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メイプルシステムズの快進撃とその裏側で起こっていたビジョンとのズレ

プロローグ

 中途エンジニアの採用57人。未経験エンジニアの採用11人。合計で68人のエンジニア採用を予算200万で成し遂げた。

 その結果、エンジニアへの高還元を維持しながら、規模拡大を果たした昨年であったのだが、実はその裏側ではビジョンに対する意識の統一が図れなくなっていた。

今日はその経緯と共に、これからのメイプルの話をしようと思う。

 まずエンジニア採用に対する、おっしー(鴛海敬子:メイプル人事部長)の甚大なる貢献には眼を見張るものがあった。誰よりも会社のことを考えエンジニアのためになるのなら23時からの面接や、土日のセミナー開催、採用面接、こんなに働く人事がいるだろうか。

 その甲斐もあって会社の知名度は上がり、有難いことに声を掛ける採用から、コンタクトを貰える採用に徐々に変わってきていた。通常であれば、とても良いことであり前向きに捉えて問題無いと思う。ただボクは一抹の不安を拭い切れずにいた。

知名度と社長としての振る舞い

 離職率100%の取り組みは、登壇イベントや、テレビ新聞、授賞式など様々なところで広がりをみせ、Twitterでも拡散され炎上し、アンチや共感者を巻き込みつつ更にメイプルの名前は広まっていく。

 Twitterでは「何か良いこと言わないといけない空気」「炎上するようなことは言ってはいけない空気」が徐々に大きくなり、社内では誰かに話しかけるときはハラスメントに気を付けるように言われてきた。どことなくボクの知っているメイプルとしての色が失われていく感じがしていた。

 入社してくるエンジニアにとってボクは有名人になっていた。でもボクはずっと何も変わらない。いつも厳しいし、いつも違うことを考えているし、いつも機嫌が悪いように見える(笑)TwitterやYouTubeでのボクとは全然違うのだろう。それはそうだ。あのテンションでいる方が無理だろう。(おっしーは年中あのテンションだけど)

 そもそもボクは社長扱いされるのが嫌いだった。みんなと寝泊まりし、朝までコーディングをし、受託案件をこなして報酬をみんなで分け合う。ただ役職が付いているだけで、ただのエンジニアとして皆んなと何も変わらないのが好きだった。会社規模が大きくなれば変わらなければいけないのか?そこには今でも違和感しかない。


ボクの理想とする会社

 自分の食い扶持は自分で稼ぐ。100%エンジニアの会社だったときはこれが出来ていた。ところが広報や事務、カウンセリング担当など間接部門を増やしたことで違和感が大きくなってきたのは否めない。

 もちろん、そういう部門を増やす判断をしてきたボクの責任なのだが、せめて自立した人材を増やすべきだった。仕事を与えられるものとして待っている姿勢の人材はボクと決定的に合わなかった。自分から仕事を作り、こなし、改善していくような人材でなければダメだった。

 そしてそういう人へ育てていくことがボクには無理だった。ボクの育て方は精神論だからだ。ヤル気が無い奴は育たない。ヤル気の無い奴には教えたくもない。付いてくるなら付いて来れば良い。いちいち手を引っ張ることはしない。これでは育つはずもない(それくらいは分かってる笑)

 だからこそ、理想とするのは組織化しない組織。個人が自立して仕事を全うすることを目指している。そして管理の無い組織は高還元を維持できるのだ。


現状のメイプル

 現状は高還元を維持することは出来ている。しかしビジョンのズレを感じながらは難しいのではないかと感じている。どのようなズレがあるのかと言うと、「サークル活動」「メイプルバー」「社内報」「YouTube」などの費用対効果の見えにくい施作の数々に違和感が増してきていた。

 もちろん会社のことを知ってもらい、みんなが会社のことを好きになってくれるのは大歓迎だ。しかし、そうなるほどにボクは人が辞めていくときに辛くなっていく。だからこそ「離職率100%を目指す」会社でありたいと思っているわけだ。

 先ほどの4つの施作の目的は、みんなに離職して欲しくない気持ちからの活動とのことだ。ボクはそんなことをすればするほど、みんなの気持ちは離れるんじゃないか?でも今の若い子たちは違うのか?と葛藤しかなかった。

 ボクがSESで現場に出ながら常々思っていた。帰社日や社員旅行、社内イベントなど無駄でしかないと。そんなことで帰属意識なんて高まらないし、逆効果だと思っていたのだ。今のメイプルはそれをやっているのではないか?社員とも随分と歳が離れてしまった。最近の子たちはそれを求めているのか?正直良く分からなくなったのだ。

 でも、このまま会社を続けることは出来ない。違和感を抱えたまま責任を担っていけるほどお人好しではないのだ。バックオフィス部門が全員去って行く今でこそ大きく舵を戻す良い機会なのではと思ったのだ。


バックオフィス業務や資金調達、広報などは大丈夫なのか?

