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スライドショー

家の中で写真はわりと身近だった。白い壁にスライドを投影して、家族とスライドショーをしていたことがある。それがすごく思い出深い。熱で埃が焦げる匂いは、私にとって良い匂いである。祖父の部屋には、父が子供の頃のアルバムがあって、私はたまに、こっそりみていた。叔母さんが写っていたり、祖母の若い頃の写真もあったり。ペスという飼い犬と、子供の頃の父が一緒に写っている写真がお気に入りである。ペスがかわいいから。雑種で、大型犬で、ベロを出していてかわいい。祖父の写真で、岩場にスリッパで格好つけている写真があったが、あれはホテルからそのまま出てきたんだろう。父が母を撮った、私が生まれる前の写真もあった。その時のカメラとレンズをお下がりでもらって、私はまだ使っている。ハレってしまうのが良い。

浅草橋で写真の展示した時、「小さい頃、好きだったものを思い出しました。」と、芳名帳に書き残してくれた人がいた。見知らぬ人だった。私はどんなに時が過ぎても、この言葉を忘れないと思う。私のことを知らないのに、これまで私が見てきたもの全て、一緒に見てきたように感じた。

毎日何か撮っているけれど、それは幼い頃見たものをいつまでも追っているのかもしれない。たった一人で追い続けて、隣に誰も居なくなっても、私はいつまでも追い続けてしまうのかもしれない。しかし、一人で何かを続けている奴がこの世には腐るほどいる。ある日その人と出会えたとき、共感することが出来るかもしれない。例え会うことが無くても、写真を残せばその可能性は永遠になくなることはないだろう。

スライドショーが好きだった私は、見終えると、また見ようねと家族に言っていた。私はrecord of tokyoと銘打って東京の記録をいろいろ残している。この記録は東京に住んでいる全ての人との思い出で、私と一緒にスライドショーを見ているつもりで記録している。

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