稀人ハンター・川内イオ

ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンター。 1979年生まれ。03年よりフ…

稀人ハンター・川内イオ

ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンター。 1979年生まれ。03年よりフリーライターとして活動開始。06年にバルセロナに移住し、10年に帰国。全国で「稀人」の取材を続けている。新著『1キロ100万円の塩をつくる 常識を超えて「おいしい」を生み出す10人』発売中!

最近の記事

お母さんのドロップキック!「……私モデルやろうかな」

母さんは唐突に言った。 「・・・私モデルやろうかな」 うちの母さんは黒木瞳だ。 そんな人なら、朝食のブレッドに無添加の苺ジャム塗りながら、優しく微笑みこう言うだろう。 「母さんがモデル? うん、いいんじゃない」 でもね。 うちの母さんは、御年56歳。 千葉のチベットなんていわれる辺鄙な地に住む、普通のおばちゃんです。 おれはそのとき、歯を磨いていて脳にはシャカシャカ音が響いていた。 だから、聞き間違いかと思った。 いや、思いたかったのかもしれない。 は? そう聞

    • 雨の山をみんなで歩く!第2回 稀人ハンターキッズキャンプの記録。

      僕はアイデアを考えて、企画して、実行するところまでは得意なんだけど、それを記録に残すことを忘れがちだ。第2回 稀人ハンターキッズキャンプのことをふと思い出して自分のSNSを調べたら、なんとちょうど1年前だった!…これもなにかの縁。改めてレポートしよう。 僕が取材したり気になっている稀人のもとを親子で訪ねるのが、稀人ハンターキッズキャンプ。第1回は、2022年8月に開催した。この時は、娘ちゃんと参加してくれたライター仲間のウィルソン麻菜ちゃんにレポートをお願いして、めちゃくち

      • 浅はかでした。

        浅はかだった。 僕が稀人ハンターとして活動するのは、ドラマ『JIN−仁−』の坂本龍馬のセリフ「死んでいった人たちがまた生まれてきたいと思う国にすること」「正直に生きてきた人たちが、笑って暮らせる世にすること」に胸を撃ち抜かれて、自分もこういう社会の実現に貢献したいと強く思ったからだ。 この話はあちこちでしてきたのだけど、もし「具体的にはどういう社会なんですか?」と問われたら、モゴモゴ口ごもっただろう。今の今まで、理想だけがあり、具体がないことに気づいていなかった。 『こ

        • 人生を深掘りするインタビュー記事にニーズはない? 稀人ハンタースクール2期生募集します。

          僕は常々、不思議に思っていた。 なんで、大手メディアで人生を深掘りするインタビュー記事を目にする機会がほとんどないのだろう? 僕は仕事の大半が「人生を深掘りするインタビュー記事」だから、知っている。「人生を深掘りするインタビュー記事」はちゃんと読まれる。さすがにぜんぶがぜんぶとは言わないけど、毎年1本で100万PVを超える記事を書いている。 ちなみに、プレジデントオンラインで最近公開された僕の記事『体育館に「おうち」ができた…能登半島地震で大活躍する「1棟1万円」の簡易

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          日本のパクチーブームを作った男が届ける異次元パクチーを体感せよ。稀人マルシェ2023

          シソやパクチーといった香草が大嫌い、それは僕だ。 でも、「7年間ずっと満席のまま閉店」した伝説のパクチー専門店のオーナーが、千葉の田舎に「パクチー銀行」を作ったと知り、そのオーナーと「パクチー銀行」という謎の存在への興味が勝って、取材に行った。もちろん、香草嫌いという情報は伏せて。 7年間満席だったのは、東京・経堂にあった日本初のパクチー専門店「パクチーハウス東京」。そのオーナーが、佐谷恭さんだ。 「パクチーハウス東京」はファンの多い店だったから、聞いたことがあるという

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          音、香り、風味、すべてが未知の体験―成清海苔店の「秋芽一番摘み」。稀人マルシェ2023

          全流通量のたった4%しかない「秋芽一番摘み」って知ってる? 雑誌『旅の手帖』で取材に伺った時、「秋芽一番摘みのうま味は、ほかとまったく違います」と教えてくれたのが、福岡県柳川市で営業する成清海苔店の2代目、成清忠さん。秋芽一番摘みはその年に流通する国産海苔60億~70億枚のうちわずか4%なんだけど、海苔の名産地、有明海で採れたこの稀少な海苔だけを扱っているのが、成清海苔店なのだ。 秋芽一番摘みについて、説明しよう。海苔は、毎年11月頃から翌春にかけて収穫が行われれる。秋芽

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          今年も開催!エピソードとともに味わう「口福」をお届けします。第5回・稀人マルシェ!

          2019年、僕が書いた「おいしいものの作り手たち」の記事を「読みながら味わってほしい!」と開催した稀人マルシェも、なんと5回目! (2019年に書いた「僕が稀人マルシェを開催する理由」) とんでもなく飽き性な自分がコロナ禍も乗り越えて5回目を迎えることに、自分で驚いている笑 一番のモチベーションは、過去4回のマルシェで買い物をしてくれた人たちの「驚きの表情2連発」だ。 僕は稀人ハンターとして、家族に「本当はグルメライターなんでしょ?」と疑われるほど、多くの「食の稀人」を取

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          牛の健康を追求したお肉が引っ張りだこ!梶岡牧場の挑戦。稀人マルシェ2023

