Akinobu Oda

小田晶房:渋谷鶯谷町のなぎ食堂店主/東京と京都のリソグラフスタジオhand saw p…

Akinobu Oda

小田晶房:渋谷鶯谷町のなぎ食堂店主/東京と京都のリソグラフスタジオhand saw pressを運営/インディレーベルcompare notesを主宰/出版レーベルmapの構成員。執筆や編集も行っており、自著に「渋谷のすみっこでベジ食堂」「なぎ食堂のベジタブルレシピ」他、がある。

マガジン

  • D.I.Y.パブリッシングのススメ

    本作りの入り口(企画・編集・執筆)から出口(印刷・製本・販売)まで、そのすべての工程を工場や企業に頼らず、自分たちの手でやってしまおうという試みを京都に位置するhand saw press Kyotoの中で約4年続けています。 ここから旅立った数多くの書籍やzine、雑誌がいかにして生まれ、いかにして作られたか、そのすべてを機械の使い方やコツも含めてお伝えいたします。 これらの連載は、ある程度記述された時点で、フィジカルな冊子として編集→印刷→製本され、同時進行で販売していく予定です。それゆえに、一応それぞれのページに関しては、有料(100円)のものも含ませていただくかもしれません。 もしよろしければ、あなたもD.I.Y出版してみませんか? とにかく、楽しいです。

  • 凸凸と凹凹に。

最近の記事

PPP Kyoto〜Printing Press for Public in Kyoto

11月10日より、京都は出町のトランスポップ・ギャラリーを中心に、こんなイベントを企画しています。基本的には、TrancePop gallery / とぅえるぶ / hand saw press Kyotoという京都の3つのリソグラフスタジオを中心に、日本各地に位置するいくつかのスタジオの制作物に関して、ギャラリーでの展示/販売する企画ですが、それに加えていくつかのワークショップも用意しています。かーなり不思議なイベントになると思いますので、是非、お立ち寄りいただければうれし

    • lakeと児玉奈央、というバンドがあります。

      lakeと児玉奈央、というバンドがあります。恐ろしく素晴らしいバンドです。児玉奈央さんの歌が素晴らしいのは言うまでもなく、そんな彼女をlakeが包み込んで異化作用が生まれるライブが、10月15日に代官山・晴れたら空に豆まいて、であります。年に1度、あるかないかなので、本当に見てほしいのです。まずは見ていただきたいです。 lakeと知り合ったのは、今から20年近く前、小田島等くんから手渡された1本のデモCDからでした。そこには、どこまでも音数少ない配置の中で、とにかく丁寧に歌

      • 第11話 インクに惑わされる日々

         前回、「次回・分解編!」と熱く書いたものの、よくよく考えたら、まだこの時期に分解とかしちゃいない。まだまだブラックボックスなこの機械に対して、どうやって向き合ったらいいのか、悩んでいるところだったのでした。A3での印刷の端っこが掠れてインクが出ない赤でも大丈夫。それくらい「2色で印刷できる!」というだけで興奮していたのです。フォークギターでの演奏でいえば、ようやく3コードを覚えられたくらいのもの。バーコードでいくらビビって音が出てなくとも、初めて自分でなにかできるような気が

        • 第10話 人との出会いで進化する現実

           人との出会いに関しては、子供のころから特別恵まれているように思っています。フリーで編集者になったときも、レーベルを始めたときも、ベジ屋をオープンしたときも、スタジオをオープンしたときでさえも、とてつもなく優秀で面白い人間と知り合えたから始められたのであり、一人で自分はいったい何かできたのだろうか、といつも思ってるのです。そして、このリソグラフを手に入れて、印刷を始めようとしたときにも、それとは少しだけ違う、思わぬ出会いがあったのでした。 ブームの匂いのかけらもなかった10

        PPP Kyoto〜Printing Press for Public in Kyoto

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        • D.I.Y.パブリッシングのススメ
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        • 凸凸と凹凹に。
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        記事

