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私家版・プロ野球ユニフォーム史 番外編 広島東洋カープ・ファンクラブユニフォーム

・広島東洋カープのファンクラブについて

 NPB12球団にはそれぞれのファンクラブが存在する。当たり前のようであるが、本格的な事業としてしっかり整備されたのはここ20年ほどの間のこと。ノンフィクションライターの長谷川晶一氏による著書「プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた!」はファンクラブの歴史をひもとく貴重な資料となっている。

 広島東洋カープのファンクラブはシニア・レディース・ジュニアなどの会員制度はあったものの、どの世代でも加入できる一般用のファンクラブが創設されたのは2007年。他球団と比較してやや遅いタイミングであったが、その遅れを取り戻すかのようにまずグッズ展開で存在感を見せつけることになる。特に、旧広島市民球場からMAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島(マツダスタジアム)へ本拠地を移した2009年以降、多種多様なグッズを矢継ぎ早に発売。そのラインアップはまさに「揺りかごから墓場まで」を地でいく幅広さ。プロ野球が生活の一部である広島の暮らしを支えていると表現してもよいだろう。

・カープのファンクラブユニフォームの歴史

 さて、ここからが本題。ファンクラブには入会特典としてユニフォームが配布されることが多い。カープも同様なのだが、毎年このデザインがかなり凝っている。ユニフォームという概念から愉快に逸脱している年もあった。この項では、そんなカープのファンクラブユニフォームの歴史を追ってみることにする。

 まず2007年。真っ赤なユニフォームに白いラケットラインと袖のライン、それに胸にはCarpのロゴ。いたってシンプルながら球場のスタンドで着用しても通常のレプリカユニフォームと遜色ないデザインであるため、ファンの心をくすぐるものであった。
 この赤で塗り固めたカラーリングが、2009年からのビジターユニフォームのデザインに影響を与えた可能性も考えられる。

 翌2008年に配布されたのは、なんとタンクトップ。一応、ボタンによる前開きのデザインなので「ユニフォーム風」ではある。しかしちょっとスタンドでは着づらかったのではないか。いや、夏の蒸し暑い旧広島市民球場ではこれくらいでちょうどよかったのかもしれない。

 2009年に登場したのは、この年から刷新されたホーム・ビジターのユニフォームを半分ずつに切ってつなぐという、当時は他に類を見なかったデザイン。右半身がホーム、左半身がビジターであるためロゴの見え方から「Caoshimaユニフォーム」などと称されていた。この大胆さが大いに注目を浴び、いよいよ「どうやらカープのグッズはとんでもないらしい」というウワサが球界を駆け抜け始めた年でもある。
 余談ながら、文頭に名前が出た長谷川晶一氏がファンクラブを語る際に着用する「正装」がこのユニフォームである(さらにイーグルスのファンクラブ特典だったMr.カラスコのマスクをかぶるところまでがワンセット)。

 2010年は赤地にグレーの袖。この後に紹介するユニフォーム群の中に入ると地味な部類となるが、左袖と背中に地名が入っているのがポイント。

 2011年がまた大胆である。2009年とは異なるホーム・ビジターの組み合わせというべきか、袖を含めた上半分から右脇にかけてが赤、それ以外の下の部分が白。わざわざ襟付きになっているので、よく見てみると広島の「広」をデザイン化したものではないかと推測されるが、いかがなものだろうか。

 2012年は肩から胸にかけてが赤、そこから袖や裾にかけては白になるグラデーション。これまたホームとビジターの組み合わせのようなカラーリングである。

 2013年はHやCarpなどの球団ロゴが大きく散りばめられたデザイン。ほんのりとMLBを意識しているようにも感じられる。

 2014年は一気に派手モード。Carpの特大ロゴが前面から背中にわたって主張。その中に選手たちのプレー中の表情が散りばめられているという、非常に斬新なデザイン。この時期は各球団のユニフォームへのプリント技術が一気に向上した時代。遅ればせながらカープもファンクラブユニフォームに取り入れてみたというわけだ。

 2015年は選手のシルエットを模様に仕立てたデザイン。どれがどの選手をモデルにしているか、考えながら着用するのもなかなか楽しい。

 2016年はカーディガンのような素材。原点回帰するかのように赤で塗り固め、1988年までホームユニフォームで使用された花文字のCARPのロゴを採用。その下に「Think RED」の小さな文字。黒田博樹が登場曲として使用したB'zの“RED”を思い出させる。ボタンが黒になったことで引き締まった印象を強めている。目立たないがポケットもついている。

 2017年は赤とグレーの組み合わせだが一筋縄ではいかない。グレーの部分はCarpのロゴ、袖、そしてフード。そう、ユニフォームなのにフードつきなのだ。おまけに前年に続きポケットまである。タウンユースを意識してのデザインだろうか。

 2018年はCarpのロゴの左半分と左袖に赤のストライプ、ロゴの右半分と右袖に紺のストライプが入るという、ちょっと入り組んだデザイン。ところが胸に入る「'18 Fan Club」のロゴが「'18 Fun Club」とスペルミスしていることが発覚。
(カープを楽しむ人々の集まりと考えるならば「Fun」でもあながち間違いではなさそうなものだが)

 そこで球団はお詫びの品として新たなシャツを用意して会員へ無料で配布することを決めた。赤地のペイズリー柄の模様が入り、さらに濃い赤色の袖とCarpのロゴの中には花柄が飾られた。ロゴの下にはカープ坊やの目が光る。何やら高級なじゅうたんのようでもある。なお背番号「'18」が入っている。

 2019年になると突然シンプルなコットン素材の「ヴィンテージスタイル」に。ラケットラインと袖のライン、それにCARPのロゴは赤く細いタイプ。MLBのユニフォームの、さらにオールドタイムなイメージ。ボタンではなくジッパーで前開きになるのも特徴。

 2020年のデザインはスタジアムジャンパー風。ボタンも通常のユニフォームとは異なり、いわゆるスナップボタン。アメカジと表現すべきか、しかし半袖なのでこれもユニフォームといえばユニフォーム。

 2021年になるともはやユニフォームというよりシャツ。襟もついてるし胸にはポケット。グレーのストライプで袖口の裏にはCARP FANCLUB 2021の文字が並ぶ。背中に入るカープ坊やのイラストは、配布されるユニフォームによっては数量限定で種類が異なる。つまり単独の加入ではコンプリートできないというわけだ。

 2022年は複数のユニフォームが用意された。SDGsに取り組む姿勢を見せたリサイクルのポリエステル素材で、色は赤と紺。チェック柄でレインコートのようでもある。また、わずか5名限定で特別カラーのユニフォームが届けられた。こんなところにしかけを組み込んでくるとは、カープのグッズ担当者はあの手この手で話題を振りまいてくるものである。

 カープのファンクラブは毎年、加入できる人数が非常に限られている。過熱気味だったチケットやグッズの争奪戦もここ数年でようやく落ち着きを取り戻してきているが、それでも熱量を落とすことなくついてくるファンは実に健気である。
 ファンクラブ以外のグッズ展開においてもアイディアの豊かさは実にすばらしいものがある。ファンクラブの特典であるユニフォームのデザインも苦心していると思うが、これからも知恵をしぼってファンを楽しませてもらいたい。

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