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【データで見るマリノスレビュー】〜前回対戦とは違った3つのこと〜J1第18節・大分戦

こんにちは。りょー(@YFMsupo)です。
少し遅くなってしまいましたが、今週もレビューを書いていこうと思います。

今節のマリノスは、大分に1-0で勝利。
しっかりと前回対戦の借りを返しました。
内容面も非常にポジティブで、天野とシノヅカを送り出すにふさわしい勝利と言えるでしょう。

今回は、そんな大分戦を振り返ります。
引き続きデータを用いながら、特に、0-2で敗れた「前回対戦との違い」にフォーカスしていきます。
前回対戦と今節。
メンバーもさほど変わっていない2つの試合。
一体何が違ったのか。その正体を突き止めました。

全てのデータはSportsnavi、sofascore、Football LAB、DAZNより引用・作成。

1.基本データ

■スタメン

マリノス
・フォーメーションは4-2-3-1。
・右SBは和田に代わり広瀬。
・ラストゲームの天野が先発。

マリノスは、前節のFC東京戦から右SBのみスタメンを変更しました。
リーグ戦のFC東京戦に続き水曜日の天皇杯に連戦で出場していた和田に代わり、第11節・セレッソ戦以来の先発となる広瀬が入りました。
また、ベルギーのロケレンへの移籍が発表され、この大分戦がラストゲームとなる天野も変わらず先発に名を連ねました。

大分
・フォーメーションは3-5-2。
・右CBは負傷の岩田に代わり島川。
・右ボランチにはティティパン。

対する大分は、フォーメーションを普段の3-4-2-1から3-5-2に変更してきました。
マリノスのビルドアップの起点となる喜田を封じるための"マリノス対策"を講じてきた格好です。
また、右CBには島川が先発。
コパアメリカにも招集された岩田が前節負傷交代し、その代役という形です。
さらには、3ボランチの一角にティティパンが12試合ぶりの先発。
同胞のティーラトンとのマッチアップも見据えた人選と言えるでしょう。

■基本スタッツ

シュートはマリノスが17本、大分が2本。
大分にほとんど攻撃のチャンスを作らせなかった試合でした。
また、スプリント数で大きく上回り、天野のラストゲームを飾るべく走り勝った試合でもありました。

2.前後半比較に見る大分戦

■前後半スタッツ比較

前半
【マリノス】
・ボール支配率が高く、ロングパス(特にエジガルを狙った)も多用。
開始早々からアグレッシブにいくシーンが多く見られ、デュエル勝利数も多かった。
【大分】
・ボール支配率が低く、自陣に押し込まれる。
・パス本数は少なく、奪ったらすぐにDFライン裏を狙う。オフサイド回数も多くなった。
後半
【マリノス】
・ボール支配率とパス本数で大分を下回った。
・前半のように前からプレスをかけるシーンは減り、デュエル勝利数も減少した。
【大分】
・ボール支配率とパス本数が大幅に回復。
前半に押し込まれすぎた反省からか、少しつなごうとする意識が見られた。
・ただシュート数は変わらず、効果的な攻撃にはつながらなかった。

■前後半プレーエリア比較

 前半のプレーエリア(マリノス)

左サイドを中心に、サイドでのプレーが目立ちました。
中央に人数をかける大分に対し、サイドで数的優位を作って前進する狙いが見られました。

図で見るとこのような感じです。
この試合では、ティーラトンや広瀬はサイドでボールを受けるシーンが多く、中に絞っていわゆる''偽サイドバック化"するシーンはそこまで見られませんでした。

 後半のプレーエリア(マリノス)

前半に比べると、中央でのプレーも増えました。
また、大分がボールを保持する時間が増えたこともあり、敵陣ゴール前付近でのプレーも減少しています。 
ただ、やはり前半と同じく左サイドを起点にプレーをしています。

3.今季平均スタッツ比較に見る大分戦

これまでは、前後半の比較で大分戦を振り返ってきました。
ここからは、今季平均スタッツと大分戦のスタッツを比較して試合を振り返っていきます。
攻撃、守備別に比較していきましょう。

