利き手封印

 生粋の右利きです。右投げ、右打ち、視力検査では右目が利き目です。

 ここのところ、左手で箸を使う練習をしています。

 きっかけは、先週行ってきた草津の温泉ホテルにて。温泉のおひとりさまが平気になると、オトナ女子もプロの領域さ、フッフッフ。会社員の時は毎夏訪れていたお気に入りのウェルネスリゾートでのお食事処。フリーランスになって2年、自分にご褒美。無農薬野菜を使ったマクロビオティックのフルコースのディナー。食物繊維たっぷりの根菜やスーパーフードや玄米を使っているので、いつも以上に咀嚼しないと却って消化に悪いため、時間をかけて食事がしたい。。。でもテーブルの向かいには誰もいないから間がもたない。。。そこで、左手に箸を持ち替えて、さぁ、いただきます。

 箸の機能って、今更ながら万能です。つかむ、切る、刺す、掬う、集める、かき混ぜる、、、他にあるかな?利き手でフツウにやっていた食事の作法を、あらためて左手で試してみると、、、四苦八苦たる姿。良いオトナになって箸つかいこの道、ゥン十年、もうちょっと器用に使えると思ってたけどなぁ。おかげさまでおひとりさまコースも間がもって、というか、きゅうりのスライス掴むのに30秒くらいかかってるし、ひと口分がちょびっとしか運べないから、十分な食事時間をかけられました、かけざるを得ない、かかってしまう。

 イラっとするけど、それ以上に歓びも得られたのが不思議。回を重ねるごとに、昨日まで苦戦していた食材がひょいっと掴めたりすると「あー、進化してるかも」って霊長類ヒト科として素直にうれしい。昔はこういう体験の積み重ねだった。逆上がりが初めてできた時、補助輪なし自転車に乗れた時、記憶にないけど、よちよち歩きを始めた時、這い這いし始めた時、生活に必要な営みの動作ができるようになる度に、こんな感覚が身体を走ったのでしょう。

 キャリアコンサルタントは、職業生活設計で迷子になりかけている方のお話を聴く仕事です。養成学校時代、仲間同士で数々のロールプレイを練習しました。実体験ネタを話すから、感情移入してしまいがちだが、共感はしても同感してはいけない、のがカウンセリングのセオリー。尊敬するキャリコンの先生の言葉が極意で「普段の世間話の時は右手、カウンセリングは左手で作業をする」何の違和感なく無意識に使える右手ではなく、左手を使うにはテクニックも集中力も要します。それでいて、相談者の目には不自然に映ってはいけないのです。

 右手のおしゃべりタイムも、大切なリフレッシュ。左手でクライアントさんの話を聴く機会が増えてきている今、一期一会のカウンセリング・タイムにも、昨日まで出来なかったことが左手で出来るようになった歓びを感じています。カウンセリング・ルームに伏し目がちに入ってきたクライアントさんの顔が、明るくなって帰って行かれるのを見送るのが何よりうれしい。

 「利き手」を封印して、良い「聴き手」になろう、

駄洒落オチ、でした。


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