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湖と森で過ごすドイツの休日から考える、都市と自然と公共空間の関係性

ドイツの秋は美しい。

もちろん日本の秋の紅葉も美しいのだけれど、街路樹が多いベルリンの秋は紅葉した葉が絶えずひらひらしている。日本の春に桜がひらひら舞っているような感じだ。
圧倒的な量の緑が一瞬で紅葉し、大量の落ち葉が落ちる。森の中を歩き、落ち葉を踏みしめながら歩く。

「秋」というには短く、寒すぎる秋である。
この紅葉のシーズンは、10月の上旬から11月の頭までの約1ヶ月だけ、体感温度はすでに10度を下回る。どんどん日が短くなり、日本よりも1ヶ月早く寒さがやってくる。
そして季節の変わり目で毎日曇っていて、曇りもどんよりした分厚い雲が立ち込めている。
1週間のうち1,2日晴れればいいほうで、だからこそ太陽の日差しをみると心から嬉しくなるし、秋の晴れの日は飛びきり美しい。

日本のように春と秋が3ヶ月もある地域は地球上でどれくらいあるのだろう。
ベルリンで過ごした秋は3週間、春は本当に一瞬。
秋も春も一瞬で過ぎ去ってしまうので、'状態'というよりもクリスマスとか誕生日のような一過性の行事みたいな感覚だった。
日本という国は本当に気候に恵まれていて、1年を通して暖かく、日光の恩恵を受けている国だと思う。
夏の暑さや湿度は厳しいけれど、豊かな自然環境を持っている。

そんなドイツの貴重な晴れの日に旧東側の郊外にあるミース・ファン・デルローエのレムケ邸に行った。


レムケ邸はAlexanderplatzからトラムで約30分のところにある、ちいさな湖にほとりに建つレンガの住宅である。ミーズが亡命する前の最後の作品だという。
現在は入場無料のギャラリーになっている。

小さな住宅だが、目地の操作やレンガの収まりがなかなか面白くてゆっくりじっくりと見た。

そのあとは湖のほとりを散歩。

ちなみに湖で散歩はドイツでよくある休日の過ごし方だ。
天気の良い夏や秋は有名な湖はごった返すのだが、ここは小さなローカルな湖なので静かでとても心地よかった。

ベルリンに暮らしていて思うのは、緑豊かな都市であるということ。
人間が動物のように自然の中で過ごせる場所(森や林)が中心地から遠くないところにたくさんある。
公園と称した広大な空地もまだまだ健在。街中でリス、キツネ、野うさぎを見かける。これはロンドンやパリにはなかなか無いと思う。
それが人々の日常的に訪れる場所としてサードスペースやパブリックスペースの役割を果たしている。
それは自然 対 人工(都市)という二項対立的な関係性ではなく、都市と自然がイーブンの関係で存在している。

日本では郊外に行けば緑豊か、都心はあくまでも開発された人工の都市という構図があるけれど、ベルリンは森や(ワイルドな)公園,湖と都市がモザイクのように並んでいて、徒歩や自転車でいつでも自然にアクセスできて、とても暮らしやすかった。

人口が減少して都市部が減っていくことを考えた時、都市のたたみ方として「緑地化」という手法を散々耳にするけれど、ただ緑に還すのではなく、適切な管理をされた上で、公共空間として人々に使われうる場にすることが必要だと思う。

森、林、湖、コントロールされきれていない緑地や公園、整備された公園、芝生、市民農園、kleine garden、個人の庭 ...と様々な公共性のグラデーションを持った緑地が存在するあり方は新しい都市と自然、公共空間の関係の可能性を示しているように感じた。

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