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【華Doll*考察】 Loulou*di―蝶が見る夢(~「Pensée」ネタバレ)

Loulou*diのアルバム「INCOMPLICA:IT〜Pensée〜」が発売された。

thinking reedバージョンのMVが公開される前だが、まずは楽曲・ドラマパート・CMを手掛かりに、考えたことをまとめていこうと思う。
(2/11MV解禁→追記しました)

以下、楽曲・ドラマパート・MV・パンフレットなど、すべてのコンテンツのネタバレを含む。そして、「華Doll*」関連の情報すべてを網羅していないうえでの、考察という名の妄想、二次創作であることにご注意いただきたい。ご不快に思う方はこの時点でUターンをお願いしたい。

基本的な考察方針は、既存の2記事を参考にしていただきたい。

画像はほとんど出さないつもりだが、すべて公式HP(https://hana-doll.com/)・公式Twitter(@Amagiri_Prod)・公式チャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCxAHYHVXlnenUHmGzt4HOTA)からの引用である。


1.プリザーブド化と、「枯れる」こと―忘れられる「夢」


「ES」「Pensée」で、世界観に直結する新しい用語が出てきている。今一度確認しておこう。

華Dollは、その身に「」を植えられ、その「」と共に能力を開花させる。その際、才能などだけでなく、肉体的な疾患や欠損も「修復される」。

個人的には、「Idéal」でルイが言っていた

「花は人間の感情を食って開花する」

という説がもっとも正解に近いと考えている。


【その他用語】
◆M473→凌駕が勤務していた製薬会社が開発中の薬。開花を促進させる。
◆MIZU→花とDOLLの暴走らしき現象を鎮静化する
◆プリザーブド化→おそらく「花」が宿主の感情を吸い尽くしてしまった現象かと。
     ⇔「枯れる」→雨宮が陥ったとされる現象。「勝手に絶望して」「死んだ」

特に重要だと感じたのは「プリザーブド」という現象である。
これまで、開花後のアイドルについては、「絶頂期前後に不安定になる」という情報はあったが、「末路がどうなるか」は示されていなかった。

プリザーブドとは、あきらかに「プリザーブドフラワー」を想定した言葉だろう。広辞苑によれば「水分を加工液で置き換えて乾燥し、保存できるようにした花」とのこと。

やはり「水」なのだ。

ひとつ前の記事でも書いたが、花が養分にする「水」とは、おそらく宿主の「感情」だ。
それが枯渇したり暴走したり、花と乖離するような現象が起こる時に使うのが「MIZU」。

つまり「MIZU」という薬は、「感情」の加工液だということになる。

医療棟がMIZUの投与の頻度を上げたくないのは、加工液が増えれば増えるほど、宿主は「本来の自分」を失うからではないかと思うのだ。そして最終的には、「感情」がすべて置き換わった「プリザーブド」になる…と。

これを「枯れる」と同義だという考え方もできるだろう。

しかし私は、「プリザーブド」と「枯れる(=死ぬ)」は別々の概念ではないかと思う。

プリザーブドは確かにもう「成長する」ことはないかもしれないが、「長らく枯れない」。半永久的に保存することだって可能だろう。つまり「枯れない花」だ。死んでいない…ともいえる。

あくまでもこれは妄想なのだが、雨宮は「MIZU」の投与では間に合わないほど、「絶望」により感情を枯渇させたのではないだろうか。だから「枯れた(=死んだ)」

一方で、チヒロもまた「死んだ」とされている。
眞紘の夢によれば、遺体は検死に出されてしまい、眞紘は最後の姿を見ていないようだ。
チヒロは、「枯れた」のではなく、「プリザーブド」化したのではないだろうか。その「花」はまだどこかにある…?(今後の情報を待ちたい)

そう考えれば、亜蝶がプリザーブド化を心配されていることも、納得がいく。なぜなら亜蝶はチヒロを目指しているのだから。プリザーブド化のリスクは、他アイドルより高いはずだ。

