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【十七の朝かんさつ】2/9 魅惑の朝ケーキ 豊橋•マッターホーン

朝から生クリームたっぷりのケーキを頬張る幸せを体験したことはあるだろうか。
誰もが憧れる光景ではある。が、明日は朝ご飯をケーキにするぞ!と前日の夜から買っておくことはそうそうない気がする。そもそもケーキは当日中に、と消費期限が決まっているものが多いから、厳密にはなかなか難しいのかもしれない。それと同時に、昼飲みをするときのような行き場のないうしろめたさもほんのりあるとは言えないだろうか。

しかし、罪悪感を全く感じず、かといって特別なイベントとしてでもなく朝ケーキを楽しめるオアシスがあった。豊橋駅前の洋菓子店、「マッターホーン」である。

9時半過ぎに店につくと、喫茶席は満席だった。モーニングでトーストではなくケーキが付いてくることが有名な、50年以上の歴史を持つ人気店なのである。
ショーケースを遠くから眺めながら待つ。朝のケーキ屋というのはいいものだ。めったに朝早く来ることはないが、一番多くの種類のケーキが整列しているのを見られる時間帯だろう。

15分しないぐらいで呼ばれて着席し、グアテマラコーヒー460円を注文。コーヒーと一緒に到着したのはサンレモというケーキだ。ふんわりした生地が横長に丸められ、生クリームがたっぷり絞られている。フォークで切って頬張ると、中から現れたのはバナナとカスタードだ。いわゆるバナナボートだろう、ケーキ屋の物を食べるのが密かな憧れだったのであたりを引いた気分だ。

ケーキに入刀するまでは中身がわからない。それもまたワクワクする。


というのも、ケーキは本日のケーキとして店側が選んだものが運ばれてくるから、何が来るかはお楽しみなのだ。しかもそれぞれのお客さんには違うケーキが運ばれているから、ガチャ要素もある。

ただ、届いたケーキに嬉々として写真を撮ったりするお客さんがほぼいない。皆さも当然といった様子で、スポーツ新聞を片手にケーキをつついている。
さすが豊橋、と言わざるを得ない。モーニングは非日常ではなく、付いてくるものがケーキであってもそれは変わらないのだ。

それでも老舗ホテルに泊まったときのような、建物のレトロな重厚感が作る雰囲気は優雅だ。私も手元で東日新聞をめくりながら、ふわふわのケーキを頬張り、コーヒーをすすって大きな窓の外に目をやってみる。現実離れしない、いい朝だ。

ケーキを食べ終えると、かわいいワンちゃんの絵とご対面。マッターホーンくんだったりするかな…?

近所に住んでいたなら毎日通うかと言われるとそうではないかもしれない。なんにしろ、ケーキだし。でも週一回のルーティンになんてできたらすごく楽しそうだなぁと思う。高確率で知らないケーキとの出会いが待っているだけで豊かな朝になるし、「今週も頑張るぞ!」というエネルギーが湧いてくる。
誰かを連れてきたいような気もするし、やっぱりまた一人で来たいような気もする。そのうちどっちも叶えればいいか。

もちろんショーケースのケーキを買うことができるから、お会計の後に誘惑が待っていることが大変なぐらいだろうか。心ゆくまで味わったはずだけど、買って帰りたくなる。今は旅行中だから泣く泣く諦めたが、「1日にケーキ2つは多いか?…いや、一つは夜食べればいいか」なんて悩める日も近いのかもしれない。豊橋、楽しみだ。



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