華Doll*2nd season INCOMPLICA:IT～ICON～が発売され、『Umbilical Lover』のMVが公開された。

さすがに「～Pensée～」よりは平和だろうと思っていた私が間違っていた。
完全に地続きである。（あたりまえともいえる…）

もちろん、全員に行く末が気になるのだが、今回はとにかく凌駕・眞紘、そして刹那が気になった。
この3人について考察していきたい。いや、せざるを得ないのである。

以下、楽曲・ドラマパート・ＭＶ・パンフレットなど、すべてのコンテンツのネタバレを含む。そして、「華Doll*」関連の情報すべてを網羅していないうえでの、考察という名の妄想、二次創作であることにご注意いただきたい。神々による考察も目を通していないので、今さら感もあると思う。ご不快に思う方はこの時点でＵターンをお願いしたい。

基本的な考察方針は、既存の記事を参考にしていただきたい。

画像はほとんど出さないつもりだが、すべて公式ＨＰ（https://hana-doll.com/）・公式Twitter（@Amagiri_Prod）・公式チャンネル（https://www.youtube.com/channel/UCxAHYHVXlnenUHmGzt4HOTA）からの引用である。

1.それぞれの「愛」

『Umbilical Lover』MVの冒頭でそれぞれの「愛」についてのメッセージが流れた。一覧にしてみよう。

まず確認しておきたいのは、凌駕と眞紘には「愛」というフレーズがないこと。
とにかくポイントとなるのは「チヒロ」であろう。
↑のフレーズはあくまでも表向き（かつ核心に触れないもの）であるために、「愛」がない（隠している）のかなと思うのである。詳しくは後述したい。

薫は言わずもがな、記憶の混濁のことだろう。陽汰については鬨との過去の一部を忘れていること。そう考えると、陽汰は種を埋め込まれたその直後くらいに、記憶を一部手放していたことになる。このあたりは刹那の例で考えたいので後述。

チセと理人。正直なところ、ドラマパート終盤では、なぜチセが不調を引きずっているのかよくわからなかったのだが、MVを見てなんとなくわかってきた気もする。
チセはやはり、自身の肉体の欠損を、種や衣服で補っているところに原因があるように思うのだ。横たわり、蔓に捕らわれたようなチセの背後には、さまざまな彼の表情（ジャケ写）がうっすら見える。
それはどれも「チセ」であり、「ちとせ」ではない。本当の彼を愛することへの欲望ということになろうか…そして「ちとせ」を唯一知る理人もまた、「チセ」ではなく「ちとせ」としての彼を望んでいるということになろうか…
（チセの鏡にだけ「I Want You」の文字があるのも示唆的である…きっとYouは「ちとせ」だ）

2.刹那と眞紘―繰り返される対比

さて、本題に入っていきたい。刹那と眞紘と凌駕について考えたいのだ。

MVに顕著だが、今回のテーマカラーはおそらく黒・赤・白。
特に気になるのは白と赤の対比である。
そして、白は刹那のカラー、赤は眞紘のカラーである。

象徴的だったのは、白い仮面の口元で、赤い花が枯れる場面。

まるで白い仮面が花から命を吸い取っているかのように見える。

そして刹那のラストカットには、「赤い花びらを咥える」様子が…

じゃあその赤い花とは…？

私は「眞紘＝赤い花」としか考えられなかった。

眞紘が散り、枯れたあと、それを吸い上げるのが刹那であるということになる。

眞紘のテーブルには、植物がのせられた皿がある一方で、刹那のテーブルの皿にはなにもなく、かわりに黒い蝶が飛んでいるのも、なんとも意味深長だ。
眞紘は｢花｣なのだ。
しかし刹那は、少なくとも現段階では花ではないのではないか。
むしろ、花の蜜を吸う「蝶」なのではないか。

乱暴な言い方になるが、刹那にとって眞紘は、「糧」である、と思う(勿論本人は無自覚だろう)。
その「糧」によって、刹那は何を得るのであろうか。

彼に最も欠落しているのは、感情や情緒。
dollたちの花は、彼らの感情によって成長する。つまり感情の蓄積こそ花である。

その花を食べるというのだから、刹那は「眞紘の感情を獲得する」ということになろう。
たしか種には、前の宿主の記憶などが残る…という設定だったと思う。
それを重視するなら、刹那は花を食べることにより、「眞紘と融合」することになる。

なるほど、だから今回のＭＶでは細胞が融合するような描写が複数あったのだ。
（「The Place of Fate」の「打ち砕かれたそのハートのかけらが光示す」というのも、ネガティブに考えれば…）

