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腕時計 と 愛の記憶

腕時計がゆるくなった
ベルトの金具をひとつ分短くしようか悩む
すこし、痩せた

時計のベルトの余分をつまみながら
頭に浮かぶのはおばあちゃんの笑顔
あれはちょうど、あの子が痩せてるとか太ってるとか
可愛いとか可愛くないとか
人気者だとかそうじゃないとか
そういうことが気になりだした頃だった

わたしは昔から肩凝りがひどくて
おばあちゃんはわたしの肩をよく揉んでくれた
書き間違いではない
おばあちゃんが、わたしの肩を、揉んでくれた
それでもおばあちゃんは嬉しそうに孫の肩を揉み
孫はその時間が大好きだった

肩を揉み、足も手もついでに揉んでくれる
わたしはソファにごろっとよこになって
おばあちゃんはその横にゆったりすわって
わたしが嫌がるのをしっていながら足の指の関節をぽきっとならす

そのまま親指と人差し指でわたしの手首をぐるっと掴むと
わたしの体重をぴたりとあててみせる

ちょうど自分がすこし太っていると感じていた頃
周りの華奢な女の子と比べて自分に自信がもてなかった頃

おばあちゃんはその数字をいいとも悪いとも言わないで
手首を握ると体重はだいたいわかるのよと笑う

わたしがもっとも、安心できる場所のはなし


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