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いつもだいたい同じ時間に

いつもだいたい同じ時間に、マンションの前で座り込んでタバコを吸っている男の人がいる。きっと家では吸えなくて、バルコニーでも禁煙なのだろう。それとも、好きで道路の前に座っているのかしら。目の前は車道、10階建てくらいのマンション、駐車してる車、植木が一本あるだけ。彼はいつも何を見ているのだろう。そう思いながら通り過ぎる。

いつもだいたい同じ時間に、不動産屋の猫は、店の前の玄関マットの上にいる。私と目が合っても決して動かない。4本の白ソックスを履いた足を投げ出し、くつろいでいる。私がしゃがんで撫でても文句を言わなそうな風格であるが、それがまた生意気に思えて、横目でジッと見るだけで通り過ぎる。

いつもだいたい同じ時間に、お花屋さんの前で立ち話をしている主婦と思しき二人がいる。ジムの帰りなのか、ジャージのような格好で、頬に手を当てながら、大きくうなずきながらずっと話している。子どもも旦那もいない二人だけの世界は、夜の街とよく合っている。彼女たちは、私が通るのなんて気にも留めず、話は止まらないようだった。

いつもだいたい同じ時間に、繰り返されるそれを見ている。この繰り返しが、永久に続いていくような気がする。

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