          ※諸事情により、今回の稀人マルシェで梶岡牧場のしょうひんの取り扱いは中止となりました。 【牛肉の格付けって味の評価じゃないって知ってた?】 牛肉には「A〜C」のアルファベットと「1〜5」の数字で表す格付けがある。肉屋さんや焼き肉店で、最高級品を示す「A5」をアピールする牛肉を見たことがある人もいるだろう。 実はこの格付けが「見た目」を評価するもので、「味」は一切関係ないって知ってた? 僕は知らなかったから、梶岡牧場(山口県)の梶岡秀吉さんからこの話を聞いた時、マジでビッ

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          カリスマシェフのもとで修業した人気パン職人の共演!稀人マルシェ2023

          僕は「おいしいものづくり」をしている稀人の取材をすることが多い。なぜって、それはおいしいものが好きだから。取材現場では、よくひとりで悶絶している。 でも、その味や食感を文章で表現するのは簡単じゃない。読者もきっと、あれこれ想像しながら「…食べてみたい!」と思っているはず。それなら実際に食べてもらおう!稀人たちの「おいしいもの」を仕入れて売ろう!という完全なるノリで始めた稀人マルシェも、今年で5回目を迎える。 今年の稀人マルシェは12月21日に開幕! 個人的にサイコーに胸

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          1話公開!『キミのお尻にカビを生やしちゃって、ごめんなさい。』収録のズッコケ日記

          今朝ワイフと「男性の子育てエッセイ」について話した。女性の子育てエッセイはたくさんあるし、子育てノウハウ本は世に溢れている。でも、確かに男性の子育てエッセイはそんなにない気がする…… パッと思いついたのは、辻仁成さんの『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』。ほかにどんな本があるのかなあと思ってググってみたら、けっこうあった。でも、「子育て日記」は少なそうだ。 そもそも、どんなことが書いてあるのか想像がつかなければ手に取りづらいよなあ……と『キミのお尻にカビを生やしちゃ

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          「前書き」公開『キミのお尻にカビを生やしちゃって、ごめんなさい。~稀人ハンター子育て日記~』

          本日(2023年11月11日)の文学フリマ東京でお披露目した日記本『キミのお尻にカビを生やしちゃって、ごめんなさい。~稀人ハンター子育て日記~』の「前書き」を公開します。 以下、本文 まさか、自分が日記をつける日が来るとは思わなかった。 僕は自他ともに認めるテキトー男で、毎日決まった時間にどこかへ行ったり、一定のペースでなにかをしたりするのが極めて苦手だ。 そのうえ、とんでもなく飽き性だから、これまでいろんなことが文字通りの三日坊主だった。思いつきで始めてあっという

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          10年前の9月1日、おれは浮かれていた。

          最近、雑誌ブルータスの仕事で行ったウガンダ出張について思い出すきっかけがあって、いつだったかなあとFBを見てみたら、2014年9月1日に「ウガンダ決定!」と投稿していた。ちょうど10年前かあ! 思い起こすと、当時はアフリカでエボラ出血熱が発生していて、ウガンダでも患者が増えていた時期だった。たしかそれでライターさんが何人もこの仕事を断って、困り果てた編集部に「行きそうな人材」として情報が入り、「来週、ウガンダ行かない?」と声がかかったのだ(やります!と即答した笑)。 当時

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          高野秀行さん著『イラク水滸伝』はハードボイルド版『世界不思議発見」だ!

          高野秀行さん著の『イラク水滸伝』読了。 ネットが発達した今、地球上のあらゆる情報が手に入るように感じてしまうけど、それが明らかな錯覚だと教えてくれるのが、本書だ。 辺境旅のプロ、高野さんはひとつの新聞記事をきっかけに、現在に至るまでほとんど情報がないイラク南部の湿地帯に暮らす湿地民「マアダン」を探し求めて、イラクに飛ぶ。 なにせ情報がないから、すべては行き当たりばったり。高野さんが「ブリコラージュ」と表すように、その場の縁と運を頼りに、謎に満ちた湿地帯の奥へ奥へと潜り込

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          日記Zineの面白さを知った日

          稀人ハンタースクール生のあやさんがZineを作ったと知り、福岡出張の際に購入させてもらった。 これは、コロナが猛威を振い始め、日本全体がとても緊迫していた2020年春の日記。相方さんと息子さん、3人で自宅にこもっている時に起きたこと、考えたことがとても詳細に記されている。 僕は古典や名著ふくめ人の日記を読んだことがない。どんなことが書いてあるんだろうと気軽に読み始めたら没頭し、搭乗前と機内で読み続けて気づいたら羽田に着いていた。 きっと誰にとっても2020年の春は忘れ難

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          映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』はロックだ!

          昨夜は映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』東京試写会! たくさんのクラウドファンディングサポーターとメディア関係者が会場の東京写真美術館に足を運んでくれました!僕はこの映画製作にまったく関わってないけど、ワイフの晴れ舞台が賑わって嬉しい! この映画は24時間テレビ的な愛は地球を救うっていう内容じゃなくて、このパンフレットに書かれている「俺たちが行くのは、点字ブロックの上だけじゃない」という言葉の通り、見える人と見えない人の冒険譚。「ROCK」という白鳥さんのTシ

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          稀人ハンターがキッズキャンプを開催してみた!そのレポートをプロに書いてもらったぞ!

          都心から2時間、親子で楽しむ「稀」な旅「稀人ハンターサマーキャンプ Vol.0」 ヤギの大群を追いかけて まだ暑い8月のある日の涼しげな森のなか。木々のあいだから差す光が気持ちよく、近くを流れる小川のざあっという音も心地よい。それでも滝のような汗が止まらないのは、私が4歳の娘を背負いながら坂道を早足で登っているからだろう。目の前を進む、ヤギの大群を追いかけて。 十数頭のヤギたちが、坂道を駆け登っていく。おいしい草を目掛けて先頭を走るのは元気の有り余る若いヤギたち。お腹に赤

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