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子育てとブラ

子供が3歳の頃の話。うちの子供というよりよその話なんだけど、急に思い出した。

生後5ヶ月からデイケアっ子だったもうすぐ8歳の娘、小さいさん。2歳から4歳までは、地元のプリスクールにかよっていた。

これだけ小さい子供達が親から離れて過ごすわけだから、やはり朝のドロップオフの時間は、パパやママから離れたくないと阿鼻叫喚する子供もいる(大抵の場合は親がぱっと離れて逃げると、10分もすれば泣き止むんだけれど)。

小さいさんの通っていたプリスクールはおもちゃの持ち込みもOKだった。精神安定剤の意味もかねて、子供達はお気に入りのブランケットやぬいぐるみを抱えてやってくるのだが(そのおかげかこの学校の子供達は友達とモノを平和的に共有するということに非常に長けていた)、ある女の子の持ち込みアイテムが凄かった。

それは、

お母さんのブラ。

「これ持ってると安心するみたいなのよね〜」

とそのお母さんは笑っていたけど、ちょっとサテン生地のような、ツルツルした感触が気持ち良いのか、お母さんのブラ。半分に切って片乳ぶんだけになったのを、しっかり握りしめてその子は登校していた。

ここのお父さんはサッカーのジダンにそっくりな人で、送り迎えでよく見かけたのだが、イカツイ感じでニコリともしない人だった。結構背が高くて、かなり仏頂面のまま子供を肩車してやってくる。

そしてある朝、いつもどおり子供を肩車して学校にやって来たお父さんのスキンヘッドの上には、

奥さんのラベンダー色のブラが垂れ下がっていた

頭だかおでこだか見分けのつかないエリアをそっとカバーしているラベンダー色のブラ。さすがにこれはプッ!と笑ってしまったが、それでもいかついジダンは意にも介せず、いつもの仏頂面でじっと前を見据えたまま、ブラと子供を肩に載せたまま学校の中に消えていった。

その夏、私は子供と1ヶ月日本で過ごしたのだが、なんだか色々気疲れするなぁとしんどく思うことも多かった。普段この土地で過ごしていると使うことの無い、「恥ずかしい」「ご迷惑」「みっともない」という言葉やコンセプトを浴びることが多かったからだと思う。

そして急にこのことを思い出した次第である。

自分のブラがお天道さまの下、公衆の面前に晒されようが、妻のブラが自分の頭から垂れ下がっていようが、ブラが学校に持ち込まれようが、他人のブラが自分の目に飛び込んでこようが、子供が泣かずに安心して学校に行ってくれるなら別に全然ええじゃないか・・と誰もが思う、と言うか、そんな意識もなく、ただ「わ〜、ブラなんだ、面白いね」ぐらいにしか思っていないユルイところで普段生活しているから余計しんどかったのかもしれない。

どこにいようが、世間が何と思おうが、見栄えがどうであろうが、それが自分や家族にとってベストのチョイスであると思うのであれば、気にせずジダン似の父のように、頭からブラをぶら下げまっすぐ前を見据え、それが何か?と進んで行ける、サウイフモノニ、ワタシハナリタイ。

(コンテスト参加のため、以前に書いたものに加筆修正をして再度アップしました。以前コメントをいただいていたものを削除しなくてはいけなかったのが残念。また下書きに戻せる機能が欲しい・・・)



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