見出し画像

ゆっくり溶けていく

生まれも育ちも東京の下町、三代続く江戸っ子の血が流れているからか、生き急いでるところがある。階段は一段跳ばして歩く、舌を火傷しても料理は熱いうちに食べる、他人の行動や言動を先読みしすぎて一人で暴走するなど、、、もはや東京は関係なく私という性格の話だけれど、とにかくせっかち。

仕事のない平日の朝、たまに喫茶店へ行くことがある。私は、喫茶店へ行っても蕎麦のようにコーヒーを飲んでしまうので、ものの10分くらいですることがなくなる。よく喫茶店で作業をしている人を見ると感心するとともに憧れていた。

しかしそれが最近少し変わった。まず注文は早いが、コーヒーが来るまで本を読むようになった。集中して読んでいるといつの間にか目の前にコーヒーが提供されている。しばらくコーヒーをほったらかしていると、ホットサンドがやって来る。一度本を閉じ、ホットサンドを食べながら思考する。あの言葉は、、、どうしてあんなこと、、、あれ意味わかんない、、、など、読書感想文を心の中で唱え始める。ムシャムシャと食べながら。次第に、何か書きたくなってくる。はじめは読書感想文を書きたくなるのだが、なぜかそこから全く別のことが思いついて、本とは全く関係のないことをつらつら。ホットサンド片手だから油がノートについたりするが、そういうことはヘッチャラなのである。江戸っ子だから。コーヒーをぐびっと飲んで、また熱心に何かを書き始める。

とにかく早く作りたい、とにかく早く次に行きたい、早く、早く、その気持ちを持つことは自分でも誇りに思う。けれど、その気持ちは燃料でもあるんだから、今までよりももっと丁寧に、その燃料を使いたいと考えている。ゆっくり、ゆっくり、落ち着いて。あ、フェスティナ・レンテと同じ空気だなここ。

BGMは懐かしい聞いたことのあるようなクラシック。頭上の照明はブラウンシュガーの角砂糖だった。コーヒーカップの底から浮かんでる角砂糖を眺めてる気分。外の強い光を遮ったブラインドと、オレンジの柔らかい角砂糖の光が、私をゆっくり溶かしていく。

よろしければサポートをお願い致します。マガジン「一服」の資金に充てます。