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【旅】京都でサスティナブルな金継ぎ体験

うつわの割れや欠け、ヒビを、漆を使って修復する金継ぎ。昨今はホームセンターなどで「なんちゃって」金継ぎキットも売っているが、今回体験したのは本格的なもの。
宿泊したRAKUのオプションメニューで見つけました。
平安堂という、大徳寺の門前に居を構える店。漆芸修復士の清川廣樹氏の工房で体験します。


金継ぎの全工程は
①生漆に米粉を混ぜた接着剤を作り、欠けた破片をくっつける。
②生漆に鉄粉を混ぜた黒漆で繋ぎ目を覆う。
③赤い鉱石を混ぜて作った紅殻漆で黒漆に上に模様を描く。
④紅殻漆が半乾きになったら、金粉をふりかけ覆う。
⑤余分な金粉を筆で払い、残った金粉は絹の綿でやさしくなぞって落とす。
⑥乾いたら表面をサッとテレピン油で拭き、光沢を出す。
それぞれの工程の間に、ムロとよばれる杉でできた温度と湿度を最適に保つ箱に入れ、乾かす。だいたい1週間くらい。
だから本来は、ひとつの金継ぎ作品を作るのに、5〜6ヶ月かかる。
でも、体験メニューでは、金継ぎのハイライトと言える③④⑤をやります。
そばちょこの一部に逆三角形に黒漆が塗ってあります。
そこに赤い紅殻漆で好きな模様を書き、ムロで少し乾かし、金粉を塗り、余分な粉を払って完了。
仕上げは数日置いて乾いたら、工房の方が行って、出来上がりを宅配便で送ってくれます。


文にすると数行だけど、最初の説明から始まって、漆の木を見たり、筆の使い方(たぬきの毛でできた面相筆)を習ったり、先生の作品を見たり、黒地に赤い紅殻漆で模様を書いたり、これから直す器を見たり、紅殻漆が乾くのを待ったり、コーヒーを飲んだり、金粉を塗ったりと、約2時間の工程。
そばちょこに塗ってある黒漆の面積は小さく、面相筆は細くて柔らかく扱いにくくて、線を引くのにひと苦労。
ボタニカルアートをやっていた時は、しょっちゅう面相筆を使っていたけど、もう30年くらい描いてないから思い通りに動かせない。
金粉も、紅殻漆を覆うように、筆にすくってふわっふわっと落とさないとならず、でも一番緊張するのは、その余分な金粉を表面に傷を付けずに筆で払い落とすこと。
ここで失敗したら、一旦紅殻漆を拭き取って一からやり直しだから、全集中しましたよ。
最後に絹でできた綿で表面をなぞって完成。
紅殻漆の厚さもちょうど良く、黒漆も程よく残って、なかなか上手くいきました。


上手に直せば、100年200年持つという漆。金継ぎは、一度壊れてしまったものに新たな命と価値を与えるものとして、今見直されている技術だそう。
海外からも注目されていて、イギリスのBBCが番組を制作したり、パラリンピックの閉会式ではパーソンズ会長が金継ぎの観点から、不完全さとの調和と多様性に言及したりしたそうです。
本格的にやったら楽しいだろうな。東京と京都にお教室もあるそうなので、興味のある方はぜひ。


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