3.融合―天霧が目指す「アイドル」とは

この先に眞紘と刹那の「融合」が想定されているとして、今一度、天霧プロダクションが目指す「完璧なアイドル」とは何なのか考えてみよう。

ドラマパートの凌駕と天霧の会話では、
「あの出来損ないを生かすも殺すも凌駕次第」
「凌駕の役割は継続、まだ終わっていない」
というやりとりがあった。Anthos*がまだ途上であることは明らかだ。

そして、凌駕はアイドル達を覚醒させる才能がある…というようなことを言われた点も、思い出しておこう。

さらに、「ICON」内に隠された暗号でアクセスした先にある、記者たちのチャットでは、
「Anthos*のプレデビュー組は寄せ集め感がいなめなかった」
という評価を下している。刹那の投入は｢底上げ｣だとも。

つまり、種を埋め込まれていても（開花しても）、「完璧」には程遠かったということではないのか。

そしてドラマパートでは、「完璧」を目指して育成されているはずAnthos*が、芸能界において不遇であることも明らかになった(楽屋など)。

彼ら7名全員を「完璧」にするという目的と、矛盾してはいないだろうか。

ここで少し別の考え方をしたい。

天霧は「完璧なアイドルグループ」を作ろうなどとは、一度たりとも発言していない。
私はここがポイントなのではないかと思う。

究極のアイドルなのだから、複数でなくていいはずだ。
唯一無二、絶対的な「ひとり」でいいはずだ。
いいかえれば、最後に残る「ひとり」以外は、その「ひとり」のための犠牲―「糧」かもしれない。

かなり飛躍した考えになるが、今のところの私の見立てはこうだ。
天霧がいう、「出来損ない（＝眞紘）を生かす」というのは、彼以外の人物を「器」とした「完璧なアイドル」の「糧」になる、ということだと思うのだ。
そのためには、開花し、十分に感情を吸い上げ、枯れた花を、その「ひとり」に食べてもらう必要があるのではないか。

それが刹那だというのではないのか。

よくよく考えれば、楽曲名が「Umbilical Lover」なのだ。
へその緒は、母体から胎児が養分を吸い上げる器官である。

アイドル主体で考えれば、ファンから愛を吸い上げるという意味なのかもしれないが、刹那と眞紘の融合を考えるなら、こちらにこそしっくりくる表現ではなかろうか。
あたかも母が子に与える養分（＝愛）のように、眞紘は自らの花を刹那に与え、それにより刹那は「愛を得る」のではなかろうか。
（だからいまはまだ、彼の目の前の食卓には「供物」がないのかもしれない。だってまだ眞紘は健在だ）

天霧は、まずはプレデビュー組として「糧」を育てた。
そのためには、悲喜こもごもの感情を発露させることが必要で、それを促進させたのは凌駕である。良質な「糧」を育てたことで、天霧は凌駕を「評価」している。
おそらく、凌駕自身はその「糧」には入っていない（彼は強制的に薬で開花した）

そして刹那の加入により、Anthosは第２フェーズに入ったと思うのである。
今度は、刹那というSSクラスの「器」に、「糧」を取り込ませなければならないのではないか。

凌駕はすでに「刹那加入の目的は、Anthosをつぶすためではない」と気が付いている。
天霧は今後彼との対話の中で、「刹那を「完璧なアイドル」にしてくれ」と新たな役割を求めてくる可能性は大いにあると思うのである。

4.刹那と「チヒロ」

眞紘を守り、チヒロの真実を明らかにしようとする凌駕が、眞紘を「糧」として差し出すはずがない…私も確かにそう思った。

だが、彼が眞紘よりも優先しそうなことがある。
それは間違いなく「チヒロ」だ。

もし「チヒロ」と「刹那」につながりがあるとしたら？

かなり事情が変わってくるではないか。

考えてみれば、「刹那」と「千尋」である。
「短い時間」と「長い時間」
なんとわかりやすい対比か。
※追記：「チヒロ」の本名は「智紘」と教えていただいたが、彼のアイドルネームは「ChiHERO」表記であるため、「千尋」の意味も込められる？と考えている。

「チヒロ」は言うなれば、天霧が求める「完璧なアイドル」に最も近い存在だったのだろう。
だとしたら、その「再現」に躍起になるのは当然である。

刹那は「チヒロに似ている」とは言われていない。
しかし実力としてはかなり近いものがあるようである。
だとしたら、刹那に埋め込まれた「種」は、もしかして「チヒロ」が残した「種」ではないのか。

