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たのしめますか

うらめしや…

7月として記録的な低温が続いている。

例年なら電気代がうなぎのぼりの時期だが
仕事場では、窓と玄関のドアを少し開けておくだけで快適だ。

だが、不快に思っている人たちもいる。

東京のとしまえんでは、プールが苦戦中。
来場者は、去年同時期と比べ1万9千人→900人(▼95%)
電気の消費量も例年同時期の3/4程度。
百貨店は、春夏衣料のサマーセールが不調。
清涼飲料水の売れ行きも芳しくない。野菜の生育も危ういんだとか。

プール、電力会社、デパート、飲料メーカー、農家のみなさん。

低温と雨。さぞやうらめしく思っていることだろう。

そして、忘れてはいけない人がいる。

イナガワさんだ。

「うわ~ ヤダな~ 怖いな、怖いな、怖いな~」

低温と雨の影響を受けているのではと察する。これだけ涼しいとお声がかかりにくいのでは?夏の風物詩は、商売“あがったり”かも。

怖い話といえば、最近テレビではとんと見かけなくなくなった。

自分は、オファーいただいた仕事は断らないポリシーだけど
一度だけ、断った仕事がある。怖い系の特番だ。

キー局のゴールデンタイムにやる2時間特番。

断ったのには理由がある。怖がりだから、ではない。

子どもの頃、小学校の校庭からUFOは見たことあるが、お化けの類は見たことない。

ここでは「お化け」という呼び方にしておくが、自分は一種の「エネルギー」だと思っている。自分自身もエネルギーの塊。いずれお化けになる。

脳心理学に明るい方なら、仕組みがわかると思うが「見える」というのは、
眼で感じた情報が信号となって脳に送られ、脳内のスクリーンに映し出されることで「見えている」という感覚になる。

複数の人が、同じ物体を見ていても、感じる色合いが人によって異なるのと同じで感じ方の感度(強弱)は、それぞれ。なので、お化けが「見える」という人は、エネルギーが持つ波長(周波数)に同調して、その人の脳内スクリーンに映っているにすぎないと思っている。でも、見えたら怖いんだろうな…

海に落ちた人が、水中から足を引っ張られるように感じて、恐怖を覚えた。という怖い話の定番があるが、あれは物質的な何かがその人の足を掴んでいるのではなく、実際に足を掴まれた時の経験から、同じ信号が脳に送られて、「掴まれている」と感じているだと思う。

幻肢」という話がある。事故で足を失った人が、失ったことを知らずに「足がかゆい」と思ったり、脳に信号を送ると、足を触られている感覚になったりするという実験結果もある。

実際のところ、お化けに“どつかれ”たり、まして”命を取られた”なんて話は聞いたことない。司法解剖で死因「お化けによる」ってあるのか?

それで、怖い話の番組の仕事を断ったのは「仕組み」がわかったからだ。

正確には、はじめは好奇心から引き受けた。自分は、事実にもとづき、いつ、どこで、だれが、なにを、どのようにというロケ台本を作る。いわば設計図だ。その中に、「ここでお化けが出て」なんていう「不確実」なことは書かない。だって、出ることは、担保されていないから。

実際、ロケ現場で、「はい、カメラまわりました~」という合図と共に、「はいはい、ど~も~」って出てくるか?カメラ慣れしたお化けは怖いか?

だけど、実際の番組では、なんか映っていたりする。自分は、現場に行かないので何が行われているかディテールまでは知らなかったのだが、あとで編集されたVTRをチェックする段階で、何かが映っていることを知る。

「へぇ~、やっぱいるんだ」と、ゾクっとしたが、長くは続かなかった。

あるチームが制作したVTRでの一例。
室内で撮影した暗視カメラの映像に、もやもやっとした”不気味な影”が揺らいでいた。住人を脅かすものの正体はこれか?

不気味なゆらぎは、キッチンの壁あたり。ちょうどコンロの上だ。コンロはIH調理器だった。あとでわかったのだが、電源をONにして暗視カメラで撮影すると、そういった映像が撮れるという。知らなかった… 映像技術の専門家なら、もっとご存じかもしれない。

そういった仕組みのいくつかを知ってしまったことで、怖い話番組の続編のオファーは断った。その際、プロデューサーから理由を聞かれた。

そのまんま言うわけにいかないので「霊を見世物にするのはどうなのかと思いまして」と答えた。すると「お前、霊とか信じてんの?」と言ってきた。

一瞬、思考が停止した。ハッとした。そっか、この人たちは、信じていない、つまり、そもそも“ないもの”をあるように見せなければならないから、いろんなテクニックを使っているのか…

ってことは、自分の方がオカルトさんだと思われている。

だが実際、神道の先生から「そういった番組はいかがなものか?」と言われたことがあったので、断る理由として嘘はついていない。

結局、「オカルト野郎」として、無事断ることができた。

ところで、人が「怖い」と思う感情は、「知らない」「嫌い」という感情とニアイコールだと思う。

人間の感覚は、突き詰めると「快」か「不快」かに分類される。

根源的な欲求は「不安の解消」である。

どうして不安を感じるかといったら、情報がないから。つまり知らないから。よく「生理的に無理」という感覚を覚えることがある。第六感的なものもあるだろうが、対象の情報を持っていない、知らないことに因ると思う。

よくわからないから、とりあえず嫌っておくか。得体の知れないものだから
怖い。「怖い」「知らない」「嫌い」は、「不快」で括られる。

イナガワさんの怖い話を聴く人たちは、客として「不快」を楽しみ、話しているイナガワさん自身は、エンターテイナーとして「快」を楽しんでいる。

怖い話のライブ。「快」と「不快」の せめぎあい も、ゾクゾクする。

イナガワさん、来月お盆明けの誕生日で72歳になる。高度経済成長期だったら、そろそろ「出る」側の人になっている年齢だ。(昭和50年の男性平均余命71.73年/厚生労働省データ)こうなったらあと半世紀くらい、舞台に出ていてほしいな。

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