「ASMR（英: Autonomous Sensory Meridian Response）は、人が聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地良い、脳がゾワゾワするといった反応・感覚。正式、および一般的な日本語訳は今のところ存在しないが、直訳すると自律感覚絶頂反応(じりつかんかくぜっちょうはんのう)となる。」　※wikipediaより抜粋

　耳かきやささやき声、オイルマッサージなど、耳に心地よい音をバイノーラルマイクを使って流すASMR配信が、日々多くのVTuberによって行われている。夜の10時頃から深夜にかけてがASMR配信のゴールデンタイム（と勝手に呼んでいる）で、社会で疲れた我々を優しく癒して明日への活力を与えてくれている。

　もはや一大配信コンテンツと呼んでも良いASMRだが、今回は数ある配信の中から、私が好きな配信をピックアップして紹介していく。題して「このVTuberのASMRを聴け！」。音楽ライターが名盤を紹介するような気持ちでやっていきたい。vol.1としたので、定期的に更新をしていく予定だ。

　紹介するものは全てYouTubeのリンクを貼るので、気になったものはぜひそのチャンネルへ移動し、配信を味わっていただきたい。紹介の見出しは、「配信タイトル／VTuber名」とする。

【ASMR-バイノーラル】１時間囁きます。おやすみ雑談💤 #5【アイドル部】／北上双葉

　いきなり王道かつ名配信からの紹介。ASMR紹介のnoteを書くときには、絶対にこの方から始めると決めていて、というのも私が初めてVTuberのASMR配信を見たのが彼女だからだ。

　VTuberに詳しい方には今更言うまででもないが、北上双葉（きたかみふたば）さんは電脳少女シロさんを筆頭とする「どっとライブ」所属のVTuber。当時12名から成る「アイドル部」の一員として2018年の5月にデビューした。VTuberの中では非常に早い段階でASMR配信を行っており、そのクオリティの高さと中毒性が人気を集めた一つの要因にもなり、アイドル部で最も早く登録者5万人を達成した。

　この配信は彼女のアーカイブ内で最も再生数が多いASMR配信であり、彼女のゆったりとしたテンポのトークをささやき声で1時間堪能できる。ASMRにおいて声質は非常に重要な要素であり、それが各配信者の個性になっているのだが、彼女のささやき声は特にASMRに適性がある。どこか舌足らずで幼げがあるマイペースな喋り声が、リップノイズを伴ってバイノーラルマイクを通して届き、ぞわぞわした感覚を呼び起こさせる。

　声質だけでなく内容も彼女らしく、似せる気のないアイドル部同期のモノマネ（というよりも有名なセリフを読んでいるだけ）を始めたり、唐突に口笛でイントロクイズを始めたり、リスナーを小馬鹿にするような発言をしたりと、ささやき声は保ったままではあるが非常に気ままな配信をする。ただそれらも全て可愛げがあり、かえって心地よくさせられてしまう魅力がある。

　周防パトラさんや結月ちょこさんをASMRの女王とするならば、北上双葉は私にとってASMRの原点である。最近はASMR配信こそ行っていないが、その他の配信でも彼女のトークの魅力は存分に感じられるだろう。再生リストに過去のASMRのアーカイブがあるので、初めて見る人はそこからチェックするのが良いだろう。

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【ASMR】ヤンデレ妖狐がオイルで癒しを♡もう他のこと何も考えないで？【Binaural/Whispering/Oil Massage/Ear blowing/Relaxation】／紙代なつめ

　続くこちらも名配信。元々めるぷらというグループに所属しており、現在は個人で活動されている紙代（かみしろ）なつめさんの再生数約26万回(2021年2月時点)のASMR配信である。

　小悪魔系ハイスペ妖狐剣士こと紙代なつめさんは2019年11月8日デビュー。デュエルリンクスやLOLをはじめとしたゲーム実況や雑談配信では落ち着いた声が聴けるが、一転ASMR配信では非常に甘い声になるのでドキッとさせられる。

