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リフレッシュ

家でエッセイを書き終え、もう一度読み直す前に頭をリフレッシュしようと街へと出かけた。東京は梅雨が始まった。

大きな本屋の検索機で森茉莉さんの本を探す。新潮文庫の『私の美の世界』が良さそうだったのでそれ一冊だけ買い、どこかで読もうと地下にある喫茶店に行く。禁煙席が満席とのことだったので、喫煙席でも良いからと伝え入店。どうしても家ではない場所で読みたかった。後から入りたい喫煙者には悪いことしたかな。でも雨の中、他に店を探すのも嫌だし。喫茶店でミートソーススパゲッティのランチセットを頼む。待っている間に読んだ『花市場』が好きな話。

隣はサラリーマンの男性2人組、お小遣いは月々3万円と言っていた。私なら10日持たずに使い果たすだろう。なぜ自分で働いた金を好きに使わず誰かに決められた制限で彼らは生きているのだろう。他人と共同の生活を送ったことのない私にはまるで理解できなかった。狂ってるのは私の方だろう。モソモソとミートソーススパゲッティを食べながらそう思っていた。

食後のアイスレモンティーを待っている時、iPhoneから速報、田辺聖子さん逝去。悲しい。なんだかつらい。つい最近、『苺をつぶしながら』を読んだばかり。ヒロイン乃里子の生き方がカッコいい。田辺聖子さんの本を読むと、とても前向きに物事を考えられるようになったし、私という人間を私が肯定して良いということを教えてもらった。彼女の残した作品をこれからもっと読まなければ、と思いながら、今は森茉莉さんを読んでいるけれど。

今の時代に合ってないかもしれないが、私は彼女たちの言葉から醸し出される女性らしさが好き。女性らしい、男性らしい、もうこれからは無くなっていくと思う。でも私は彼女たちの考えかたや生き方に感銘を受け、憧れている。もしかしたら消えてしまうかもしれない、そんな風に私は予感し、ひとり地下の喫茶店の隅で古くから伝わる秘密の呪文のような文章を唱え、いつかこの呪文を使う日が来るのでは、と覚えておくことにした。

黒く可愛げのない使い込まれた鞄の中に、なるべく女性らしさを持ち歩いている。読んだり手元に置いておくだけで、私の自信となるお守りみたいなもの。

レモンティーを飲み干し、お守りをサッと仕舞って、リフレッシュは完了した。

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