■攻撃スタッツ比較

まずは、攻撃スタッツの比較です。

オレンジ:今季2番目に高い数字
水色:今季2番目に低い数字

それぞれの数値について、見ていきましょう。

■今季2番目に低いボール支配率

大分戦は、ボール支配率が57%にとどまり、今季2番目に低いボール支配率となりました。
上図のように、ボール支配率が60%を下回った試合は、今節で4試合目でした。

上のグラフのように、G大阪、川崎、名古屋、大分はボール支配率上位のチームであり、逆にそうした相手に対してもボール保持の姿勢を貫けているとも言えるでしょう。

また、直近の試合はボール支配率が70%を超える試合が続いており、ボールを保持するタイプのチームとの対戦は久々でした。
ボール支配率のグラフを見ると、湘南、清水、松本、FC東京はボール支配率が下位の4チームであることがわかります。
この4チームは相手に「ボールを持たせる」ことで力を発揮するチームであり、マリノスとしては厄介な対戦相手が続いていたとも言えそうです。

■今季2番目に高いロングボール成功率

大分戦では、今季2番目に高いロングボール成功率を記録しました。
特に前半は、ロングボールを意図的に増やしていたため、その成功率が大きな鍵になりました。

大分戦で使用したロングボールには主に2種類
ありました。

1つ目は、大分のプレスを回避するためのロングボールです。
上図のように、低い位置に降りた天野や喜田に対して、大分はボランチの前田が前に出てプレスをかけてくるシーンがありました。
通常、マリノスはこのような前からのプレスに対してショートパスで剥がしていくことが多いですが、今節はロングボールで回避するシーンが多く見られました
また、そのロングボールの行き先は大半がエジガルでした。
これは、大分が3バックを採用しており構造的にエジガルと相手CBの鈴木が1対1になることが多く、そこのマッチアップで優位に立てると判断したためだとも考えられます。
実際、エジガルがボールを受けてキープするシーンや、反転して決定機を迎えるシーンも多く見受けられました。

2つ目は、逆サイドへ展開するロングボールです。
上の図のような場合で、大分は守備時に選手がボールサイドに寄る傾向があります。
大分は3ボランチを採用しているので、逆サイドへのスライドには時間を要します。
そこで、意図的に大分の選手をボールサイドに集め、フリーとなる逆サイドに展開するシーンが多く見られました。
特に、マルコスジュニオールからティーラトンへのロングボールが多かった印象です。

そのマルコスジュニオールは、出場時間は62分と短かったものの、10本のロングボールを送り9本を成功させています。
この驚異的なロングボールの成功率が、大分の守備に的を絞らせず多彩な攻撃でハーフコートに押し込む展開を可能にしました。

■今季2番目に多いクロス数

今節は、今季2番目に多いクロス数を記録しました。
前節のFC東京戦で今季最多のクロス数を記録し、2試合連続でクロスを多用している形です。
また、偶然なのか狙いなのかわかりませんが、前回の大分戦は、今節と全く同じクロス数でした。

選手別でみると、マルコスとティーラトンがともに7本で最高のクロス数となっています。

マルコスは、7本のクロスのうち3本を成功させており、高い成功率を記録しました。
上図は前半10分のシーンですが、左サイドからエジガルにピンポイントのクロスを送り、決定機を演出しています。
大分の2列目を一気に飛ばすこのクロスは、大分ディフェンスにとっては脅威になりました。

また、この試合、ティーラトンはフリーになる回数が多く、中央へのクロスを選択するシーンが見られました。

■守備スタッツ比較

次に、守備スタッツの比較です。

青色:今季最低の数字
水色:今季2番目に低い数字

今節は、守備では間違いなく今季1番のスタッツを記録しています。

それぞれの数値について、見ていきましょう。

■今季最低の被シュート数

今節は、今季最低の被シュート数を記録しました。
これまでは、仙台戦、鳥栖戦、鹿島戦で記録した被シュート数6が最低の数字だったので、圧倒的に少ない数字です。

被シュート数が少ないこの4試合には、3つの共通点
があります。
1つ目が、試合展開です。
マリノスが相手を押し込み続ける展開でした。
2つ目が、結果です。
鳥栖戦はスコアレスドローに終わりましたが、大分戦を含むその他の3試合ではすべて1点差で勝利しています。
3つ目が、すべてホームでの試合であるということです。
アウェイに乗り込んできて引いてくる相手に対して「ボールを握り相手を押し込みながらカウンターのチャンスを与えず、シュートを打たれない」という展開に持ち込めていることがわかります。
マリノスとしては、今後、特にホームでこのような「ハーフコートゲーム」をいかに増やしていけるかが重要になってきそうです。

