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【まほやく~2部9章】置き去りの花びら(ネタバレ)

本当は周年イベストまで、まほやくの考察はしないつもりだったのだが、
あまりにも!あまりにも、2部9章に心揺さぶられてしまい…とりあえず、何かを書いておこうと、ただそれだけである。

何を書きたいかといえば、とにかくカインとオーエンである。
1部の終盤からずっとずっと彼らをハラハラしながら見守ってきたのだが、今回のストーリー更新で、少しだけ彼らに近づけた気がしたのである。
もちろんまだストーリーは続くわけで、私の勝手な思い込みかもしれないが、とりあえず期待も込めて書き残して置く。

いつも通り、大変なネタバレをする予定であり、妄想も多く含まれる。カードストーリーは全く読んでおらず、ゲーム以外の媒体の情報はほとんどチェックしていない上での、二次創作だと思っていただきたい。
また、記事中の画像は全てゲーム内からの引用である。


1.「幼いころ」ではない可能性―オーエンの傷人格

唐突だが、2部9章を読んで私が感じたのは、
「オーエンの傷人格は、「過去のもの」ではない」
という、謎の確信であった。

根拠はとても薄い。ただそう思ったに過ぎない。

本当にいまさらである、いまさらなのだが…
どうして傷人格オーエンは、時折しか顔を出さないのに、リケやミスラ、オズの名前と顔が一致しているのかという疑問が、ふとよぎってしまったのだ。

通常オーエンは、傷人格のときの記憶がない。
傷人格オーエンはどうなのだろう?これまではっきり示されていないのではないか?

全てを理解できているか否かは別として、傷人格オーエンは、おそらく通常オーエンの記憶と、地続きなのではないかと私は思う。

言動がおぼつかないし、カインも「過去の人格」として扱うために確認できないだけで、きちんと質問すれば、通常人格の時の記憶を、少しは持ち合わせているのではないか。

でなければ、西の国に出かけるカインのことをミスラに聞き、エレベーターを探し、カインのもとに来るなんてことができただろうか。
ミスラだって、あえて積極的に「カインが西にいくらしい」なんてオーエンに言うはずがない。恐らく傷人格オーエンからたずねたのだ。

なぜ?なぜ聞いたのか。

それは前日に「置いて行かない」……その話題を、通常オーエンとカインが話したからである。

本当にカインは置いて行かないのか、オーエンは確認したかったのだ。
ただ、確認したのは傷人格のオーエンだった。

…通常オーエンの記憶を、傷人格オーエンが有している証拠ではないのか。

これまで「過去の人格」と考えてきたために、大きな見落としがありそうだ。今回は、「傷人格オーエンは、過去のものではない」という観点で考察していく。

2.鏡との対話―「自分を知る」


赤と黄色の目が、左右対称になっているのがカインとオーエンである。
だから二人は向き合うと、まるで自分の鏡像をみているような状態になる。

9章では、この感覚は主にカインから語られていた。
もちろん、今回はカインの書のエピソードであるため、カイン視点になるのは当然である。

ここで、オーエンにとっては…?
ということを今一度確認しておきたい。

オーエンにとっての「自分」はなんなのか?
過去記事でも考察したが、オーエンは「人にどう見られるか」を感じ取り、
それに合わせることで、人格を保っている。


「僕のことに詳しくないんだよ」

というオーエンのセリフにすべてが集約されていると言っていいだろう。

カインにとっての「憎悪の対象」「倒すべき相手」「騎士の敵」のように見られることによって、オーエンは「悪い魔法使い」でいることができた
なによりも、そのカイン自身と、目玉でつながっているのだ。

カインは、その肉体とまなざしとで、オーエンを保証する存在となっている。

その反動であるかのように、この物語の登場人物のなかで、ここまで話がかみ合わない二人もいない。

…のだが、2部9章で、カインとオーエンの対話は大きく変化した。
話がきちんとできているのである。

「いつでも殺せる」「殺されたい?」…このやりとりをやめよう、というカインの提案。
そして、カインはオーエンの足首をつかんで、彼を地上に戻した。

たいてい上から見下ろされるか、下から睨みつけられるかが多かった二人の目線が、同じ高さになったと考えていいだろう。(最初から目線を合わせて話せばよかった、とカイン自身も言っている

そこからは、カインに対してオーエンが「どうして?」と尋ね、カインが答える。
オーエンに対してカインが「なぜ?」と尋ね、悪態をつきながらもオーエンが答える。
この繰り返しになった。

理解を伴う、双方向の対話である。
私は泣いた。こんなやりとりが見られるなんて…

そしてこれは「自分との対話」のようにも思える…というのが重要である。

オーエンはカインとの対話で、傷人格のときの自分を知った
カインはオーエンとの対話で、自分と呪文との力の差を知った

なるほど、相手を通して、自分を理解できている。
相手の中に、自分を見出している。お互いに、自分を知る手掛かりになっている。
(過去記事では、感受性が疎く、相手や自分の心の機微に疎いのがカインの厄災の傷だと考えたが、それもこのオーエンとのつながりと対話で改善されてきている)

目玉のつながりを抜きにしても、二人は「つながって」きているのだと思う。

ここでもうひとつ考えておきたいのは、傷人格オーエンの時の「対話」である。
通常人格とは少し違う意味で、傷人格オーエンもまた「自分がわかっていない」

2部9章でもそうだったが、住処、家族、好き嫌いなど、記憶がほとんどないのである。
たいていの場合、カインとのおぼつかない対話の中で、ぽつりぽつりと思い出していくが、基本的には「わからない」のだ。
ただひとつはっきりしているのは、「騎士様」を待っていい子にしていたのに、置いて行かれたということ。

