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スターオーシャンの感想

 このところシンプルなRPGを全然やってないけど、さりとてやりたいゲームもない状況だったので手持ちのゲームリストからRPGをリストアップしてサイコロをそぉい!こんな流れで決まったのがスタオ。セカンドストーリーのリメイクもされるし、丁度いいですね。

 スターオーシャン自体は発売して割とすぐに新品をワゴンで買ってプレイしました。作りすぎなのか次世代機に押されていたSFC黄昏期のゲームだからか、速攻で叩き売られてた記憶です。

 内容ははっきり言って全然覚えてないんですが、
・ラスボスが唐突なうえ信じられないほど弱くて、「えっこれで終わり?」感がすごかった
・異常無効の装備がぜんぜん無いせいで、通常攻撃に石化判定がついてる隠しダンジョンの目玉が鬼
・仲間はフィアの攻撃が多段ヒットする関係で抜けて強い
・なんでミリーは特に傷ついてるわけでもないのに勝利画面で楽しげに「もう死にそう♪」とか言ってるんだ?

 いやまあ他にもいっぱいあるんですが、だいたい戦闘中の思い出なんですよ。ストーリーで~なところがよかった!ってのはぜんぜん無い。何でかは今回の再プレイでよく分かりました。


○これは良作の佇まい

<BGM、ボイス
 わざわざサウンドプレイヤーでいつでも聴けるようにしてるくらい力入ってるし、実際SFCのレベルではないですね。
 OPは日本語字幕の英語副音声で、戦闘中は戦闘開始、攻撃、掛け声、呪文、必殺技、リザルトと喋りまくり。仲間がやられた時も反応したり芸が細かい。BGMも良曲が多くて耳にすれば楽しかったプレイの思い出が蘇るタイプの……作曲者桜庭じゃねーか!そりゃいいわな!
 個人的に一番驚いたのはフィールドで喧しく騒ぎ立てるセミの声。これが本当にリアルで、夜にゲームを起動するまで窓の外にいる本物の鳴き声と勘違いしてたほどですね。

<グラフィック
 ドットの細かさに関してはSFC初期のRPGとの差は歴然で、PSどころか最近のゲームと比べても遜色ないと思います(2000年以降は3Dで見た時のリアルさや破綻の無さに重きが置かれててドットは「郷愁を喚起するため敢えて荒くする」向きもあるから比較そのものがナンセンスだけど)。
 水面にキャラが映り込んだり、太陽を浴びた新緑のさざめき、紅葉の鮮やかさなど季節を感じる色使い、アストラル洞窟で虹色に輝く鉱物はなんかもうため息が出るレベル。女性陣はステータス画面の顔グラも単純に可愛い。

<爽快な戦闘
 十分にレベルを上げればAボタンとLRボタンだけで、システムの理解と圧倒的な操作量を以ってすれば低レベルでの攻略も可能、敵の火力が高いから気を抜くとあっさりK.O.されそうなところでAI操作の味方が回復を差し込んでくれたり魔法で援護してくれる戦闘は豊富な音声とテンポの良さが没入感を高めてくれる。
 極端な話、Aボタンに合わせてキャラが剣を振りLRボタンで必殺技を叫ぶのは子供の頃のごっこ遊びが画面の中で再現されているようで、もうこれだけで楽しい。

<スキルとタレントで広がる遊びの幅
 キャラクターごとに技能を習得してアイテムを作成・複製したり調理・演奏・エンカウント率の操作etc...RPGだとこの手の要素は珍しいものじゃないが、単に技能を選んで習得するのではなく「目利き」や「科学技術」「美的感覚」など個性的なスキルを取得した結果スキルの組み合わせで技能を得る(鉱物学・妖精学・科学技術の習得で錬金術など)というワンクッションでキャラクターに個性を付与できるのが面白い。
 しかもキャラごとに得意不得意がある程度決まってはいるがランダム要素あり、不得意分野も延々と試行を繰り返せば才能(タレント)に目覚めることがあるというところもいい。
 