「種」に残る「チヒロ」としてのかすかな記憶があるからこそ、刹那はやたらと眞紘になついているのでは？そして、眞紘に「痛い顔をさせる」ことを嫌がるのでは？

そうなると、凌駕にとっては「眞紘を守る」か、「チヒロを蘇らせるか」の二択を迫られることになる。これは…彼にとってはかなり悩ましい問題なのではないか。

恐らく、刹那という「器」の中で、チヒロの「種（花）」を覚醒させるためには、血縁者である眞紘の成分を取り込むことが不可欠なのであろう。外見的に「チヒロ」に似るためにも、かもしれない。
だからこそ天霧は、「出来そこないを生かす道がある」とほのめかしたのだと思うのである。
それができるのは、｢チヒロ｣と親交があった凌駕なのだろう。

ドラマパートで、凌駕は、眞紘の自殺を止められなかった夢を見ている。
その行動の原因が、刹那のために、なのか、それとも「チヒロ」のために、なのかはわからないが…
「みんなの為なら僕は」というポリシーの眞紘なら、自ら「糧」になっていく可能性もある。
そして凌駕は、それを知りつつも「チヒロの蘇り」を欲して、阻止しない…ということもありえる。

つまり凌駕が言う「お前のためなら俺は」の「お前」は
「眞紘」なのかもしれないし、「チヒロ」なのかもしれない、ということである。

究極の選択の狭間で苦しむであろう、凌駕のこの先が心配である。

5.亜蝶と刹那―蝶は「千尋」を生きられるか

さて、刹那関連といえば、亜蝶のことも忘れてはならない。
刹那は「亜蝶は友達じゃない、知り合い」と言っているが、どうも眞紘にかんすることで、亜蝶から探りの連絡が来ているようだ。

前述したように、「チヒロ」となるために必要なトリガーが「（血縁者である）眞紘」なのだとしたら、亜蝶が気にかけるのも、あり得ることだろうと思う。
（とはいえ、亜蝶にチヒロの種が入っているとは考えにくい。器としては刹那よりも耐久性に優れず、チヒロの種を受け入れたら壊れてしまう恐れがあったのかもしれない）

いわずもがな、Loulou*diのMVでは、たびたび蝶が出てくる。そして「亜蝶」だ。
そして、今回のMVに顕著だったが、Anthos*の中では、「蝶」は刹那に重ねられていると思う。

「花」という名前を持つグループ内に、「蝶」がいる…
単純に考えれば、食物連鎖でいうと、花＜蝶である。
すると、二つのグループにおいて、亜蝶と刹那が、「糧」を得る「器」ということになる。
（ただし、Louloudiについては、さらにその先に「ルイの覚醒」が目論まれているようにも思っている。詳細はLouloudi記事参照）

私はどうにも、天霧が目指すアイドルというのが、質＋時間であるように思えてならない。「完璧」をなるべく長い時間保つこと…それは、限りある命・肉体を持つ人間には難しい。
ならば、「器」だけを変えて、中身は継承していけばいい。

アイドルとしての資質や記憶を、花に吸わせ、「開花→枯れる→種→植える」の無限ループを作り出そうとしているように思うのである。
良質な種が何度も融合していけば、それだけ「完璧」な種ができる。それを入れる良質な「器」さえ、その都度用意できればいい。

だから「器」は「刹那」でも、儚い命の「（亜）蝶」でもいい。
その中身が「千尋（ChiHERO）」なら。

MVにでてきた、花の命を吸っているかのような仮面――あれこそが、天霧プロダクションが目指す「完璧なアイドル」の表象ということになるかもしれない。

ということで、また性懲りもなく、根拠の薄い妄想を書き散らしてしまった。どうも華dollの考察は、どんどん冷静さを失ってしまう…
とはいえ、思い込みかもしれないが、「ICON」を通してなんとなく刹那のことがわかったような気がしている。

今後は凌駕の苦しみが増していきそうで心配である。
以前も考察したのだが、「薬」を担う凌駕と、「医」を担う理人、この二人が重要だと思っている。ここ最近、東堂ドクターが出てきていないのも気にかかる。
凌駕が少しでも理人に相談できればいいのだが、チセのことでそれどころではないというのも、つらいところである。

「ICON」をもって2nd seasonは完結とのことだが、3rd seasonはさらに大変なことになりそうな予感である。
個人的には、Loulou*diとAnthos*がもう少し密にかかわってくるといいなと思っている。そうすることで、天霧プロダクション、そして華dollプロジェクトの暗部も、少しは明らかになってくるだろうと思うのである。

なによりも期待したいのは、「チヒロ（の回想？）」の登場である。
CVをどなたがなさるのか…というところも大変気になるが、はたして出てくることはあるだろうか。

とにもかくにも、Loulou*diとAnthosの幸せを願うばかりである。

長文にお付き合いいただき、ありがとうございました！