似顔絵_タラバミント_2_4

日報 2月4日

記入者:タラバミント


まるで薪ストーブが咳こんでいるみたいだった。

今日は吹雪の一日だった。

会社唯一の暖房器具である薪ストーブは、
外の煙突におおかぜが吹きつけるたび、
室内へゴフゴフと白い煙を吐いた。

おかげで社内はあっという間に燻され、
キャンプの時に嗅ぐようなワイルドな香りでいっぱい。

今日燃えている木は、
カラマツ、白樺、あとは古い建材なんかも。 



社内には、他にも違う用途の木がある。

僕がこうしてタイピングしているパソコンデスクは、
子どもが使うような木の勉強机である。

何を隠そうこの机は、
パン父ジュニアの父、パン父その人が昔使っていた机なのだ。

天板の右角がなぜか落とされていて、
やたら一箇所に傷が集中しているところが目立つが、
その他は比較的綺麗に使われていた様子が伺える。

パン父が勉強机として使わなくなった後、この机は、
パン父の父、パン父グランパの商い机として蘇る。

天板の右角は、パン父グランパによって落とされたものだそうだ。



パン父グランパは商いを終えて数年後に、この世を去る。
その後も、机はそのままの姿で残っていた。

その机を、パン父ジュニアがニスを塗り直し、
新たな命を吹き込んだ。

元々は彼が使う予定の机だったのに、
「君のパソコンデスクに」と言って、
彼はその机を、僕に譲ってくれたのだ。

この机には、
僕の知らない青春の思い出がたっぷり染み込んでいる……



今、薪ストーブの中では、
さっきまで“木”だったものが燃えている。

黒く赤茶け、
熱を発しながら燃えていく。

その熱は、僕や会社を温めている。



机になる木、薪になる木、
鉛筆になる木、ピアノになる木、
紙になる木、棺桶になる木、
次の木のためにそこで朽ち果てる木、

同じ木として生まれても、
行く先は一つだけじゃない。

正しい道を一つ決めるんじゃなくて、
どれも大切で必要な用途だから、

「木のエネルギーを余すことなくみんないただきます」
という気持ちで使うのが大切なんだと思ったよ。



そんなことを改めて思い知らされた。
僕にしては、熱っぽくなってしまった。

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