<何度も遊べるルート分岐
 固定メンバー4人でもクリアできるが道中の選択による細かい分岐が多く、加わる仲間もイベントの細かい内容も変わるし、街でミニイベントだって起こる。
 前プレイしたときはラティ・シウス・マーヴェル・ヨシュアで戦って、今回はラティ・フィア・ロニキス・ミリーでクリア。
 ペリシー仲間にしそびれたな。

○ただし話は滅茶苦茶

 まず前提として、このゲームは未完成です。ロマサガ3が可愛く見えるレベルで。
ぶん投げられた設定、意味ありげで回収されない伏線、入れない場所が出るわ出るわ……。

   こんなのがそこら中にある        唐突に言い訳をしだす兵士      

 ただ問題はそれだけじゃなく、シナリオライターが脳内の結論ありきで絵になる部分だけをバーンと出してくるもんだから、積み重ねや意識の共有ができてないプレイヤーは「??」になってしまう。

 例えば序盤、軍人であるロニキスが軍規を無視して主人公たちを助けてくれる理由が最後まで全く描写されないからノリで行動する頭のイカれた男にしか見えない。
 中盤仲間になるマーヴェルは初登場シーンで白昼通りすがりの男を家族の仇認定して襲おうとしたヤバい女にしか見えない(このイベントも棒立ちなのになぜか干戈を交えたような話になっている)から、素性も分からず仲間でもなんでもないのに、その夜「復讐心を忘れたくない」と去ろうとするのを引き止めるのは無理がある。

匂わせ?はあるけど動機は語られない   プレイヤー的にはまだ仲間じゃない 

 ラスボスはグダグダと自分勝手な口上を述べて死んだうえ、「彼もまた被害者だったのかもしれない……」みたいな薄っぺらい言葉をかけられるし、EDのラストで唐突に「技術が発展しても自然が破壊されたり人々の心が荒んでいいことなんてないよ」→「そうならないようにしてみせます」というメッセージを入れるのも謎。文明の発展とそれに伴う犠牲みたいなテーマ作中にまったく無かったよね?

打ち切りEND

 そもそも、『スターオーシャン』ってタイトルとからは星の海を渡り色んな惑星を訊ねる、宇宙を股にかけた壮大な冒険をイメージするのが自然だと思うんですよ。少なくとも、そう思った人は責められない。
 しかしどうだ、冒険の大半を占めるのは300年前の主人公が暮らす星。しかも文化レベルが現代(といっても、完全な「中世ファンタジー世界 at JAPAN」)と全く変わらないうえ、現代のこの星に関する知識がゲーム最序盤の街2つ分しか無いから「現代で○○だったものが過去では××だった!」というタイムトラベルの醍醐味たる驚きが全く無い。300年後の同じ星に暮らしているはずの主人公たちも道中まったく顔色を変えることもないからまるで彼らにとって既知の世界を旅しているかのよう。ついでにいうとお約束の、あの人物の祖先は300年前こんな人だった、過去の行動が現代に意外な影響を及ぼした、も一切無し。

 過去へは行ったが現代から独立した存在で、世界観は全く変わりがない。これタイムトラベルものにする意味あった?
 百歩譲って(※)タイムトラベルを肯定するとして、ゲームの9割近くは惑星ロークで展開され、他の星はイベントで立ち寄った滞在時間1分の惑星ストリーム、到着後すぐラスダンに場面転換する惑星ファーゲットだけ、星間移動の描写は無し。これ『スターオーシャン』なんてタイトルにする必要あった?
 
※一応、時間移動する理由はある。惑星ロークで流行している奇病は謎の勢力が300年前のロークに存在したウイルスから培養して持ち込んだものであるため、その血清も300年前に遡らないと存在しない、というもの。この展開そのものは納得できるから描き方の問題だ。 

 極めつけは、タイムトラベルの際にはぐれた仲間と合流して一晩経ったら何故か魔王を倒すことが目標になってること。どうもプレイヤーが知らぬ間に、現代の奇病は魔界の魔王から作られていたためその魔王から血清を作ろう、ということになったらしい。リメイクではちゃんと説明が入ったそうだがSFC時点では何の説明もないからひたすら置いてけぼり。