■今季最低のデュエル回数

今節は、今季最低のデュエル回数を記録しました。
これまでは、松本戦で記録した80回が今季最低の数字でしたが、その松本戦と比べても圧倒的に少ない数字です。

以前から触れていますが、マリノスは勝ち試合はデュエル回数が少なく、引分・負け試合はデュエル回数が多い傾向があります。

周知の通り、マリノスはショートパス主体のスタイルであり、接近戦を得意とはしていません。
メンバー構成を見ても、中盤でのボールの奪い合いや激しい応酬という展開を得意としていないことは明らかです。
それゆえ、デュエル回数が少ない試合は"勝ちパターン"となっています。

また、そもそもデュエル回数が増える要因として
①相手の守備ブロックの中に入る回数の多さ
②相手のボールの奪いどころがミドルゾーン
といったことが考えられます。

今節デュエルが少ない要因
①マリノスの攻撃はサイドが起点
②大分が中央を固めてブロック形成

今節は、大分が5-3-2のブロックを組んで中央の守備を固めるスタイルだったため、無理にブロックの中に侵入するのではなく、サイドで起点を作りました。
また、大分としてもボールの奪いどころを自陣深くに設定し、人に対して激しく寄せるような守備は行いませんでした。
それゆえ、デュエル回数が非常に少ない試合になり、マリノスの得意とする展開に持ち込むことができました。

以下に「3.今季平均スタッツ比較に見る大分戦」のまとめを載せておきますのでご覧ください。

今季平均スタッツ比較まとめ
攻撃編
・今季2番目に低いボール支配率
・今季2番目に高いロングボール成功率
・今季2番目に多いクロス数
守備編
・今季最低の被シュート数
・今季最低のデュエル回数

4.前回対戦との比較に見る大分戦〜前回対戦とは違った3つのこと〜

これまでは、今季平均スタッツとの比較で大分戦を振り返ってきました。
ここからは、前回対戦のスタッツと今節のスタッツを比較して試合を振り返っていきます。

結果・内容ともに完敗だった前回対戦。
結果・内容ともに完勝だった今節。
スタッツを比較すると、3つの違いが浮かび上がってきました

まず、スタッツを攻撃・守備別に比較していきましょう。

■攻撃スタッツ比較

前回対戦との違い(攻撃編)
①パス数の大幅増加
理由:ビルドアップ時のスムーズさが増し、前回対戦よりも敵陣でパスを回す時間が増加。
②クロス成功率上昇
理由:ビルドアップが上手くいき、フリーでクロスをあげられた。また、多くのクロスを成功させたマルコスジュニオールの存在
③ドリブル数減少
理由:ビルドアップをパスで上手く行えていた。ドリブルで相手を剥がす必要がなかった。
④フリーキック数減少
理由:相手のブロックの中でボールを扱う時間が減り、デュエルによる接触の回数が減少。

攻撃スタッツでは、以上の4点で違いが見られました。
まとめますと、ビルドアップのスムーズさやマルコスジュニオールの存在が鍵になったと考えられます。

■守備スタッツ比較

前回対戦との違い
①被シュート・被決定機数減少
理由:ビルドアップが安定し、相手を押し込むことに成功。奪われてもすぐに奪い返す形を実現。
②デュエル・空中戦回数減少
理由:守備ブロックの中に闇雲に突っ込む形が減少。サイドで数的有利を作りながら押し込めた。
③ボールロスト数減少
理由:中央で後ろ向きに受ける場面が減少。サイドで起点を作りながら常に前向きにプレー選択。
④インターセプト数減少
理由:大分は奪ったらDFラインの背後を狙った。藤本やオナイウに当てるシーンは見られず。