そしておそらくM473を使って絶頂期を速めてしまったと思われるもまた、プリザーブド化がちらついてきている。

※『Immortal Tale』MV視聴後追記
MVでは、「透明な液体が入った注射器」「赤い液体が入ったガラスが割れる」「黒い液体が飛び散る、墓につく」という3種類の液体描写があった。(そのほか、湖らしきものも。これは『Final Direction』と同じだ)

赤い液体はDoll達の血液=いのちそのもの、だと考えていいだろう。
そこに透明な液体=「MIZU」を注入する。
その末路として、「列車が新幹線並みに加速」し、「駒の回転が尽き」て、「黒い液体なり、それにまみれて命は枯れる」ということなのではないか。

気になるのは、赤い液体のまま割れるガラス、そして最後の「沸騰して蒸発水」である。
私としては、これもDollの末路のひとつなのかなと思った。MIZU注入前に絶望して死んだ雨宮、そして黒い液体にまみれる前に「蒸発」したチトセ…かと。
プリザーブド化に適しているのは、おそらく「蒸発」だ。なぜなら、感情(=水)だけが抜けて、形は残るのだから。だからラストカットは、まるで意識だけが閉ざされるような演出になっているだと思う。

亜蝶はそのプリザーブド化を図らずも目指しているために、MIZUの投与は慎重にならなくてはならないのかもしれない。



唐突なようだが、プリザーブド化を考える上でポイントとなってくるのは「夢」だろうと思う。

思い出されるのは「胡蝶の夢」である。現実と夢、どちらがどちらかわからなくなる…(「FinalDirection」にも同様の歌詞がある)
まさに華Dollと「花」はそんな関係にあるのではないか。

はじめのほうこそ、Dollが優勢だが、徐々に「花」に浸食されていく。  
 ※『Immortal Tale』のMVでも、亜蝶のてのひらで花が咲き、枯れていく。花の中の墓、そしてその血の跡に反して咲き乱れる花…がそれを表象しているようである。

それを踏まえると、やはり鬨は本来の自分が浸食され、不安定になってきていると言わざるを得ない。その延長にあるのが、記憶の混濁だろう。

つまり、「夢」として見るものこそ、本来の自分、なのではないかと思うのだ。だからこそ目覚めると忘れてしまうのだろう(薫、眞紘、ルイ、鬨?)。

Anthos*についても少し考えよう。
最も危ないのはだ。
彼は開花の時点でぼんやり気味だった。「ES」では記憶が混濁している様子も見えた。「水」の枯渇がかなり進んでいるのではないか。(体の修復にコストがかかるから、枯渇が早い?)

以下、この「MIZU」「プリザーブド」の捉え方で、「Pensée」までのドラマパートを、「」というキーワードで考えていきたい。


1.鬨と亜蝶―嘆きと感謝、かつての夢


鬨の変化が顕著なドラマパートだった。

「Idéal」の最終トラックでルイが投与したのがなんだったのかは定かではないが(どうもMIZUではない気がする)、記憶の混濁、ちょっとした退行現象、感情の抑制が効かない…などが見て取れた。
その結果として、彼の生い立ちが亜蝶に語られ、バックボーンがよくわかるようになった。

亜蝶自身も言っているように、この二人は、とてもよく似ている。

【亜蝶】
政治家の父により天霧に「売られた」
父(金?)に対する憎悪⇔天霧への恩義、チヒロへの強烈な憧れ(努力)

【鬨】
養育先の親により、名誉を得るための「手段」として使われる。華Doll採用にも恐らく金を積んだ。
養父母、施設の人々(偽善?)への憎悪⇔亜蝶への強烈な憧れと恩義

沸点の異なるふたつの感情を豊かに持っているからこそ、ふたりの「花」は鮮やかに開花したのではなかろうか。

花にはポジティブな感情だけが影響するようなことが言われていたが、光は影がなければ存在できないように、ポジティブもまた、ネガティブがなければだめだろう。

亜蝶が見る夢は、絶頂期において「Loulou*di」の活動休止をファンに宣言したときのこと

鬨の見る夢は明確に示されないが、眠りながら「僕はひとりぼっち…」とつぶやいていることから考えて、陽汰と過ごした孤児院、そしてそれを退所する前後のことだと考えていいだろう。
(鬨の場合は、FinalDirection MVからもそんな雰囲気がある)