　彼女のASMR配信で人気のシリーズと言えば、ヤンデレシチュエーションがまず挙げられる。この配信も、オイルマッサージをしつつ、「大好き」や「私だけを見て」などといった甘い言葉を終始投げかけてくる。だがそこには、ヤンデレ特有のバイオレンスな雰囲気は感じられない。とにかくリスナーを蕩けるように甘やかして、その心地よさにいつの間にか共依存にさせられてしまう。そんな中毒的な魅力が詰まった内容になっている。

　若干面倒くさいことを言うと、他者への攻撃性や独善的な愛情表現などのヤンデレ的な言動は感じられないので、単に嫉妬深く愛が重いだけの子という印象だが、ASMRの場合はあまりにヤンデレになりきられてしまうとこちらも落ち着けないので、そうした意味で彼女のヤンデレ風ASMR（あえてヤンデレ風とした）は非常に優れたシチュエーション設定である。

　ホロライブ金髪組のようにYouTubeの収益化の問題でASMR配信をあまり行わなくなってしまったVTuberもいる中、定期的にASMR配信をしてくれるのもありがたい。お姉さんシチュや添い寝、タッピングなど、ヤンデレ以外も良い配信が多いのでぜひチェックしてみてほしい。

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【 ASMR 】黒3dioを手に入れたので、もふもふとゼロ距離囁き【Binaural / Ear Cleaning / Whispering / ASMR for sleep 】／天川はの

　本記事で最後に紹介するのは、Re:Act所属の天川（あまかわ）はのさんのASMR配信。この方も配信頻度が非常に高く、どれをピックアップするのか悩んだが、ハイエンドモデルのバイノーラルマイクである「Free Space ProⅡ」、いわゆる「黒3dio」を初めて導入したこの動画をセレクトした。

　天川はのさんは2019年9月17日に、姫熊りぼんさんとのユニット「すたーべあ！」の一人としてデビュー。2月8日に登録者5万人を達成したり、2月13日に3Dライブを開催したりと、今非常に勢いのあるVTuberの一人である。普段の配信はゲームと雑談、ASMRがメインで、その頻度も高い。

　彼女のASMRの魅力の一つに、鈴虫の声や雨音、オルゴール音などのバックで流れる環境音やBGMが非常にマッチするという点が挙げられる。実は環境音やBGMを鳴らしながらASMR配信を行っているVTuberは案外珍しい。ASMRリスナーの中では、配信中のBGMは邪魔という意見が少なからずある印象があるので、その影響もあるのかもしれない。

　しかし、彼女のASMR配信における環境音やBGMは、ASMR中のBGMアリ派という自分の主観もあるが、非常にうまく機能しているように思われる。この配信では鈴虫の声、つまるところ夏の夜の音を流しているのだが、彼女のビジュアルや声から連想される若干の幼さと環境音が、ある種の懐かしさを想起させて落ち着いた気持ちにさせてくれるのだ。幼さと書いたが、いわゆるロリ的な幼さではなく、自然で純粋がゆえの幼さと言ったらよいのだろうか。ささやき声はどちらかと言えば落ち着いた印象があり、シチュエーションによってはドキドキするような甘さもあるが、それ以上に環境音と声が合わさったことによる爽やかな心地よさが魅力的である。

　彼女のASMR配信・動画は再生リストにまとまっており、その数は現在170本。どの配信も一定のクオリティが担保されているので、睡眠導入用にぜひ聞いてみていただきたい。ちなみに、すたーべあ！の相方である姫熊りぼんさんもASMRの名手なので、そちらもチェックしてみてほしい。

YouTubeチャンネル：

おわりに

　さて、今回は3名のVTuberのASMR名配信を紹介した。どれも私が大好きな配信であり、その魅力がこの拙文で伝わっていればとても嬉しい。

　本当はもっと紹介したい配信はあるのだが、定期的に更新していくことを考えると、最初からあまり多くを詰め込んでしまうと次回からが辛くなってしまうのでここまでに留めておく。それではまた次回の記事で。