VOL5　外野手　髙橋駿介（たかはし・しゅんすけ）　背番号27　新入団

高校通算のホームランは28本を数える。そのうちの1本は、高校3年時の西日本工大とのオープン戦で生まれたレフトスタンドへの1発。同大学の監督から「ホームランを打ってみろ」とハッパをかけられ、見事その期待に応えた。それが決め手になり、彼は同大学に進学しＮＰＢを本格的に目指すことになる。あの1本は単に28分の１のホームランではなく、これからも続くであろう彼の野球人生にとり大きな1本になるに違いない。
 
　北九州市小倉北区の出身。中学からボーイズリーグで硬式野球を始め、古豪の小倉工高に進んだが、当時はまだNPBに対する意欲はさして強くなく、選んだ高校も「野球ではなく卒業後の就職率がいいからでした」と笑う。しかし、入学してすぐに当時の野球部監督から指示を受けて取り組んだのがウェイトトレーニング。「それを本格的にやると打球が飛ぶようになり、バットのスイングスピードも速くなりました。楽しくなって、もっと野球がやりたい、NPBに行きたいと強く思うようになったんです」。

ウェイトトレーニングで打撃開花

そんな肉体強化の成果はすぐに表れ、通算ホームラン28本のうち15本が高校3年時に生まれた。早くから5番を任された彼は、高3の夏は特に好調で、専修大を経てヤクルトに入団した西舘降昂選手（筑陽学園高卒）に1試合2本の2塁打を浴びせた。高橋選手は西日本工大進学後も早くから主力として活躍。大きな故障もなく順調に成長し、3年時には九州地区大学野球連盟の選抜に入り、同年秋のリーグ戦ではベストナインに輝いた。ポジションは高校時代にマウンドに立つこともあったが、中学から大学と主に外野手を務めた。
　彼の強みは、パンチ力があり逆方向にも強い打球が飛ばせる広角のバッティングだ。決してバットをブンブン振り回すタイプではない。シュアさを兼ね備えたパワーヒッターと表現できるだろう。しかも50m6.0秒の俊足であり、「肩にも自信があります」と胸を張る。それを裏付けるように「遠投100ｍ以上、投げた球速140㌔超」を大学時に記録していて、まさに走攻守の3拍子揃ったプレーヤーとの評価がなされている。

河野選手に続くドラフト指名を

パイレーツでは即戦力として「打率3割3分、ホームラン20本を成し遂げ、打点を含め3冠王を目指します。盗塁もバンバン走りますよ」と高橋選手。似たタイプの野手として、昨年パイレーツに在籍しオリックスから育成ドラフト指名を受けた河野聡太内野手がおり、河野選手も西日本工大卒。そんな先輩選手を指し「（1つ上の）河野先輩よりも自分の方がパワフルですよ」と、悪戯っぽく微笑みながらアピールしたうえで、「僕は絶対に支配下登録でドラフト指名を実現します。自信があります」と言い切る。
パイレーツ入団後、チームメイトから付けられたニックネームは「宇宙人」。彼曰く「見た目も中身もそうなのかも」と言ってクスっと笑う。この飄々としてやや煙に巻くような性分が持ち味の1つだが、わき目もふらず懸命にウェイトトレーニングに汗をかくのが本当の姿。チーム優勝とドラフト指名という有言実行の今秋になるかどうか、大いに注目される。