 5月、6月と回してみて感じたのは、今までのバックオフィス業務の杜撰さだった。

・給与処理の杜撰さ(とりあえず多めに払えば良いか)

 遅刻や早退の給与控除が出来ておらず、毎月10万円程度、年間で120万が不要に支払われていた。これでは真面目に勤務している人が損をする状態だった。

・社保計算の杜撰さ(指摘されたら申請しなおせば良いか)

 社保の設定にミスがあり、本来払うべき金額を納めていなかった。追加で請求される金額が1000万近くにのぼり、それを従業員に今更請求することは出来ない。これに関してはボクの監督不行き届きとして会社持ちで処理することにした。

・契約管理の杜撰さ(管理表のデータがグチャグチャ)

 次の現場を決めているにも関わらず、現在の現場に終了報告を入れておらず、退場3日前になって大揉めする。同じ契約のデータが20個近く存在していて管理表の体をなしていないなど、契約管理の杜撰さだった。責任のなすりつけあいで「自分は担当じゃない、報告していた」など責任の所在すら曖昧な状態だった。

・勤怠管理の杜撰さ(とりあえず報告あげさせれば良いか)

 従業員からあがってくる勤怠と、自分で入力させたfreeeへの勤怠の整合性チェックはどうもやられていなかったようだ。例えば現場の就業時間上、遅刻や早退になる時間など細かく見ないといけないのだが、そこを蔑ろにしていたため、先ほどの給与処理の杜撰さに繋がっていた。 

・資金調達は全部ボクがやっていた

 投資家との交渉や銀行借り入れなどは、全てボクが担当していたので引き続き問題はない。バックオフィスは印刷して製本するくらいで、法務的な部分は全て弁護士に丸投げしていたようだ。異常に高い弁護士費用を調べていて分かったことだった。これも信頼しきっていたことが問題だった。申し訳ないと思う。

・社外広報は問い合わせからだった

 社外広報に関しては新聞社やテレビ制作会社から、直接問い合わせがあって進んだ案件しかなく、広報は社内で電話対応していただけなので特に問題は無い。広報がいなくなることで社内向けの発信が無くなるのだが、綺麗なフォーマットにしなくても構わないし、ボクがちょこちょこ発信していこうかなと考えている。

バックオフィス業務は改善するのか?

 これが全部改善出来そうなのだ。むしろ今までがバックオフィスとして大丈夫ではなかった。何もチェック出来ておらず社員には大変申し訳ないことをした。人を信頼することとノーチェックなのは別問題なのだなと改めて自分の人を見る目が足りていなかったことを反省している。

 責任の所在を明確にし、信頼に足る人を見極めるためにも、ボクがもう一度指揮を取ることにした。このタイミングで気付けて良かった・・・と本当に思う。


おっしーとのお別れ

 おっしーは人事領域を担当してくれていたので、バックオフィスの事務領域は無関係だったのだが、おっしーも退職する。これは2人で相談して決めた。彼女がいれば採用も進むだろう。上手くいっているように見えるだろう。でも違和感はますます大きくなっていくだろう。苦渋の決断だったのだがお別れすることにした。

 というのも、彼女がいると採用が進みすぎて、バックオフィス業務を一度立て直しているのに「ちょ、待てよ!お前!」っていう状態になるよねと考えたのだ。

 ここまで色々とおかしくなっていたのは全てボクの責任なのだ。ボク自身が人を育てることが苦手なのだから、ちゃんとした人材を選別した上でバックオフィスは固めなければならなかった。誰にでも出来る作業だろうと高を括ってしまったのは大きな過ちだった。誰にでも出来る単純作業こそ、実は誰にでも出来ることではないと知れたのは、とても大きな学びとなった。

 ちなみにおっしーとは業務委託で契約しようと話している。営業協力など彼女の得意とするところで、これからも一緒にやっていけたら良いのかなと考えている。


そして再びビジョンを中心に据える

 離職を応援するという取り組みの真意は、エンジニアは新しいものに触れて学び成長する生き物。その成長に寄り添うカタチとして引き留めるのではなく、卒業を応援して繋がりをいつまでも残しておきたい。同じ時間をたまたまメイプルで過ごした仲間として。

 これがボクの目指す理想なのだ。SESという働き方は自社への帰属意識も育ちにくい特殊な働き方だと思う。だからこそ、付かず離れずの関係が良いと考えていた。帰社日やイベントなどは、会社としてはやっちゃダメなんじゃないか。仲の良い同年代で遊ぶ分には良いと思うが、会社は会社で別物として存在するほうが良いんじゃないかと思う。

 ボクらSESで働くエンジニアは現場至上主義。その現場で友達を作って起業する奴がいたって良い。その現場から勧誘されて転職したって良い。幾つもの現場を経験して、フリーで仕事が貰えるようになっても良い。

 会社の在り方の一つとして「お前ら、みんな好きにやって良いぞ」っていう会社があっても良いんじゃないかと思う。

 その代わり「会社に迷惑をかけるなら独立してからやれ」会社はみんなのものだもの。後輩がこれからも利用していくために、会社に迷惑をかけてしまうのは違うよね。ステップアップに使ってみんな巣立っていきなっせ。

 






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