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ささくれ

ささくれが出来ると、親不孝ものだという言い伝えがある。冬は乾燥して、人差し指にも中指にも、気づけば薬指も、ささくれだらけである。あまりにもひどくて、オロナインを塗って絆創膏を貼った。こないだ二十歳の女の子の爪が割れてたくらいだから、三十歳の私の指にささくれが出来るのは当たり前なような気がする。気になる指を触ったり、皮膚と爪の境目を見つめたりして、それだけで時間は過ぎていく。こんな時間を過ごしているとき、私はあまりにも一人きりの時間が多いように感じるのだ。でも、誰かといるよりも自分の長い指を眺めていたい気分の時もある。友人のセリフ「一人暮らしって案外寂しくない」に大きく頷いてしまった。むしろ恋人がいる時のほうが寂しいと思う時間が私は長い。それぞれ自分の時間を快適に過ごせるパートナー、それって別にパートナーである必要ないな、だから人間関係を何かでカテゴライズしようとするからダメなんだ。人との関係は距離だけだな。などと、ささくれを眺めながら考えているのであった。


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