どちらも「夢やぶれた」瞬間を思い出していることになる。
言い換えれば、そのときにやぶれた夢こそが、彼らの核だということだろう。

亜蝶はチヒロになりたかった(超えたかった)
鬨は同情や打算ではなく、支え合う誰かや居場所がほしかった

叶えられなかった夢があるから、嘆き、憎悪する。まだ、諦められない。

まさに感情の源泉ともなるべき「夢」だが、それすらも忘れてしまうのが、「花」による浸食だろう。

強調しておきたいのは、亜蝶は「夢」を忘れていないということだ。
それだけ彼の中の感情が強烈だということなのだろう。絶頂期を過ぎてもなんとか自我を維持できるのは、彼の感情の強さに他ならないように思う。

その強い感情に惹かれているのが…ルイだ。

2.ルイ―美しい「夢」

「Pensée」のドラマパート後半の重大事は、亜蝶とルイの過去が明らかになったことである。
前回考察していた、「ルイは感情を喪失している」という路線は合っていたようでよかった)

前回に引き続き、ルイという人物がなんなのか…というところを考えていきたい。とにかく難解だ…

今回強調されていたのが、
「亜蝶から何らかの感情を向けられたい」
という、ルイの願望であったように思う。

憧れを向けられるチヒロ、恩義や尊敬を向けられる天霧社長、憎しみを向けられる雨宮と眞紘

全員が羨ましいというのだ。

前回の時点で私は、「何かに向けて感情を爆発させる亜蝶」を見ていれば、ルイは満たされるのだと思っていたのだが、どうやらもう一歩踏み込んだ欲望もあるようだ。

いうなれば、亜蝶が自分に向けてくれる感情によって、ルイ自身の形がわかる、というところなのだろう。

だからルイはいつも「心配してくれるのか」「褒めてくれるのか」「縋るのか」と、亜蝶の感情を確認するのだ。いつもそれを亜蝶が否定するから、はっきりした感情を向けられている他者を羨むのだろう。

さて、その感情あふれる亜蝶は、ルイにとって「美しいもの」だという。
美術館や博物館が好きなのも、その美しいものから「感情」を感じられるかららしい(パンフレットVol.10)
そして、ルイが見ている「夢」というのは、覚えていないながらも「美しいもの」らしい。

彼には感情がないのだから、「花」の感情浸食により夢を忘れたのではないだろう。そもそも彼の本質というのを彼自身がわかっていないから、「夢」もおぼろげなのだ。

ただ「美しい」ということだけはわかっているのだから、いかに彼が「感情ある美しいもの」を強烈に欲しているかはわかる。

その根源的な出来事が今回明らかになった。亜蝶との出会いのシーンだ。これはもうぜひドラマパートを聴いていただきたいので、詳細はここに書かない。

あのとき、あの場面で、ルイだけが「亜蝶から感情を向けられていない」存在だった。
天霧のように、チヒロのように、そして亜蝶の父のように…亜蝶の激情を向けられたいという欲が生まれた瞬間を聴いたというのは、リスナーとしても大変な衝撃であった。

もっと踏み込んでいえば、ルイが焦がれる「夢」は、亜蝶そのもの…ということにもなろう…
亜蝶はチヒロに夢と光を見て、その亜蝶にルイは夢と光を見る…究極の一方通行ではないか。

ところで、前回私は、最終的にルイは亜蝶の魂と同化して、彼の手足として生きたいのでは?と述べたのだが、別の可能性も考えたい。

恐らく、亜蝶がプリザーブドになるとき、彼は初めてルイに激情をぶつけるのだと思う。
それが感謝なのか、懺悔なのか、懇願なのか…まだわからない。
それがなんであれ、ルイの願望は叶い、彼は自分の形を知るのではないかと思う。

そうなると、ルイがこれまで保ってきた何かが一気に瓦解するような気がする。それこそが…ルイの真の開花かもしれない。

※『Immortal Tale』MV視聴後追記
MV終盤で、蛇とリンゴが出てくる。ほぼ間違いなく「アダムとイブ」を示唆していると思うのだが、この「禁断の果実(=知るという罪)」は、主にルイに当てはまることなのではないかと思った。
つまり亜蝶を通して、ルイが感情を知ること…それがルイが何らかの真実を知り覚醒するトリガーになっていることの表れではないかと、私は思った。