 副次的な問題として、プレイヤーの感覚だとようやくはぐれた仲間と再会した、ってところなのにシナリオ的にこれはもう終盤で、あとは魔王を倒すための準備をして魔界に突入、魔王を倒したあとはラスボスとの戦いしか残ってない。
 当時のRPGと比べてシナリオ短め街もダンジョンも少なめなのはあるにしても、もう少しシナリオの順番をいじれなかったのか。

えっ、そんな話知らない……

 他にもシナリオと実装の連携が取れてないと思われる箇所はいくつもあるんです。
 魔界に入るため4人の王と面会してこいってイベントで、それぞれアイテムや謎めいた暗号、魔界への入口などの情報を貰うんだけどムーアという国の王だけは何もくれず、おや?と思ったらイベント報告時に「遺跡の鍵を貰いました」とか言ってる。え?鍵はシルヴァラントの王からついでみたいに貰ったじゃんと思って確認したらアイテム説明……。
 ムーア王は面会前に「宝物庫に魔物が現れたので退治してくれ」ってイベントが唐突に挟まるから、この辺イベント実装の流れが上手くいってなかった可能性がありますね。

シナリオ担当はハブられてたのか?

 あとはマーヴェルが仇と狙い、他の仲間にとってはかつての友でもあったという剣士『真紅の楯』まわりの説明不足も酷い。
 マジックアイテムのせいで悪の心を持ったコピーが生まれてそのコピーが悪事を働いてるって話で、いざ対決の際にカタカナで喋る合間にかっこがきで(俺を殺してくれ!)とか心情描写が挟まるもんだから、ははーんコピーに体を乗っ取られた的ななにかか?と思って倒したらどうも死んだのは本物らしく、じゃあその思わせぶりなカタカナ喋りは何だったんだよ。
 さらに連戦で「オレハ ホンモノダ!」とか宣う偽物を倒した後は一切のエクスキューズなく魔界の入口に場面転換する。この辺はプレイしてて、誰か説明してくれよ!って頭を抱えましたね。

○他の問題点

<マップ移動
 2Dゼルダや聖剣伝説型の切り替え型フィールドマップで街同士が繋がっているのだけど、キャラが大きい分1画面の可視領域が少ないし、似たような地形は多いし、そもそもマップが広すぎるうえにルーラも船も無い(街同士を繋ぐ定期船はあるが、単純に接続しているだけなので移動手段としてカウントできない)。
 中盤に必須イベントで一番最初の町の周辺まで歩いて戻らされ、さらにそこから徒歩で歩き直すことを強いられるんだけど、控えめに言ってアホほどダルいうえ同じようなシチュエーションをイベントで移動処理してるケースがあるから、何でここは同じようにできないの?と言いたくなる。

<攻略強制ダンジョンが多すぎる
 本格的な冒険がはじまったときのPTは戦士と武闘家。それから中盤まで仲間になる可能性があるのはパワー型戦士1、パワー型戦士2、軽剣士で、シナリオ進行の半分近くを術師無しで切り抜けることになる。そして中盤の壁になるダンジョンは広い迷う敵も強いうえ引き返せないわ買い物もできないわで、入口でHP/MP回復とセーブはできるもののヒーラー不在だから状況によっては詰みかねない。
 
 ダンジョン攻略がはじまると引き返せないのはこのゲームを貫く理念のようで、中盤訪れる神殿型のダンジョンは街で回復してこようと引き返すと確定フリーズ。
 魔王退治→ラスダンはイベントで進行するから実質魔界突入後は買い物等が一切できない。ロマサガ2で「逃さん……お前だけは……」を見てもまだアバロンに帰る手段が残されてるのは有名な話だけど、スターオーシャンは魔王を倒して一旦めでたしを挟むのに実際にはもう逃れられないのだ。

魔王を倒してしんみりしてますが、このあと自動進行でラスダンに放り込まれます

>選択肢

左右か上下かで一瞬迷う(正解は左右)。

>メッセージ表示のセンスがない

これが一番許せないかも。

○それでも

 ゲームとしては面白い。EXダンジョンはやらない派なんですが、このまま七星の遺跡潜ります。しちせいそーはざん!しちせいそーはざん!が楽しいから……。

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