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TENGAを退職しました。

4年間勤めた株式会社TENGAを、2019年4月18日をもって退職いたしました。

思い返せば、「マスターベーションしたいという欲求は、当たり前の欲求ですよ」という、極めて単純かつ当たり前のことを、4年間フリー素材の如く素顔をさらけ出しながら何度も×∞伝え続ける仕事でした。

伝える手法は様々で、時にキャンペーンだったり、広告だったり、イベントだったり、SNSだったり、取材だったり。
「会社のビジョンを世の中に浸透にさせる」ための手法は無数にあって、4年間ずっとPR畑に身を置き、その奥深さと楽しさを学びながら歩んできた4年間でした。

BARに女性向けアイテムirohaをプレゼントし、一定期間飾ってもらうキャンペーンを実施してみたら、予想以上に申し込みが来ず、歌舞伎町や六本木を徘徊しながら人づてに飲食店を紹介してもらい50店舗集めたこともあれば、地方出張し、キャリーバックを引きずりながらメディアさんに飛び込みまくったこともあります。汗水たらしまくりながら、会社のビジョンを広めることに、とにかく必死に取り組んできました。
何よりもTENGAのビションが好きだったし、そのビジョンを広めることによって自分自身の「実現したい社会」に近づけるような気がして、無我夢中でした。

退職した今でも、TENGAは大好きな会社です。

「なんで辞めるんですか?」という質問を多く頂くので、こちらでまとめさせていただきます。

入社当初の「TENGA、irohaを新聞に出す」という目標が叶った。

今でも「女性がマスターベーションをしている」と事実だけで、特殊な人扱いされます。
隠すべきものという考え方自体を否定しませんが、私にとっては「事実を事実のままに伝えている」だけ。その事実に対して、「ヤレる女性」と勘違いされることがよくありました。
そんな世の中に対して疑問をもっていた私に、「性を表通りに」というビジョンを掲げるTENGAは弓矢のごとく胸に突き刺さり、その結果TENGAに入社しました。

しかしながら入社当初(今でもですが)、そういったアイテム自体を取り上げる事自体がタブー扱い。
4年前のある日、とある新聞社様から「御社の商品を取り上げたい」という電話を受け取りました。
商品写真を送って掲載を楽しみにしていた翌日、「すみません。上司からNGが出て載せることができませんでした。」と担当者から伝えられました。
「わかりました。また機会があればよろしくお願いします。」と挨拶をして電話を置いた後、頭の中が「?」で埋もれます。

(私達の作っている製品は、世の中にとって隠さなければならないものなのか?)
(人間の欲求を手助けするサポートアイテムを表通りにすることは、いけないことなのか?)

そんな些細な記者さんとのやりとりの中で、「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」という漠然としたビジョン実現に向けて、広報として具体的な目標が生まれました。

「TENGA、irohaを新聞に出す。」

そう決めて、社長にも宣言してから約3年経ち、私達のビジョンに共感してくれた記者様達のお陰で、ちょっとずつですがそれが叶うようになってきました。

iroha POP UP STOREで接客をしていた時に、私が担当した記事をみてくださった方がいて、「今まで性を楽しんじゃいけないと思っていたんですけど、記事を読んで、楽しんでもいいのかな?と思いショップにきました。」と言っていただきました。

取り上げられた記事が、多くの人に届き、世間の考え方が変わり、社会の固定概念が変わっていく。

メディアをキッカケに、iroha POP UP STOREに人が押し寄せ、楽しそうに商品を選ぶ方々を前に、私の中で入社当初の目標は達成できたのかもしれないと思いました。

会社に居続けることは、自分にとっても会社にとっても良くないと感じた。

4年前の自分が決めた目標と、今入社する方が掲げるであろう目標は大きく異なります。きっと新しい方は、私よりも壮大な目標を前に奮闘していくのが目に浮かびます。
そんな中、今なんとなく満足した自分が、会社に居続けることに対して会社としてのメリットを感じませんでした。
退職話を社内で進行していく中、「やっとスタート地点に立ったばかり。これからが大切なんだよ。」という話を聞きました。
私も頭で考えればそう思うものの、どうしても気持ちを切り替え、「さらなる大きな目標を自分でかかげ、今までと同じ活力で今後も走り続けられるか?」と自分に問いてみたら、その答えは「NO」でした。

シンプルに言えば、この4年間で「自分としては、やりきった」のかもしれません。
全力でやりきった後に、さらにやり続けるイメージが持てませんでした。
いや、やれと言われたらできるかもしれませんが、そのやる気は1年前に比べて生産性が落ちると思いました。

TENGAが新たなスタート地点に立った今、これから先の目指す世界を実現していくのは、きっと今入社する新しい人がやった方が良いと思っています。

「TENGAの広報」という仕事自体、特殊な仕事でなくなる世の中を目指す。

イベントやTwitter等で、「工藤さんの活動、応援しています。」とお客様から言っていただくことが、私にとって4年間の仕事の活力でした。

しかしながら、ふと改めて考えてみると私は「マスターベーションしたいという欲求は、当たり前の欲求ですよ」という、極めて単純かつ当たり前なことしか言っていません。
いわば、「食欲は悪いことじゃないですよ」「眠ったっていいんですよ」という、人間の欲求を認めてあげましょうということ。

少しずつ共感が増えてきたこの先は、「特別な事をやっていますね。」と言われない世の中だなと思っています。

本来は応援なんてする必要のないくらい、「ふつうのこと」。
自分の身体に興味を持って気持ちよくなることは、決して変なことじゃない。
そんな人や、発信する人を「特殊」だと思う世の中を変え、性を楽しむ人を肯定できるような世の中になってほしいと思っています。それも、「多様性を認める」ということではないのでしょうか。

「私も性を楽しんでもいいのかな?」と思っていただきたいという想いから、私は一般会社員からTENGAの広報という職業に就きました。
そして今回それを外れ、セクシャル系じゃない仕事にも挑戦していくことにより、TENGAという会社自体が、特殊な組織でないということを改めて思っていただければ、それが本望です。

4年ちょっとの間ですが、関係者の方、取引先の皆様、TENGAファンの方、今まで本当にお世話になりました。

引き続きどうぞTENGAとirohaをよろしくお願いいたします。


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