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飲食店でお客を追い出す意味

飲食業始めたばかりの頃で働いたお店の店長の話、この前も少し書いたのだか、色々と勉強させてもらった。はっきりってその店長のことは嫌いだったし、この人みたいになりたいとは1度も思った事は無いのだが、今振り返るとなかなか面白い店長だった。


明らかにおかしな1人の男が来店した。おそらく60歳位で身なりも汚かった。何よりも席につくなる着くなり一言、
「お前、○○知ってっか?」
この〇〇の部分は下品な言葉が入るのであるが、ここからこの言葉を何十回とひたすら繰り返すことになる。全く会話が成り立たないと言うわけではなく、一応注文を済ませその注文の飲み物を飲みながらただひたすらお前〇〇知ってるか? と繰り返すのである。

その時は混み合っているわけではなく、特にその人が大きな声を出したり騒がしいと言う事でもなかったので店長はとりあえず様子を見ることにした。その人の近くに行くと例の言葉を繰り返すだけなのでなるべく従業員は近寄らないようにした。その後どうしたか。寝た。眠りだした。やれやれ。
そしてしばらくすると、カウンターに足を投げ出して眠りだした。すかさず店長が近くに行く。最初はやんわりと、お疲れならお帰りになった方が良いのではないかと言うようなやりとりをしていたのだが、突然、

「おいてめえ! いいかげんにしろよ!」

と言う怒号が聞こえたと思ったら、店長はその人の首根っこをつかみ引きずるようにして出口に向かっていった。もちろん従業員、他のお客も注目である。その人が座っていた椅子の周りにはその人の靴が2足虚しく転がり、急に静寂になった。副店長はなぜかニコニコとしながらその2足の靴を取り出口に向かっていった。


びっくりした。

何がびっくりしたかと言うと、店の雰囲気が明るくなったからだ。今までお客を追い出すなんて言う事は考えたこともなかった。他の客に迷惑がかかる行為、その客が居ることによって他のお客が楽しめない場合、その原因となるお客はいらないって言うことを知った。しかも多少手荒な感じでも場合によってはありなんだ。他のお客が納得すれば。


この事件から僕はお客様は神様です、と言うような考えをすることがなくなった。もちろんいい意味で。今考えれば店長はお店をすごく愛していたんだと思う。僕は好きではなかったけれど。

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