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兆し3 生まれた物語が導かれる

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1、色に救われる
https://note.mu/mariandtomoco/n/n939549b04142

2、色に救われて物語が生まれるhttps://note.mu/mariandtomoco/n/n6e68f4c06840

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新宿伊勢丹で色を堪能した藤田二郎展。

足取りも軽くなったおかげで、せっかくだからと、伊勢丹3Fをぐるりと一周してから帰ろうと歩く。

すると、同じフロアに、壁一面に白い瓶が並んでいるショーケースがあって、横目で見ると

サンタ・マリア・ノヴェッラ、という一文字が目に入って立ち止まる。

サンタ・マリア・ノヴェッラ。

なんとも美しい音の響きゆえに、覚えていたその名前。

「これって、あの女性作家たちが好きって言ってた香水では・・・?」

20年以上前見かけた雑誌か何かの記事で、女性作家が、一番好きな香水、としてあげていた記憶。

その時、天然の透明感のある匂いが漂ってきそうな紹介に、一度だけでも嗅いでみたい、と思った。

私の人生の9割は本でできている。
NO BOOK NO LIFE.

だから、作家というものを偏愛している。

数年に1度ぐらいの割合で、女性作家がサンタ・マリア・ノヴェッラの香水を紹介する記事を見かけていた。
しかも、ひとりじゃない。いろんな作家が、だ。
それも忘れた頃に、ぽそっと、くる。

まだ嗅いでもいないのに、私の体には、サンタ・マリア・ノヴェッラという音だけが、あこがれだけが、時間をかけて刷り込まれていった。

サンタ・マリア・ノヴェッラは、イタリアにある世界最古の薬局。作り方に独特のこだわりがあって丁寧に作られている、昔から一切変えていない。
なんか、すごそう。すごそう、すごそう。リフレイン。

それがいま、目の前に?

女性作家たちを偏愛するあまり妄想が入り込み、すっかり、サンタマリアノヴェッラは、イタリアにしか店舗がないものだと思い込んでいた。

だから私は混乱していた。

イタリアに行かないと買えないものに今出会った・・・?

混乱しながらも食い入るように、ショーケースの中の説明文を見入っていたら店員さんがやってきた。

「よかったらお試しいただけますよ」

「えっ、いいんですか」

それ以上、ドキドキして言葉も続かずに、

たくさん並ぶ香水の中からもちろん、店名と同じ名の香水、「サンタ・マリア・ノヴェッラ」を指さした。

「はい、もちろんです」

とまだ上げ初めし前髪のようなあどけない店員さんは親切に言い、
香りのついたしおり紙を渡してくれた。

そして私はそっと、20年分の思いを込めて息を吸い込んだ。(おおげさ)

・・・その瞬間なんて、来てみればいつだってあっという間だ。

それは、青く、透明感のある爽やかなトップノートだった。
なにせ、バラの匂いかとずっと思っていた。(ノヴェッラが野バラみたいだったんだ)

違った。すーっとする、緑の初夏の草原みたいな匂いだ。

―ほぉぉ。

私はおもむろに口を開いた。

―これはあの、イタリアの香水でしょうか?

―はい、世界最古の香水と薬局といわれるサンタマリアノヴェッラというお店のものです、

―あの、イタリアからやってきてますか? 期間限定の販売ですか?

―いえ? ずっとやっております。日本に、他にも店舗がありますよ、銀座とか。

―!!!!!

そこから、お姉さんと会話がはじまる。

お互いにサンタマリアノヴェッラを違う形で愛しているという理由で会話が続いていく。

私が初めて買った小説以外の本は「匂いと調香師についての理系っぽい本」だ。

なぜかはわからないが、10代のころ、調香師という仕事に無性に惹かれた時期があった。

香りについて語るとまたそれだけで本一冊分ぐらいくどくなりそうだから置いておくとして、

口を突いて出てみたらもう止まらない気配で饒舌になってきた私の質問攻撃に応えていたお姉さんは、よかったらこちらを、といって、サンタマリアノヴェッラの商品一覧が乗った紙をくれた。

商品一覧は、上質紙に印刷されたメニューのような面持ちだ。

是非銀座店に行ってみてください、扉を開けた瞬間から、独特のいい香りがしますから、本当におすすめなんですという、お姉さんの言葉添えで、店を出るタイミングを知る。

いやー、なんだなんだー、日本にあったなんて。20年も待たなくてよかったけど今知れて嬉しいわー。

たくさん出してもらった香りの付いた紙のしおりやコットン、そしてゴージャスな商品一覧をほくほくした気持ちで、大切に持ったまま伊勢丹のショーケースの前を後にした私は、そのまま世界堂に足を運んだのは前述の通り。

それから家に帰って、気持ちの高揚した勢いで、noteに2つめのエッセイを書いた。

そのときサンタマリアノヴェッラの商品一覧は、机の上にぽんと立てかけておいた。

数日後、ふと、その商品一覧に目をやった。気が付かなかったが、そこにあったのはNOTAの文字。

NOTA? 

NOTA?

二度見した。

これってもしや・・・。

検索したら、NOTAはイタリア語で、noteって意味と出てきた。


真っ先に、ユングの施術中の逸話、シンクロニシティ、という言葉の由来になったエピソードをうろ覚えに思い出した。

治療が進まずにいた女性が、コガネムシの夢の話をしている間に、その部屋の窓枠にコガネムシがぽつっとぶつかってきた。

そのコガネムシを女性に見せたことで、治療は一気に改善方向にすすんだという話。


noteに書こうと思ってタイトルだけのファイルが並んでいる。
が、まだまだ自分の文章を投稿するのは内心怖い。だから、タイトルから先、noteを書く手が止まっていた。

仕事が波のようにやってきたのでという理由をつけてnoteを後回しにした。いつもの癖だ。

ただ書き始めればいいだけだ。やりはじめると、やる気が出る。

怖いことって、たいてい、結局やってよかったことになっていく、と体は知っている。

NOTAは、noteで、コガネムシ。

そういえば、ユングのずっと延長線にある仕事も2月末から始まるかもしれないんだった。意味なんていつも後付けでも、二重、三重って見つかってしまう、見つけようとすれば限りなく。布石はいたるところに落ちている。

石を拾ってばかりいないで、noteを書こうと思った。そして今日、こうして書いている。

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