守備スタッツでは、以上の4点で違いが見られました。
まとめますと、ビルドアップの安定感やサイドでの数的優位、大分がDFラインの背後を狙ってきたことなどが鍵になったと考えられます。

ここまでは、攻撃・守備別にスタッツを比較してきましたが、前回対戦と今節の違いが大きく3つ浮かび上がったので、以下で見ていきましょう。

■その1:ビルドアップ

<前回対戦時のビルドアップ>

前回対戦時は、マリノスがアンカー+2シャドーの形を採用していたため、
大分は常にマンツーマンでマリノスの選手を監視できており、常に前向きな守備が可能でした。
また、サイドバックの広瀬とティーラトンは中に絞るポジショニングをとったため、両サイドのスペースを上手く活用できませんでした

<今節のビルドアップ>

今節は、マリノスが2ボランチ+トップ下の形を採用していたため、2ボランチのうち1人(たいていは喜田)が最終ラインに降りて3バックの形になってビルドアップする形が多く見られました。
また、サイドバックの広瀬とティーラトンは外で張るポジショニングをとったため、大分の構造的弱点でもある2トップ脇のスペースを上手く活用できました。

【事例:9分のシーン】

このように、喜田がDFラインに降りて3バックの形になってビルドアップするシーンが多く見られました。

このシーンのように、喜田が最終ラインの左右どちらかに落ちてビルドアップに参加するシーンも見られました。
相手ボランチをおびき出しスペースを作り出すことに成功していました。

■その2:DFラインの背後とパクイルギュ

大分はボールを奪うと最終ラインの背後を一発で狙ってくることが多かったですが、マリノスは最終ラインの背後をすべてパクがケアしました。
この日のパクは、飛び出しの判断とタイミングが抜群に良く、シンプルにタッチラインに逃れることで相手の攻撃を見事に寸断していました。

前回対戦時も、執拗にDFラインの背後を狙われて失点を喫しただけに、前回対戦時の飯倉が悪かったという訳ではありませんが、とにかく今節のパクの存在は非常に大きかったと言えます。

■その3:マルコスジュニオール

前回対戦時は左WGで出場していたマルコスですが、今節はトップ下での出場です。
今節は、フォーメーション上相手のマークから外れるマルコスの働きが非常に重要になりました。

そのマルコスは、今節攻撃面で圧倒的なスタッツを残しており、特にキーパス・クロス・ロングボールといったパスに関するスタッツは、そのほとんどがチーム最多です。
62分の出場時間にもかかわらず、左右を自由に駆け回り攻撃を牽引しました。
以下で、マルコスがライン間でボールを受けたシーンを取り上げてみます。

【事例:57分のシーン】

このシーンは、大分の3ボランチと最終ラインのライン間で浮くマルコスに天野からいいパスが入った場面です。
マルコスはシュートを選択しましたが、大分センターバックの鈴木が飛び出して寄せてきたため、ブロックされてしまいました。
この場面では、鈴木を大分最終ラインから釣りだしたことで大分最終ラインは3対3の数的同数になっており、もし仲川にパスが渡っていれば中に折り返してエジガルが合わせるという''マリノス十八番''の決定機を迎えていた可能性が高いでしょう。

以下に、「4.前回対戦との比較に見る大分戦〜前回対戦とは違った3つのこと〜」のまとめを載せておきますので、ご覧ください。

前回対戦との比較まとめ
①ビルドアップ
②DFラインの背後とパクイルギュ
③マルコスジュニオール

5.次回予告

いかがでしたでしょうか。
今回は、J1第18節・大分戦のレビューを書いてみました。
前回対戦との比較で、マリノスのチームとしての成長を感じることができるかと思います。
今後も、データを用いて試合を詳しく見ていきたいと思います。

さて、次回は【データで見るマリノスプレビュー】J1第19節・浦和戦をアップしようと思います!
いまだ負けなしのホームに大槻監督率いる浦和を迎える試合は、間違いなくアツい試合になりそうです。

データを見つつ、浦和の攻撃・守備に関する特徴をつかめるような記事にしていこうと思います。

最後までご覧くださり、ありがとうございました!
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次回もぜひよろしくお願いします。

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