          第9話 調子悪くて、当たり前

            ボタンを押せば、印刷が始まる。印刷がスタートすれば、本なんてすぐに作れるさ……と安易に思っていました。でも、悲しいかな、自分の印刷機は、スタートボタンを押すと同時に、原因不明のエラーメッセージと共に「クーーン」と音を立てて止まってしまったのです。まだ、何も刷っちゃいないのに、まだ何も始まっちゃいないのに。 プロフェッショナルへ修理依頼  幾つかの機械を分解しては壊し、いじっては潰し、またさまざまな情報を手に入れた今となっては、「それ、別に大したエラーじゃないんだよ」と

          第9話 調子悪くて、当たり前

          第8話 後悔だらけで初印刷

           「リソグラフって印刷機、結構安くなってて……欲しいんだけれど……」と僕は妻の裕美に相談していました。再びセルフパブリッシングへの興味が高まってきていた2010年の夏前くらいだったと思います。  「何言っとるん、どこに置くつもりやの。それよりも、そんなもの買ってどうするの!」と彼女は産まれたばかりの子供をあやしながら、少し苛立ちながらこう続けました。「いつか、子供が大きくなって、それでもまだ本が作りたいんだったら買ったらええやん。まだまだ焦らんでも、いつでも大丈夫やって。その

          第8話 後悔だらけで初印刷

          第7回 リソグラフ・バイヤーズ・ガイド

           前章で述べた通り、自分で印刷機を買わなくとも、さまざまな公共施設でリソグラフでの印刷は可能じゃないか、と思われるかもしれません。また、10年前は難しかったかもしれないけれど、最近では各所にスタジオもでき始めてると自ら言ってるわけで、自分専用のリソグラフなんて必要ないんじゃないか、と思われるのも、確かにその通りです。  しかし、自分がやろうとしていたことは、フライヤーを500枚印刷することでも冊子を1冊だけ作ることでもなく、「D.I.Y.パブリッシング」であり、その目標として

          第7回 リソグラフ・バイヤーズ・ガイド

          第6話 公共施設の印刷機使用について

           ここから先、以前自分が出版したzine「わたしとリソグラフ」と被る内容が多いので、加筆修正をもとに掲載させていただくことにしました。というか、「わたしとリソグラフ」は3号までリリースしているのですが、実はリソ使用の導入部で終わったままなので、ここでその続きを書きたくてこのコラムを書いております。  ま、自分で文章を書き、自分で出版しているものであるならば、コピーライトの問題でゴタゴタしなくてもいいっていうのもセルフ・パブリッシングの良き部分ですね、と、久々に本コラムのテーマ

          第6話 公共施設の印刷機使用について

          第5話 リソグラフ印刷との出会い

           たしか2005年くらいと記憶していますが、僕らが京都のカフェ・アンデパンダンというヴェニューで、自分たちの企画であるジョアンナ・ニューサム(だったと思う)のライブを終えたあと、物販を売ってる時ひとりの女の子に「よかったらこれ読んでください!」と手渡された1冊のファンジンがありました。キセルをテーマに数ページにわたってわら半紙に数色のカラーで印刷されたその冊子は、古いガリ版印刷のような味わいでありながら、写真等も掲載した、当時はちょっと他には見ない仕上がりだったのです。 日

          第5話 リソグラフ印刷との出会い

          第4話 zineというメディア

           ルー・バーロウをフォーク・インプロージョンとして招聘したときのこと。帰りの成田行きの空港バスを待つために、渋谷のエクセルホテル東急のカフェでしんみりとツアーを思い返していました。  「渋谷のこのあたりは大きなビルばかりだね」とそこから見えるインフォスタワーを指し示すルー。「あそこにはね、日本で最も有名な音楽誌「ROCKIN' ON」の編集部があるんだよ」と答える自分。「じゃ、次は君らの編集部があのビルに入る番だね」「いや、僕らはそんな風にはなれないし、ならないよ」と笑う。

          第4話 zineというメディア

          第3話 セルフ・パブリッシングの落とし穴

           あのころの僕らは、出版社をやりたかったわけじゃなく、ただただ、雑誌が作りたかっただけ。だから、どうやってそれを書店に並べるか、次の号を出すためにどうやって精算していくか、それ以前にどうやって売るか、なんて何ひとつ考えていなかったのです。 道まだ遠く  『3ちゃんロック』との出会いで雑誌作りに興味を持ったわけですが、具体的にどうやってそこにたどり着いたらいいのかは分からない。当時、少しニューヨークに住んだこともあって、現地のファンジン・カルチャーに刺激を受けるものの、自分

          第3話 セルフ・パブリッシングの落とし穴

          第2話 じゃ、自分たちで出版社をやってみるか?