いずれにしてもルイは、亜蝶の美しさをずっと見て居たい一方で、最も美しいであろう最後の瞬間も見たいという矛盾に戸惑っているようだ。

彼はその感覚を表す言葉を持たないようだが、、、結局はどちらもルイの「愛」だとしか言いようがない
(文字にすると少し陳腐になってしまうだろうか…)
個人的には、「美しい」ものを求める、とても純粋な「乞い」だなと感じた。

ルイが自身の中に芽生えていた「愛」を知るのは、亜蝶の最期のときなのだろうか…それはちょっと…かなりつらい。


4.ふたりの「身代わり」―眞紘と亜蝶


さて、今回ドラマパートに凌駕がゲスト出演したことで、亜蝶と眞紘の対立構造がわかりやすくなった。

ふたりとも「チヒロが叶えられなかった夢を叶える」という願望…というか夢を持っている。(本質はすこしズレているが)

【眞紘】
チヒロに似ている
チヒロと同じ血を持つ
チヒロの才能は継承できない(天霧談)

【亜蝶】
チヒロには似ていない
チヒロの血は持っていない
チヒロの才能を継承できる(天霧談)(努力)

性質の異なる「チヒロの身代わり」がふたり…というところだ。

本人以外の部分で、今後二人の違いになってきそうなところを上げておこう。
ルイと凌駕だ。

凌駕は「ES」でも、眞紘に「チヒロの話をもっとしよう」と持ち掛けていたし、似た面差しの眞紘の中に、完全にチヒロを見ている。父には思われていないのに、凌駕に「身代わり」と思われている

一方でルイは、「チヒロ」にはまったく興味がないと言ってもいいだろう。天霧がチヒロの代わりに「完璧」を亜蝶に託そうとしている傍らで、ルイは「チヒロ」の埒外にいる

どうもこのあたりが、亜蝶と眞紘の溝を広げていきそうな気がしている。


これから絶頂期を迎える眞紘は、ますますチヒロに似てくるだろう
衰え行く亜蝶はそれを見つめて、さらに憎悪をつのらせ、チヒロになれない自分を呪うはずだ。それはプリザーブド化を悪化させそうだ。

そうなったとき、チヒロの埒外からのルイの言葉が亜蝶にどう響くか…もしや、それにより、亜蝶は「自分のかたち」を取り戻すかもしれない…

それこそが、亜蝶の、いや、Loulou*diの未来を左右する気がするのである。




またずいぶんと少ない材料から、無謀な考察を試みてしまった。考察とはよべない、妄想である。申し訳ない。

その他に気になったことをいくつかあげておく。
・ルイを「まともではない」と診断した医師は灯堂なのか?
・亜蝶は鬨をメンバーとして守るために、陽汰に何かを仕掛けるつもりか?

このあたりが謎として残った。

もしもルイが、薫と同様に「クランケ」として灯堂が天霧に差し出したのだとすれば、「花」により肉体だけでなく、メンタル部分も補完する実験の可能性も見えてくるのではないか。
となると、ルイこそが真の被検体で、亜蝶はその開花を促すために利用された、ということに…(我ながらひどい妄想だが、MVのアダムとイヴイメージがかなり気になっている…)

ひとつわかったと思えば、またひとつわからなくなる…さすが知的興奮型コンテンツである。


最後に曲のことも少し述べておきたい。
どちらも大変美しく激しい難曲で、音程の高低差がどんどん広がっている気がする。まるで亜蝶の情緒の乱れに呼応するようだ。
その一方で、特に「Intro」については、まさに蝶の夢とでもいうような、美しくはかない音が紡がれる。

強さの中に見える儚さ、揺れ、不安定さ、
夢に破れ、夢に焦がれ、夢に囚われる三人…

それがLoulou*diの魅力なのだろうなと、改めて感じられた楽曲であった。


次のアルバムがいつリリースされるかわからないが、ひとまずはこの生殺し状態に浸りたいと思う。

長文にお付き合いいただきありがとうございました!

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