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#1 『Tokyo(etude ver.)』について 【中編】〜黒く潰した便箋と、花〜

9/10に公開した1作目『Tokyo』についての続き。
3つの編の中で、一番重たいし、ここで初めて表に出すこともたくさんです。


▼記事の【前編】はこちら


黒く潰した過去たちは

テーブルの上の黒く滲んだ便箋には、私にしか読めない文字でこんなようなことが書いてありました。

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私は恵まれた家庭に生まれた
夢はバレリーナで
サウンドミュージックが大好きで
一人で遊ぶのが好きだった
弟が生まれた 父は病気になり 家からいなくなった
私はオーボエを吹くようになった
音楽が私を守った
誰もが私に未来があると言った でも違った
私は続きを放棄して 勉強して東京に出た
まっさらな自分に、東京はあまりにも鮮やかだった
弟に障がいが見つかった
東京に逃げたまま 事情もあるし就職した
音楽から離れられなくて バンドを始めた
2つのバンドを手放して そして一人になった
世界は変わって 芸術家たちは迫害されて
問題は山積みで
そう、私たちは生きにくい
仕事の責任は大きくなる一方で
"本当にやりたいこと" への想いはどんどん強くなって
そして、


黒く滲んでも続いていて、書きかけの物語。
自分の手でちゃんと続きを書いていくために、ここまで物語をざっくり書き並べました。

人生は物語である。


滲んだ便箋が "花" になるように


最初の記事にも書きましたが

過去や現状から目を逸らさずに、向き合って、物語を続けていく。
過去に点在する"伏線"を回収して、ポジティブな続きを書いていきたいのです。


・クラシック、音楽

過去に(青二才の高校生の自分が)色々な体験をして、クラシックなんて堅苦しいものクソ喰らえ、と思ってました。でも今は違う。
全ての基本であり根源であり、そこから何者にもなれるって、いろんな音楽家たちに気づかされたのです。だから自分の過去を大切にしたいし、活かしていきたい。

だから「バンド」じゃなくて、もっと広く「音楽」に向き合おうと思います。そして私が本当に好きな「音楽」を、ちゃんと形にしていく。
劇伴とかもやりたいです。

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・絵画や舞台芸術

幼い頃、両親にはたくさんのものを与えてもらったと今になって思う。
よく行っていた美術館、見せてもらったミュージカルや宝塚、バレエ。
奨学金で通っていた大学時代も、「お金のせいで見たいものが見れないのは良くない」と両者色々配慮をしてくれていました。感謝。

今みたいなアンテナはないから(東京に出て、感性の面では生まれたての赤ちゃんみたいだった)そこまでたくさん観れてはいないけれど、森山未來の「100万回生きたねこ(2012年)」は、思えばかなり今の自分に繋がっている大きな作品。
↓この記事にも繋がってる

そして時は経ち、2018年以降演劇熱の到来(三文オペラのせい)、踊ってみたりもするようになり、絵画などの芸術にも改めて興味が出てきたり、で、現在に至るわけです。
思い返せば繋がってるし、これからもっと繋げていく。


・アール・ブリュット

最後のシーンの花は、滲んだ便箋を元に、弟(10歳年下)に依頼して作ってもらったものです。

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彼は自閉スペクトラム症で(ちなみに私も診断したことないけどグレーゾンだと思っている)特殊技能をいくつも持っています。
彼の場合、その強みが存分に発揮される一つが「創作折り紙アート」(設計から全部自作、ハサミものりも使わずでかい紙一枚で作ります)

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右写真出典:http://zawameki-art.com/

彼らには、すごく緻密なものを生み出す能力があって(人によって特性は様々みたい)、そして生きるために作っている(ライスワーク的な意味でなく、心のためだったり、生きる意味をもつ、という点で)。
それを"特殊なもの" "腫れ物に触るようなもの" としてではなく、普通に"美しいもの" として使っていきたいし、認識してもらえるようになりたい。
そう思って、まずは自分の作品に起用してみました。

ちなみにゴッホもアール・ブリュットに分類されるとか。

※彼が入選した長野のアート展があり、その解説動画を見ていたのですが、私が普段から美術展や音楽・舞台芸術に触れて感じていたことを、ここで美術家の方も言っていて「やっぱりそうだよね〜」と思ったので載せておきます。境界などなく、これがアートのデフォルトなんだよね。



あと、このようなことをやろうと思った最初のきっかけは、「ヘラルボニー」というブランドに偶然出会ったことでした。
ハッとするような美しさ、そして理念が最高。自分自身生きる希望をもらったし、弟に紹介したら目をキラキラさせながら絶賛してた。一緒に選んで母の日にスカーフをプレゼントした。

めちゃめちゃ素敵だから見て。

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※これは自分用のお気に入り。これからヘラルボニーとも関われるといいな。
※【追記】この記事から7ヶ月後、22年4月から、まさかのヘラルボニーに入社しました!!



明確な障がいだけじゃなくて、色々な面で"はぐれもの" "普通じゃない" に少しでも当てはまる人たちのために芸術はあると思っているし、
そんな似たもの同士のための場所を、将来的には作っていけたらいいなと思っていたりもします。


こうやって、これから先の活動を通して、滲んだ過去の便箋から美しい花が咲くように、物語を綴っていきたいと思います。

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後編へ続くよ。



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