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6年生で現役で卒業、国試まで進めた理由

私は6年間歯学部で学び、117回歯科医師国家試験を受験し、今結果発表待ちです。採点サービスの結果、昨年の合格点と大きな変動がなければ合格しているだろう、という得点率でした。必修は93%でした。
私立大学における、入学時からのストレート合格率は決して高くありません。
まだ合格発表はされていませんが、合格したと仮定して、歯学部をストレートで卒業、国試受験するには何が必要なのかを考察しました。

私立歯学部入学まで

エスカレーター式大学付属校を卒業後、私立大学歯学部に入学しました。
一般で入学しましたが、国立歯学部を不合格になったため、不本意での入学でした。もともと理系で、センター(今で言う共通テスト)の選択科目も倫理政治経済、学校の選択科目は日本史(家系図と年号が一切覚えられず、後に捨てる)、理科は生物と化学選択でした。
理系科目のように、最小限の重要事項の理解と、トレーニングによって重要事項を応用していく科目、手を動かす科目が大好きでした。
一方、単純暗記が大の苦手で、必ず理屈を理解して、納得しないと暗記すらできませんでした。

暗記の壁にぶつかる、成績下位者へ

先述の通り、私は丸暗記がびっくりするほどできませんでした。
最初の壁は解剖学の口頭試問でした。
私は部活を1年でやめて、資料に乏しかったことと、神経や動脈の役割も完全に理解しないまま、解剖を暗記するのは非常に困難でした。
おまけに体力がなかった私は、暗記事項を講義されると睡魔に襲われ、余計理解しにくくなる悪循環に陥りました。
そして、歯の解剖、組織では〜が〜間隔で、などと暗記することが多く、しかも歯の構造、発生に微塵も興味がなかったので当然勉強は進まず。
反面、病理学などは、代表的な像を覚えて鑑別していくという、最小限の暗記→応用の流れにより得意でした。
3年生では衛生が台頭し、打ちのめされました。衛生は暗記して理解への第一歩的な側面があり、暗記して知識量が一定の水準に達しないと知識同士を繋げることすら困難な場合があります。
1年、2年、3年と進むにつれ暗記(が避けて通れない)科目が増え、3年時にコロナで長期間自宅学習になったこともあり、自己管理能力に乏しかった私はみるみる成績が下降しました。1年の学年末では5位以内だった成績も、3年生終わりには上中下のうち下の上くらいの成績でした。

再試験で身についた基礎力(1、2、3年生)

こんなに暗記が苦手で、なぜ進級できたのか。
それは一重に、奇跡的に科目試験に受かることがなかったからだと思っています。
私の学校は、科目試験に本試、再試があり、再試不合格の場合特別再試が場合により行われますが、基本的に再試までで合格しないと留年することになっていました。
苦手科目は全て不合格となり、補講を受けて再試験で合格しました。3年生までで8科目以上は引っかかってきたと思いますが、引っかかりすぎて覚えていません。
補講では授業とほぼ同じか優しめの内容を、物分かりの悪い子(私)でもわかるように丁寧に講義してくれました。
放課後には苦手科目の実践を図書館で解いて、答えのパターンを付け焼き刃で必死に叩き込みました。再試に落ちると留年するので、本試験より本気で勉強しました。その結果、本試験でゆるく(余裕というわけでもなく)受かった科目より知識量、解き方が身につきました。
また、講義自体同じことの繰り返しなのと、本試験で出題のされ方を知ったので自然と暗記へのハードルは下がりました。
再試験になっていなければ二度と真正面から向き合うきっかけはなかったと思うくらいです。
得点率85%未満で受かってしまった科目こそ、一番危険です。
最低基準しかクリアしていないのに、その科目をマスターしたと錯覚してしまうからです。

4年生で本気出す

数えきれないほどの再試験にかかりながらもしぶとく生還を果たし、無事4年生に進級した私ですが、なんと新学期早々、3年生時点での成績不振者ということで、学校にマークされ成績相談に呼び出されることに。
劣等生としての人生歴が短く、プライドだけ無駄に高かった私は、他の不振者とともにみんなの前で呼び出しを受けることにとてつもない羞恥心を覚えました。
ここで、火がつきました。
4年生で成績上位者に返り咲いて、cbtも高得点で受かって、見返してやる。
もう、あの子頭悪いとか思われたくない、と思いました。
4年生からは授業毎に毎日復習を徹底し、小テストも気を抜きませんでした。科目試験は全科目本試験で合格しました。
学内のcbtの受験資格試験でも、10番以内には入れるまでになりました。
4年生では臨床系科目が入ってきて、単純暗記の割合が減ったことも関係しているのかも知れません。
cbt本試験では85%をとることができました。

