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どうしているかと気になる人

ふとした時に思い出す同級生がいる。

私は私立の中高一貫の女子校に通っていて、高校は音楽科に進んだ。
専攻はチェロ。

その同級生のことは、中学の時から知っていたけれど、高校になってはじめて同じクラスになった。
彼女の専攻は声楽だったけれど、ピアノも上手で、ピアノ科に進むこともできたくらいだったと聞いている。
でも、声がとても美しかったから声楽科に進んでよかったんじゃないかな、と個人的には思っている。

三年間クラス替えがなかったにもかかわらず凄く親しくはならなかった。
でも、共通の趣味があり、帰る方向が同じだったこともあって、SF小説が好きだった彼女と、新井素子と平井和正の小説を貸し借りっこしたりしていた。
(私は実は新井素子はそんなに好きというわけではなかったけれど、流行っていたのでなんとなく読んでいた‥)

他にも、彼女は萩尾望都さんの「メッシュ」シリーズや、「モザイク・ラセン」の豪華なハードカバー版を貸してくれたので、代わりに私は毎月購読していた伝説のBL雑誌「JUNE」を教室で誰にもみつからないようにこっそり貸してあげたりしていた。

とにかく、彼女は萩尾望都さんが大好きで、高校一年の時に文化祭で「ポーの一族」のミュージカルをクラスで演じることになり、その時の配役決めでは、エドガーは絶対に自分が演る❗️誰にも渡さない‼️と彼女の中で熱い気持ちが燃えたぎっていた様子を思い出す。

私が本格的に萩尾望都さんのことを好きになったのは彼女の影響によるところが大きかったと感じている。

彼女はイタリアオペラのような、当時はこんな言葉はなかったけれど、"女子力の高い"大袈裟な歌いまわしをすることを嫌っていた。
師事していた先生はドイツリートを専門にしていた方だった。
同じように大袈裟なイタリアオペラを嫌っていた、ボーイッシュな雰囲気の声楽科の友人はイタリアオペラを得意として、関西二期会でタイトルロールを歌うような先生に師事していたために、たいへんな苦労をしていたことを思うと、彼女は先生に恵まれ幸いだったのだろうと思う。

彼女の声はボーイソプラノのように透き通っていて、控えめで奥ゆかしかった。「ポーの一族」の劇中でエドガーが歌った、中島みゆきの「砂の船」。


誰か 僕を呼ぶ声がする
深い夜の 海の底から
目を 開ければ窓の外には
のぞくように 傾いた月

僕はどこへゆくの夢を泳ぎ出て
夢を見ない国をたずねて
いま 誰もいない夜の海を
砂の船がゆく

望むものは何ひとつない
さがす人も 誰ひとりない
望むほどに 消える夢です
さがすほどに 逃げる愛です

月は波に揺れて 幾百 幾千
古い熱い夢の数だけ
いま 誰もいない夜の海を
砂の船がゆく

月は波に揺れて 幾百 幾千
古い熱い夢の数だけ
いま 誰もいない夜の海を
砂の船がゆく
いま 誰もいない夜の海を
砂の船がゆく
ただ 誰もいない夜の海を
砂の船がゆく

(詞:中島みゆき/砂の船)

少年を演じる少女の歌声は、少年のように澄み切っていて、思春期の硝子の心を表現していて、とてもせつなく、美しかった。
とても繊細な心を持っている人だったから、なんとなく気軽に話しかけづらかった。音大に入って、彼女が中学から師事していたピアノの先生に私も教わることになりピアノの門下は一緒になったのだけれど、二人とも副科だったこともあり、そんなに交流はなかったなぁ。

私は大学に入ってからはレッスン、オケ、室内楽、演奏のバイト、南海グリル(大阪堺にある鉄板焼きステーキハウス)のバイト、子供に教えること、などで遊ぶ暇もないくらい忙しくなり、同じ管弦打専攻以外の人とは伴奏者やピアノトリオメンバーを除くと、あまり交流がなくなり、高校時代のように一緒に帰ったり、話をしたりすることは極端に減ってしまっていた。

どうしているかな、N.Nさん。

久しぶりに萩尾望都さんの「メッシュ」文庫版を読んでいたら、N.Nさんのことを思い出しました。

#萩尾望都
#メッシュ
#高校音楽科
#文化祭でミュージカル
#ポーの一族
#砂の船

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まりん

まりんです。日々想うことをつれづれなるままに。エッセイ、イラスト、漫画、小説など。

まりんの日々想うこと。

日々想うことをつれづれなるままに。
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