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好きな色に逢いに行く。

これほど、「始まりの朝」の実感がないのも珍しい。

7月半ばなのに晴れ間となかなか出会えなくて雨が降りそうで。じめっとした空気がまとわりつく。こんな天気の日には何だか気分も晴れない。

バスを降り、混雑した中を歩いていく。
荷物がじんわりと重い。いつもよりも厳選したはずなのに。きっと「平日だし、何かあるかも」と泣く泣く入れることにしたパソコンや“減らしきれなかった何か”がちょっとずつ積み重なっているせいだろう。

帰る頃には、“使わなかったし、これからもいらないだろう”が増えていることを祈るしかない。旅はいつも心をシンプルにしてくれると信じているから。

抱えきれない荷物は、置いていくしかないのだ。前に進むためには。

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実感がわいてきたのは空港に着いた時だった。たくさんの人がどこかへ向かおうとしている。好きだなあ、この場所も。いまだに搭乗手続きではわたわたしちゃうけど。

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雨と曇の東京を抜け、ようやく青い空と出会う。久しぶりだね、って声をかけたくなる。
薄い雲の間に虹がかかっている。これからきっと青い空になる、その前兆。

飛んでいるはずなのに、確実に進んでいるはずなのに、止まっている気分になるのは飛行機の不思議だ。
さらに上空を別の飛行機が通り過ぎていく。思っているよりも速く、あっという間にいなくなる。ああ、やっぱりちゃんと進んでいる。

空はしっかりと夏の色をしていて、もくもくした雲がいたるところに浮かんでいる。
目線を下に移すと、雲の隙間から海が広がり始めた。エメラルドグリーンのコントラスト。やっぱり夏の海が好きだなあ。

去年は何度もこんな景色を見られていたのかと思うと、今更ながら贅沢な時間だったことに気づく。今でも私の宝物の様に輝いている。

ようやく、感覚がゆるみはじめるのが自分でも分かった。目的地に向かう時のわくわくする感じも好きなんだ。

まだ飛行機に乗っただけだけど、旅に出ようと決めて良かった。色々言い訳をしてしまうけど、旅に出るか出ないか決めるだけなんだな。そこからが全てだ。

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