cbtで身についた基礎力で5年生を駆け抜ける

cbtの得点と国試の合格率には相関関係があると聞かされていました。
実際、cbtを受け終わって5年生に進級し、周りを見渡すと周りよりも理解が進んでるように感じました。
ここで、第二の壁が現れます。
5、6年になって校舎がだいぶ遠くなり、通学時間が伸びたこと。
日中は診療補助、実習をし、朝夕は講義を受けるので家での自習時間が長くはとれないこと。
慣れない診療、クリレコ巡りなどによる肉体的疲労。
自分の理想の勉強時間、環境を確保出来ず、じわじわと同級生に追い抜かされるのがわかりました。それでも、上位3分の1以内には絶対踏み留まるようにしました。
私は勉強時間が満足に取れない中で、cbtの成績に大いに助けられました。
5年生は実践の全科目が試験の出題範囲で、短期間にその量を完全にさばくのは、基礎学力がないとなかなか難しいです。
実践を解いて初めて学ぶことは数多くありましたが、解説を読むにしろ、授業の復習をするにしろ、最低限の情報が頭に入ってるからこそ、全体像も見えてきたし、用語を全部が全部調べなくてもよく、時短になりました。
勉強時間としては、朝晩の通学時間(疲れ果てて寝ることが多かった)、診療、実習の合間(最大6時間くらいで、診療や実習のない日は朝の授業後に3時間勉強、その後技工や急患対応、クリレコなどに時間を取られたり、場合によっては学内では勉強できない週も多々あった)、帰宅後約1.5時間(疲れてできない時、課題でできない時もあった)という具合で、4年のときの3分の1くらいしか確保出来ませんでした。
国試まで2年あること、勉強を自主的にやらない場合自由時間が多く発生することから、5年生は油断しがちです。
ですが、5年生でも気を緩めず常に上位に食い込む努力をして踏ん張ったからこそ、6年生で本気で戦うための兵糧づくりができました。
5年生の怖いところは、cbtを終えて自信がつき、なんとなくこのまま国試も受かりそうな気がすることと、周りで血相を変えて勉強する(姿を見せる)ひとがほぼいないこと、努力が足りなくて6年生で戦う土台ができていないのに6年生に進級できてしまうところです。
最悪のケースは、臨床実習を知識、理解不十分なまま受け、なんとなく試験をパスし、6年生に進級することです。

臨床実習で身につけるべきこと

臨床実習では、上級医の監督のもと診療を行なったり、見学したり、補助を行ったりします。
参加するにあたって意識することは2つあります。
まず一つ目は、診療内容でわからないことがあればDr.を捕まえて解決すること。
2つ目は、実習中に上の空にならないように頑張ること、です。
この2つをどれだけ意識できたかで、6年生の自分の未来が変わります。
どんなに簡単なことでもいいから(なぜこの操作後は水洗しないのかなど)診療中、実習中の疑問点は必ず納得するまで質問してください。簡単なことが実は深い理由があったり、国試で重要だったりします。Dr.も通ってきた道ですから、まともな先生であればそれを笑うことはありません。また、自分で調べるより時短になります。
そして、実習中に意識を飛ばさない。同じ作業の繰り返しだったり、長時間立ちっぱなしでヘトヘトだったりで集中力が途切れることがあります。もちろん、手順や口腔内などの様子を目に焼き付けるために集中すべきという面もありますが、その退屈だったり、疲労で意識が飛びそうな状態は、6年生の国試勉強、あるいは国試当日の自分の状態の疑似体験なのです。
100%の集中力じゃなくても構いません。ただ60%は下回らないようにして、100%上の空ということがないように頑張りましょう。
人は急には極限条件でも頑張れるようにはなりません。

各学年で気をつけたこと

4、5年生で下剋上したような話になっていますが、4、5年生で逆転できた理由もあったと思っています。
極端な不得意科目は全て再試験にかかり、死ぬ気で再試験勉強をしたこと。
病理学、生理学、組織学、細菌学などを好んで勉強したこと。
丸暗記が苦手なので理解して結論をだせることはあえて暗記しなかった(応用力が高まり、実力試験で強かった)
周りの雰囲気にのまれなかったこと。
自分の成績を悲観せず、ポテンシャルを信じ切る。
などです。
また、好きな科目はレジュメの理解、教科書調べ、実習などに前向きに取り組み必然的に勉強量も確保されていました。
苦手科目は、苦手だと思う原因を分析しました。たとえば、単語が見慣れなくてイメージ湧かないなど。
そして、学年末には全範囲のテストがあり、そこでも気を抜きませんでした。
科目試験が終わり、解放感に溢れる中、毎学年、進級にはさほど影響しない最後のテストに向けて全範囲に触れることを繰り返す。そこで踏ん張ってきたのは大きいです。

6年生

5年生の1年間で、全教科の実践は解き終え7割方理解していました。
しかし、国試の前には卒試があります。
卒試には公式の過去問があり、3年分購入しましたが、ちょっと解いてはやめるくらいで、卒試の一つの本試験に落ちるまでは本気では取り組んでいませんでした。
春休みの3月、国試対策を始めた時YouTubeのdentalkokushi様に出会い、1ヶ月ですべての動画を視聴しました。ここで、国試合格に必要な知識のレベル、難しく思考しすぎてはいけないことも学びました。
4月から、国試の10年分を解くことを目標に掲げ、dental youth share に掲載されている国試過去問を、とにかく自分なりに考えながらさばく練習をしました。
その日に解いた項目は簡潔に自分で説明できるように紙にメモしてかんがえたりもしました。
6年生は前半のメンタルが大丈夫なうちから本気で取り組むのが大事です。また、早いうちに過去問研究をスタートすることで、時間の余裕、経験値の蓄積によって弱点は補強可能です。1年もあれば、少しの基礎学力がついていれば、6年生で知識の補強をしながら国試突破の力をつけることはできます。
卒試は国試とは別者で、レジュメの暗記大会、過去問の分析勝ちのような側面があります。卒試に全力を注いだから、秋頃まで国試対策がおろそかになる、というような事態は避けたいものです。卒試は合格ラインまで頑張って、余力は国試の過去問研究にまわす、もしくは卒試に余裕があるのであれば過去問研究を優先するのも手だと思います。国試の過去問研究は結果的に卒試での実力を引き上げることも起こり得ますが、卒試は必ずしも国試の役に立つとは限りません。

まとめ

6年生での卒試対策にどれだけ時間を割かなくてすむかが現役合格では重要です。
卒試対策までに基本事項が頭に入っていれば、パラパラ見てこんな感じなんだな、というだけで残りは国試の過去問研究をして、国試の万全の準備ができます。
卒試でいっぱいいっぱいになっているとかなりハードな戦いになります。
6年生が始まった時点で、ハンデは存在するのです。

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