正直自分が、いちばんしたくない話をしてみる。

2年前に上司がチャットで、私に1つのURLを送ってきた。とくになんの説明もなしに。

https://togetter.com/li/1055116

「何だよ、何も言わずに….。」と思いながらひらいて、内容を読んで思わずギクリとしてしまった。

人は楽しい時や幸せな時でなくても、自尊心を守るために笑うことがある。

結局、上司にはお礼も何も返せずに、後から送られてきた他の仕事の話によって、そのURLはチャットログに埋もれていった。

先日、この一連のツイートをしたたらればさん本人が、このURLの内容について言及していた。タイムラインにあがってきたそれを、久しぶりに読んで思わず涙が溢れてきた。



私は、中学生時代にあまりいい思い出がない。

教室に入ると、陰口やクスクスとした笑い声がまず聞こえる。
移動教室から戻ると私の机だけ不自然な位置にあったり、逆さまに倒れていたりする。
更衣室に呼び出されて、クラスの女子から怖い言葉を浴びさせられることもあった。

人の悪意をむき出しにされるのは、怖い。
私が出て行ったドアに椅子が投げつけられる音は、今でも忘れられない。


みじめだった。
辛かったり、悔しかったり、同級生たちを恨む気持ちもあったけれど、それ以上に自分がみじめで仕方なかった。

“まったく楽しくない中学生活”を送っている自分を認識するのが、悲しかった。


私は、同じ中学から誰も通う人のいない高校に進学した。
家から少し遠いけど、近くに広い河川敷があって、ドラマの舞台みたいな、都会から離れたのどかな学校だった。

高校生活は、中学の時と比べものにならないくらい楽しかった。

クラスは男女ともに仲良く、みんなあだ名で呼び合った。
毎日たくさん笑った。お腹を抱えて、ひっくり返りそうになるくらい笑っていた。
学校に来るのが楽しみになった。

でも、ときどき、笑いながら自分の心に再確認することがあった。

「楽しいよね?」
「今、私みじめなんかじゃないよね?」

「楽しいよ」「みじめじゃないよ」
心がそう答える度に、私の笑い声は、いっそう大きくなった。

クラスの中でいつからか私は「どんな時でもずっと笑っているやつ」になっていった。
とにかくヘラヘラしていたり、いつも楽しそうにしていたら、他人から「可哀想なやつ」とは思われないだろう。

これが、想像以上にうまくいった。高校時代はいつも笑っていた思い出しか、残っていない。

私は生きる術を学んだ、と幼いながらに思った。
しかし、この術は想像以上に厄介で、その後の私の人生から「素直さ」を奪ってしまった。


その場だけで思いついた冗談を言ったり、うるさく騒いだり、怒られてもヘラヘラしたり、悪びれなかったり。
そうすることで、他人にみじめに思われる状況から自分を救うことができた。大学に入っても、社会人になっても、そうやって過ごしてきた。
一旦そうすることに慣れてしまうと、それはもう身体に染み付いてなかなか取ることができない。

やがて、感じる感情をそのままに表現することが、難しくなっていく。
悲しい!とか、傷ついた!とか、恥ずかしい、とか。

「そんなこと言ったら、可哀想に思われるんじゃないか」
「こんなこと言ったら、私がみじめに見えちゃう」

頭で考えてしまうと、素直に感情が口から表現できなくなる。

そうやって、素直な心をなくしていった私は、だんだんと人と信頼関係を結ぶのが苦手になっていった。偽りのない信頼関係は、素直な言葉でしか結ぶことができないからだ。

大人になった今、やっと自分自身にかけていた自己防衛の呪いの正体に気づくことができた。それを、解きほぐしながら気づいたことがある。それは、本当に今さら過ぎる気づきだった。

本当の本当にみじめなことというのは、楽しくもないのに笑って、それが本当に楽しそうに見えてしまうことだ。
心の中は悲しみでいっぱいなのに、それを押し殺して笑っている顔を、本物の笑顔だと誤解されることだ。

そうやって、生きづらさを心の中にすこしずつ溜めている人が、きっと今でもたくさんいるんだろう。


そんなことを、泣きながら、たらればさんのツイートを見て考えていた。


私が気づくよりも前に、私の中の呪いに気づいていた上司から送られたあのURL。2年前は、一言も返信できなかったけど、お礼の代わりにこのnoteを書いてみた。

楽しくもないのに自分を守るために笑っている人、そうやって自分の心からすこしずつ素直さを欠いていってしまった人、その人たちが少しでも自分の感情や、思考の輪郭を掴むことの助けになったら嬉しい。私が、たらればさんのツイートで、それに気づけたように。

誰もが、心のそこから曇りない笑顔をもつことができますように。



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まりも

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