな。それ以上でもそれ以下でもない感じ。この曲も最高音HiD。きついんじゃないかなぁ。

11.One ★★★☆
このアルバム内ではわりと壮大めなバラード。テーマも何やら大きそう(あんまり深追いしてない)。間奏でアコースティックギターのソロがあります。これ以降ELTはアコースティック指向を深めていきますが、この時期のアコースティックな雰囲気はかなりレア。エイベックスサウンドと、持田さんの壮大めな歌詞、アコースティックギターの融合と、ある意味ではカオスな曲です。

総評:★★★
よくも悪くもアルバム曲がフラットに作られている感じがします。言ってしまえば、「2001年3月にリリースすることを目的とされたアルバム」のニオイがしてしまうのは気のせいなのでしょうか。11曲中シングルが4曲しかないので、7曲のアルバム曲をひねり出すのは簡単なことではなかったでしょう。合宿をしたぐらいですから。そして、このアルバムのキーパーソンはアレンジャーの桑島幻矢さんでしょう。ELT初期から関わってきた人物で、五十嵐さんが脱退し、アレンジの軸は彼に託されていたと考えられます。「五十嵐さん時代のファンを逃がさずかつ、2人で作った世界観を生かす」ということは簡単ではなかったでしょう。結果、エイベックスっぽさはあるものの、五十嵐さんが築き上げた世界とは一線を画したナニカができたような気がします。まさに模索中といった状態。でもELTがさらに変化し、いろいろな世界を見せてくれるとは、このときは誰も想像してなかったのではないでしょうか。