傷人格オーエンにとっても、騎士であるカインは「自分を知る」ための手がかりなのである。
やはり、オーエンの通常人格と傷人格は…地続きではないのか。


3.花びらを埋める―飲み込んだ「いかないで」

西の国へ向かうカインのもとに、傷人格オーエンが駆けつけた場面。
ここまで、明確に、オーエンが衆目に晒されながら「カインを引き留めた」ことがあっただろうか。
私の記憶の限り、たぶんない。

概念としての騎士に縋ることはあっても、「カイン」個人に縋ることは、なかったように思う。

繰り返しになるが、オーエンは自らミスラにカインの行方を尋ね、追いかけてきた。これまで傷人格のオーエンが、自発的にカインを探したことなどなかったはずだ。

ではなぜ今回は探したのか?

前日の、通常人格のオーエンとカインの最後の会話を見直したい。

ノーヴァの手がかりを探しにいくというカインに対して、オーエンは

「騎士様には無理だよ。ノーヴァに石にされる」
と告げている。

カインはそれに対してオズやシャイロックが同行するから大丈夫だ返す。
オーエンはその後何かいいかけて、さっと消えてしまったという。

何を言いかけたのか。

ほぼ確実に、「いかないで」である。

その直前に、傷人格のオーエンに対してカインが「置いて行かない」決意をしていることを、オーエンは耳にしている。
もちろん、騎士に縋るような意味で、カインの西の国行きを止めたいわけではなかろう。これまで以上に、カインが死ぬ可能性が高いから、引き留めようとしたのだ。

しかし、その「いかないで」は言葉にならず、オーエンは消えてしまった。

そのかわり翌日になって、「いかないで」を言ったのは、傷人格のオーエンである。

つまり、通常人格のオーエンが「飲み込んでいえなかったこと」を、
傷人格のオーエンが、声に出して言っているということである。

だとすれば、「悪い魔法使い」というレッテルに合わせる通常人格のオーエンに対して、
傷人格とは、レッテルの裏に残る、「オーエンそのもの」なのではないか。
傷人格が幼い様子なのは、オーエンの純粋な部分を、濃縮して集め、外部から遮断していたためではないのか。

示唆的な一文がある。

リケと庭で遊んでいたオーエンは、「落ちた花びらを集めて埋めていた」のだという。

ただの子供の遊びだと思えばそれまでだ。
しかし「埋める」とはなんだろう。
埋葬、封印…とじこめること。

きれいな花びらを、土の中に埋めるように、
オーエンは「自分」のもっとも柔らかく傷つきやすい部分を、自身の奥深くに埋めて、封印して、置き去りにしているのではないか。

だから、「自分がわからない」のだし、記憶がないのだ。
でも、オーエンが真に欲することは、その封印した「オーエン」の口でしか言えないのかもしれない。「悪い魔法使い」では言えないのかもしれない。

カインへの「いかないで」が、まさにそれだったのではないか。


同行を許されたオーエンを見たカインには、新たな感情が芽生えている。

「こういう顔を見ていると、こいつを幸せにしてやりたいと思う」

まったくもって同じ気持ちであり、なんならあなたも幸せにしたい。
これが精霊の気分か。

オーエンの中に埋葬された、「傷人格オーエン」をカインが解放するのだとしたら、どちらの人格もまるごと、幸せにしてあげて欲しいと思う。

オーエンが「自分」を取り戻した上で、カインと対峙することができれば、
きっとそれを見つめるカインも、救われるだろうと思うのである。

ところで、「いい子にしてたら騎士様が迎えに来てくれる」とオーエンに告げたのは、誰なのだろう。これはいまだに明かされない謎ではあるが…
私は2部9章を読了して、オーエン自身が言い聞かせたことばなのではないかと思い始めている。
傷つきやすい己を守るために、オーエンは敢えて「自分」を閉じ込め、置き去りにたのではないか。

たしかに「傷人格」は厄災の傷によって、ふたたびオーエンの表面に出てきてしまったのだろう。ただ、原因はそれだけではないように思う。
騎士様―カインとの出会いが、花びらのように埋めたはずの剥き身のオーエンを、呼び覚ましたのではないだろうか。

こうなってくると因縁ではなく…もう運命ではなかろうか。



…ということで、久しぶりにカインとオーエンについて、かなり踏み込んで考えてみた。
我ながら突飛なことを書いてしまった自覚はあるのだが、そう思えてしまったのだから仕方ない。たぶん私の願望だ

2部9章に至り、カインは「オーエンを置いて行かないと決めた心を裏切らない」という強い思いを抱くことになった。
明言されていないが、これは「約束」だといっていいだろう。
この「約束」を反故にすれば、カインは魔法を失い、石になるかもしれない。

目玉という肉体でつながり、さらには約束で結ばれたカインとオーエン。
因縁は深まり、「絆」になってきていると信じたいが…どうなることか、まだまだ安心はできそうにない。ふたりとも、どうか幸せになってもらいたいものである。

来月には周年イベストも公開されることだろう。
またしんどい予感しかしないが、楽しみに待ちたい。

長文にお付き合いいただきありがとうございました!

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