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探検

ボートに乗ってみんなで海を探検していたら、洞窟を発見した。私だけが洞窟の中が気になって、みんなが、おーいもう帰るよーと言ってもそれを聞かずに、あとでひとりで帰るわと言って、そうかそうかとみんな先に帰って、私は暗闇の中、洞窟をぐんぐん進んでいった。実は先に入っていた人がいて、私に親切にこっちやあっちやそっちに連れて行って洞窟を案内してくれた。化石や宝石が出てくるところ、地下水の湧き出るところ、夜になったら洞窟から出て月を見上げること、見たこともない世界が沢山あった。洞窟の奥には、陽の当たる場所があって、スポットライトのようにそこに咲く花に当たっていた。ああ綺麗、忘れられない景色ってこれのこと。この洞窟のいちばん奥のここは、もう一つの出入り口になっていて、私はここから上がって帰りたいと思った。側には誰もいなくて、洞窟のみんなは相変わらず洞窟の中で美しさを探していた。私は、洞窟に飽きてしまった。太陽の下に帰りたくなった。そっと、洞窟のいちばん奥から一人登って這い出た。這い出た場所から洞窟の底を覗くと、随分深くて、もう一度行きたい気持ちはあるけれど、面倒くさくなった。

さて、あたり一面緑が広がっていて、先に帰ったみんながそこに居た。洞窟楽しかった?と聞くので、楽しかったよ〜と言った。そうかそうか、と私の話を聞きながら一緒に帰った。でも、どんなに言葉を尽くしても、洞窟のいちばん奥で見た、陽の当たる花の美しさを語ることは出来ないと思った。話してみたけれど、なんか違った。どうも伝わらない。けれど今も変わらず、美しく咲いているのかと思うと不思議だった。洞窟の探検は、忘れることはないだろう。

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