          (個人史)自主制作本との出会い  「あらゆる人が出版社」というのはマーシャル・マクルーハンの名言だけれど、インターネットの出現で、その言葉が具現化したことは言うまでもありません。しかし、本当に「あらゆる人が出版社」になれるのでしょうか? あと、マクルーハンの名言をたくさん伝え聞いているけれど、実はマクルーハンなんて1冊も読んだこともないんですよ、ハイ。  ま、本を作るのって、巨大な出版社じゃなくてもできるんだ、と自分が思ったのは、いつのころだったか? 「USやUKのファン

          第2話 じゃ、自分たちで出版社をやってみるか?

          第1話 D.I.Y.パブリッシングの入り口

          きっかけはぼんやりと  なぜに現在のように自分のスタジオで印刷して自分で製本して断裁、自分で本を売っていく蛇の道を選んだのか、正直、あまりにぼんやりとして今となってはよく分かっていないのです。とにかく明確な意思や目的があったわけではないのは、たしか。で、そんなぼんやりとした記憶からこの話は始まります。  ここで述べている「D.I.Y.パブリッシング」とは、一般的に語られる自分たちで企画・編集して出版・営業までを行なう「セルフ・パブリッシング」と同等の意思を持ちながら、やや

          第1話 D.I.Y.パブリッシングの入り口

          「鹿ヶ谷、うたの逢魔が時」

          魔物たちが、鹿ヶ谷にやってきます。 京都の東、大文字山の山並みに位置する鹿ヶ谷という場所。その傾斜では鹿ヶ谷南瓜等の京野菜が育まれると共に、古くから文士の別宅等が立ち並ぶこの場所に、ポツンと灯りを灯す美しき山荘があります。今回は、この場所をゆっくりと2日間お借りして、音楽を奏でていただこうと思います。 初日は、トランペット2本とオルガンというシンプルな編成で、心の奥に昔から鳴り続けていたかのように錯覚させる旋律をたおやかに紡ぎ続けるpopo、そして、言葉ではなく「うた」の

          「鹿ヶ谷、うたの逢魔が時」

          『RISOrt Week Test 1』中間報告

           『RISOrt Week Test 1』中間報告、と堅く書いてみたけれど、まぁ、そんな硬い話じゃない。というか、日々、とても楽しい。なんだろ、この楽しさは。ずっとイベントってのを打っていなかったからなのか、それとも人と会えるから、なのか。もしくは、自分が関わってきたことをとりあえずひとまとめできたことへの喜びなのか?  急に書いても分からないので、少し説明。先週の木曜日(8/20)から今週の日曜日(8/30)まで、約10日間にわたって、京都は出町柳のトランスポップギャラリ

          『RISOrt Week Test 1』中間報告

          ずっと大好きな喫茶店、ただあるのがうれしい。

           まだ現物は読んでいないのだけれど、ゲラで読ませていただいた京都は六曜社のお父さん、修さん、息子さんの三代を綴った『京都・六曜社三代記 喫茶の一族』(取材・文:樺山聡/京阪神エルマガジン社刊行)が、9月1日に発売される、とのこと。ちょうどコロナでずっと家に籠もっていたあのころ、電話でほんの少しだけ取材を受け、いつでるかいつでるか楽しみにしていた一冊。「なんで、京都をずっと離れてたお前が六曜社のことで取材受けてるんだよ!」と思われるかもしれませんが、まぁ、その理由はこの書籍の

          ずっと大好きな喫茶店、ただあるのがうれしい。